第10話

牙獣 エイネル
登 場




今日は、防衛軍の射撃大会。全軍の中で最優秀な射撃手を選ぶ大会が開催されていました。
「すご〜い、リョウコ先輩、300点満点で290点ですって!」 「3年連続一位よ!今年も絶対よ!」
若い女子隊員に人気の“リョウコ”隊員の話題は、何処でも聞かれていました。
「へぇ〜、先輩は射撃の名手なんですか?」 “マミ”隊員の惚けた応答に呆れ顔の4S隊員達。
「彼女にかかると1000m先のコインが打ち抜けると言う噂だ」 したり顔で“ナガイ”隊員が話します。
「神業だな」 隣で“ムロイ”隊員がうなずきます。
その時、リョウコの名前がアナウンスされ、決勝会場にその姿を見せた“リョウコ”は、目標を的確に射撃し点数を稼いで行きます。結果、満点を叩き出したリョウコが優勝し連覇を成し遂げたのでした。

それから数日後のある日・・・4S隊本部に鳴り響く警報音。
「牙獣が、地球圏に侵入。太平洋地域に向う模様」 地球防衛統合本部からの要請に、4S隊は牙獣迎撃に向かいます。

大気圏を突破し、人口密集地へ向う牙獣をSJVで追撃し攻撃を加える4S隊。攻撃により、牙獣エイネルは山中に墜落、4S隊は撃墜に成功します。一気に殲滅しようと、防衛軍戦闘機が攻撃を加えますが、その時牙獣エイネルの姿は消えてしまったのです。突然目標を失った防衛軍戦闘機部隊は、混乱してしまいます。それを狙い、牙獣エイネルは戦闘機を撃破してゆきます。
「敵は確認できるのか?」 “モリオ”隊長が確認します。
「いいえ、センサーでも感知できません」 “ムロイ”隊員の報告に“モリオ”隊長は唸ります。
「消えたのか?跡形も無く?・・・しかし防衛軍は、攻撃を受けたのだぞ!」
「磁場に反応があります。牙獣は、そこにいます。しかし反応が微弱で上手く感知できません」 装置を調節しながら“マミ”隊員も報告します。
「あっ!磁場が変動します!」 “マミ”が声を発したと同時に、SJVの前方の空間から突如攻撃されます。間一髪、“ナガイ”隊員は、SJVを反転させ攻撃を避ける事ができました。
「“マミ”、奴は移動しているか?」 「いえ、どうも磁場を展開中は、移動ができないようです」 “モリオ”隊長の問いかけに”マミ“隊員が答えます。
「うむ・・・防衛軍の監視部隊に任せて、一度本部に引き上げる。向こうで対策を検討しよう」
“モリオ”隊長の判断で、4S隊は、本部へ帰還するのでした。

統合本部で牙獣を詳しく分析したところ、意外な結果が得られたのです。神妙な面持ちで、4S隊員の前で言葉を発するフジ監理官。
「牙獣は、磁場を操作し再構築することで全ての探査装置から姿を隠しているようです。しかし、これは二次的な問題のようです」
「どういうことですか?監理官」
「つまり牙獣は、姿を消す為に磁場を展開しているのではない、と言う事です」 「牙獣は、あそこで強力な磁場を展開し、地球の磁場と干渉させ、気候の変動を画策していると判断されます」 フジ監理官は、全展開地域図を示し、続けます。
「現在、地球上では各地で天候の急激な変化が認められています。気象官によりますと、今後24〜48時間で状況が飛躍的に悪化するそうです」
「台風の大売出しだね」 「800ミリパーレルを超える大型台風だぞ。そんなものが何度も来たら、この基地でもやばいぜ・・・」 軽口をいいあう“ナガイ”と“ムロイ”両隊員を目で黙らせたのは“タヌマ”副隊長です。
「しかし牙獣を攻撃する為には、その姿を捉えないと・・・」 「ええ、その事についても作戦があります」 “マミ”隊員の心配を“フジ”監理官が諭します。
「これを見てください。先の戦闘でSJVの搭載ビデオでとられた、牙獣の攻撃の様子です」 再生された画像には、牙獣が防衛軍の戦闘機を攻撃する様子が映し出されています。
「ここです。牙獣が、防衛軍を攻撃する際に磁場を一時的に開放しています。秒数にして約7〜10秒だそうです」
「7〜10秒ですか・・・」
「ええ、その開放した空間は、3m径以下だそうです」 フジ監理官の指摘に“モリオ”隊長も難しい表情を隠しきれません。
「そして、この箇所への攻撃は、磁気を帯びた金属弾、ミサイル、レーザーの類では、射線が変動し、命中は難しいと判断されます」
「どうやって攻撃するんですか?」 勢い、“リョウコ”隊員が問いかけます。「ええ、そこで貴方の出番なの」 「これは、科学局が開発した特殊な徹甲弾です。全てが特殊FRPで作られ、磁場の影響を避けて攻撃できるようになっています」
「つまり、これをライフルで狙撃しろと言う事ですか・・・」
「ええ、それも1発でね。攻撃が失敗すれば、二度と牙獣は、攻撃を繰り返さず、気象攻撃に専念してしまうわ。そうなれば・・・」 フジ監理官の言葉を待たず、“タヌマ”副隊長が呟きます。「我々には、打つ手が無くなる・・・・」

