第12話

牙獣 ウライムソン
謀略宇宙人ウライム星人
登 場




ウルトラマンアルヴィスは、牙獣ウライムソンにエネルギーを奪われ、LWDに閉じ込められました。
アルヴィスを葬ったウライムソンは、その倍増した強力な光弾攻撃を開始し、地球に無数の光の刃を叩きつけます。
LWDは、その攻撃に耐え得るように光り輝きます。
泡松博士の進言で、参謀本部の庭参謀は、LWDの光波圧を限界点まで増幅させたのです。
しかしLWDの増幅は、地球に思わぬ事態を惹き起し始めます。
LWDの低レベル使用は通信装置の障害程度でしたが、高レベル使用はあらゆる外的刺激を遮断しました。

「どういうことだ?」
聞き返すアラシ・ダイスケ参謀にイデ・ミツヒロ博士は、電話口から答えます。
「いいかい、アラシ。LWDの今の出力は、あらゆるものを地球から遠ざけている。つまり牙獣の光弾だけでなく、太陽光線もだ」
あっ!と気づくアラシ参謀。
「アンブレラベースは、夜の地域だから気づかなかったかも知れないが、LWDの出力を上げた瞬間、全てが闇に閉ざされてしまった。このまま攻撃が何日も続けば、どうなる?」
アラシ参謀の顔に苦渋の色が浮かびます。「地球環境の破壊・・・か」
イデ・ミツヒロ博士は続けます。
「ああ、今のままの出力でLWDを作動し続けると、1週間で問題が発生し始めるぞ。
世界的な闇の継続、太陽光線の途絶、それに伴う動植物絶滅、ついには地球を死滅した星にするだろう」

イデの報告から事態の深刻さを察知したアラシ参謀は、参謀部へ報告に向かいます。
早急にLWDの使用中止を訴える為に。
しかし、牙獣からの攻撃が続く以上、LWDを停止させれば、直接地球圏に被害が及び、正に緩慢的死を迎えるのか、性急な死を望むのかの違いしかなく、対処に苦悩するのでした。
防衛軍は対策会議を招集し、計画主任の泡松博士の召喚を求めます。
しかし、泡松博士の姿は、科学センターから忽然と消えていたのです。
メセドメキアの誘拐を疑う防衛軍は、捜索隊を結成し、泡松博士の行方を追います。

一方、宇宙ステーションに待機中の4S隊では、LWDの影響で統合本部に連絡がつかず、独自の作戦を計画しなければなりませんでした。
SJV2号機は大破しており、“タヌマ””ムロイ”両隊員は重傷、“マミ”隊員は行方不明と言う状況に、“モリオ”隊長も疲労の色を隠せません。
現勢力の防衛軍部隊との混成作戦でも、牙獣には対抗できない事は明白であり、別な作戦を考案する必要がありました。

「どうも、LWDのエネルギー空間に、ウルトラマンを閉じ込めているようですね」
“ナガイ”隊員は、分析結果を隊長に報告します。

「エネルギーの深さ(深度)は、分かるか?」
「ええ、深さは2km程度でしょう。LWDに穴を開けるだけの衝撃を与えれば、ウルトラマンは脱出できると思います。・・・ウルトラマンが生きていれば・・・ですが・・・」
「それにLWDは、牙獣の攻撃を防いでいます。これを破壊しても良いものかどうか・・・」
「いや、LWDには問題があるようだ。それにフジ監理官からLWD破壊の事前許可を得ている」と隊長の言。
「どういうことです?」
「LWD自身が問題になるときは、これを粉砕せよと命令を受けている。どうも科学局と4S隊の極秘任務らしいが・・・」
「なにか上層部で問題がありそうですね・・・」と“ナガイ”隊員。
「地球との連絡が途絶し、LWDがウルトラマンを閉じ込めている以上、LWDを事前命令にて粉砕する」
隊長の命令を受け、準備に余念が無い4S隊。

「それだけの威力があるものがあるのか? 牙獣の攻撃も防いでいる強力なエネルギーを中和する何かが・・・」
隊長の質問に“リョウコ”隊員は、電探席から返事をします。
「大丈夫だそうです。例のアルキメデス号の空間転位装置を利用して、科学センターの職員が改造してくれるそうです」 「ただし、発動まで5分臨界時間が必要だそうです」
「うむ・・・かなり時間が必要だな。牙獣に気づかれるとやっかいだな」
隊長の言葉に頷く2人でした。