作戦は、狙撃班と囮誘導班に分かれて行うことになりました。SJVで攪乱攻撃を仕掛け、攻撃をする際に磁場が開放される瞬間に、“リョウコ”隊員が狙撃するのです。
牙獣エイネルは、接近するSJVに対して警戒しますが、磁場を展開している為、安心している様子。4S隊は、牙獣エイネルに向けて果敢な攻撃を繰り返します。
あまりの攻撃に、牙獣エイネルも我慢しきれず、SJVに向けて攻撃を繰り出します。
「いいか、チャンスは一度きりだ!できるだけ正面へ誘導する。頼んだぞ!」
“モリオ”隊長の指示に、頷き返しながら“リョウコ”隊員は狙撃銃を構えます。
SJVが牙獣に爆撃を仕掛けるのを待ち構えたように、牙獣エイネルは磁場を開放し攻撃を仕掛けようとします。
“リョウコ”は、その徴候を見逃しませんでした。彼女は、一気に引き金を引き、その弾丸は狙い違わず牙獣エイネルに命中します。弾丸には、特殊な磁場キャンセラーがナノロボットとして混入してあり、それが作動すると同時に磁場が中和されるのです。
「成功だ!」 喜ぶ4S隊でしたが、牙獣は磁場を消された事で怒り狂い、狙撃班を狙うように光弾で攻撃してきます。逃げ惑う狙撃班でしたが、ついには光弾に捉えられてしまいます。爆発炎上するSバギー。しかしその爆炎からウルトラマンアルヴィスが姿を現します。咄嗟の機転で変身した“マミ”隊員は、アルヴィスとなって“リョウコ”隊員を守ったのです。
ウルトラマンアルヴィスは、牙獣エイネルと死闘を繰り広げますが、磁場を操る事ができなくなったエイネルに勝機があるはずも無く、敢無くスプレッドマッシャー技で粉砕されたのでした。
地球の気象を操作するメセドメキアの作戦は、4S隊の活躍、特に“リョウコ”隊員の射撃の腕で阻止されました。

4S隊では、任務の成功と大会の優勝祝賀会が催されました。
「被害も最小限で済み、参謀本部からも感謝状が来ています。皆さんご苦労様でした」
フジ監理官から、4S隊に感謝の言葉が伝えられ、全員の喜ぶ顔が揃います。
「しかし、リョウコ隊員が助かったのは奇跡だったな」 “タヌマ”副隊長の言に、顔を見合わせる“マミ”と“ファ”の両隊員。その姿を見ながら、フジ監理官が微笑んでいます。
「ええ、でも4S隊に怪我人が居なくて何よりでした」

今回の戦いで4S隊には被害はありませんでした・・・おっと訂正!実は一人だけ被害者が・・・・
祝賀会の席上、「射撃並みに、男のハートも射止めれたら」と口走ったのは“ムロイ”隊員。彼がどうなったかは、皆さんの御想像にお任せします・・・。
【第10話/完】




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