「作戦は、まず防衛軍宇宙戦闘機群が、牙獣を牽制、SJVに護衛されたアルキメデス号をLWDに接近させる。起動装置を自動に切り替え、SJVは脱出、LWDを中和する!」
「作戦名はウルトラマン救出作戦だ!」
隊長の号令のもと、防衛軍とも連携し、作戦準備に入る4S隊でした。

地上でも泡松博士捜索が続けられていました。
地上勤務の“ファ”隊員も捜索任務に合流しており、その鋭敏な知覚能力を使って協力していたのです。
その“ファ”の元に、異星人が現れます。

「ほう、これは、これは・・・懐かしき顔だな」
突然目の前に現れた異星人に対して、銃を構える“ファ”隊員。
「なに?誰?」
その疑問に答えるように闇からその姿を現す、ウライム星人。

「リュディアのアルヴィスと会えるとは、驚きだな」

少し笑みを浮かべながら、ウライム星人は“ファ”隊員に話しかけてきます。
「やはり貴方達だったわね。リュディアの人々と同じ事をした訳ね」
「ああ、ここの奴らも君の仲間と同じだよ。自分の虚栄心の為に、危険を顧みずに案を採用する所は、そっくりさ」
“ファ”隊員は、すでにこれらの経過が、メセドメキアによる仕業と確信していたのです。
リュディアでの光景を思い浮かべる“ファ”隊員にウライム星人は、続けます。
「あの参謀も騙されたとは知らずに、おめでたい奴だよ。このままLWDを作動し続ければ、いずれ地球は破滅さ。それにアルヴィスを葬る作戦でもある」
「どういうこと?」
“ファ”隊員の訝しげな問いかけに、薄ら笑いを浮かべると、ウライム星人は、話すのでした。
「LWDは我々が提供した技術だが、あれの本当の姿は空間檻さ。アルヴィスを閉じ込める為のな。ウライムソンの攻撃は、実はLWDにエネルギーを供給しているに過ぎないのさ」
「おめでたい地球人どもは、自分達がLWDのエネルギーを供給し、コントロールしているつもりらしいが、最初から我々が操作していたのさ」 「地球を守るはずのLWDが、アルヴィスの檻で、かつ星の生命を根絶させる環境破壊兵器とは知るまい」
自慢げに話を続けるウライム星人に“ファ”隊員が、問いかけます。
「すると泡松博士は・・・・」
「そいつは、こんな奴かい?」
ウライム星人は泡松博士の姿に変化したのです。
その瞬間“ファ”は、スーパーガンを抜き、ウライム星人に発砲します。
狙い違わず命中した弾丸は、ウライム星人を絶命させます。
「いまさら・・・遅い・・・リュディア・・・の・・・」
“ファ”は、事実をフジ監理官に知らせる為、急ぎ戻るのでした。

独自の作戦を遂行しようとする4S隊は、アルキメデス号をLWDに接近させようとします。
それに気づき、阻止せんと攻撃をしかける牙獣ウライムソン。
しかし超人的な操縦で“ナガイ”隊員はアルキメデス号を操作して、攻撃を避けます。
「これで、ウルトラマンを助けるんだ。お前らの好き勝手にはさせない!」
“ムロイ”隊員も叫びます。
「よし!空間転位装置駆動開始!!」
位置についたアルキメデスは、転位装置を臨界点まで駆動させ、LWDを中和させる事に成功するのでした。

「成功だ!LWDが消えてゆく!!」

LWDの消失と共に光弾を吐くことを止めた牙獣は、再度合体して、地球上に侵攻しようとします。
その行く手を阻む姿が・・・。LWDの罠から開放されたアルヴィスです。
地球との連絡がついた4S隊は、ウライム星人の策略を知り、怒りに震えます。
アルヴィスを援護する4S隊。

又もや、アルヴィスのエネルギーを吸収しようとした牙獣ウライムソンでしたが、今度は上手く行きません。
地球からアルヴィスにアクセスした“ファ”の力が加わり、アルヴィスを強化していました。
彼女の怒りは、ウライムソンの攻撃を全て撥ね退けるのでした。
そんなアルヴィスに抵抗できるはずも無く、牙獣ウライムソンは葬られるのでした。

罠にはめられた事実を、参謀本部は認めず、泡末博士は異星人に拉致されたとして、公表されました。
科学局と4S隊との事前命令は、不問とされました。
LWDはイデ博士の手で解析され、有効な利用が期待されることでしょう。
しかし参謀本部の一部に、“ファ”隊員への今回の事件を看破した事実と4S隊の独断行動に不信感を持つ者も現れます。
これが、後の火種を生み出すきっかけとなったのです。
【第12話/完】




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