第13話

メセドメキア
リュディア星人リュンジィ
登 場




メセドメキアの邪雲の中で、光を受けるものがあります。
邪気を受入れた光の柱は、その姿を地球へ向けて飛び去ったのでした。

地球サブリナス諸島では、初夏の一番過ごし易い季節が訪れていました。LWD騒ぎの後はメセドメキアの侵略も無く、平穏な時が続いていたのです。
ここ4S隊でも、これまで激務が続いた事により、全ての隊員に交代で休暇が与えられていました。
サブリナス諸島は観光地も有しており、重要施設以外は一般の観光客も訪れる事が多く、人口が一気に増えるのも珍しくありません。
そんな中、“ファ”と“マミ”は、揃って観光地での買い物を楽しんでいました。
“ファ”は異星人であるため、なるべく基地内で行動する事が多く、“マミ”が無理やり外出に誘ったのです。

「ねぇねぇ、ファ。これって可愛くない?」
店屋に展示してある商品を手にとっては、繰り返し感想を聞く“マミ”に、“ファ”は、その気持ちが理解できないようだ。
そんな2人に近づく一人の影。
“ファ”は、その気配を感じると、即座に振り返り手刀を翳しますが、その人物を確認したとたん笑顔になります。
「おいおい、頼むよ、お嬢さん方。どうだいお昼を一緒に」
声をかけてきたのは、同僚の“ムロイ”隊員。彼も休暇で散策中だったのですが、彼女らを見つけて声をかけたのでした。
半ば強引にオープンカフェに彼女らを誘う“ムロイ”隊員。
着席すると、メニューを渡しながら2人にささやくように話しかけます。
「君達は彼らに気づいていたかい?さっきからずっと君達を尾行しているようだが・・・」
「ええ、知ってるわ」
驚く“マミ”を尻目に“ファ”は、頷き返します。
「本部から外出すると同時に尾行されてるの。何者かしら?」
「メセドメキアではなさそうだね。あれは、警務隊さ。しかし何故警務隊が尾行をしているんだろうね?」
「私達をスカウトする為?」
“マミ”のあんまりな答えに、顔を見合わせる“ファ”と“ムロイ”隊員でした。
と、突然諸島全体に鳴り響く警報音。
近くの拡声スピーカーから放送させる状況案内に、3人は基地へと急ぎます。
その彼らを追う黒服の一団も、続くのでした。

地球圏に侵入した光体は、地球防衛網を潜り抜け、アジア山中に着陸したとの報告が統合軍本部に入電します。
4S隊は、防衛軍より緊急出撃を要請され、最初に戻った“ファ”、“マミ”、“ムロイ”隊員に出撃を命じます。3人はSJVに搭乗し、現場に向うのでした。

光体の正体は小型の宇宙船で、森林に不時着しており、炎上していました。
防衛軍の攻撃と大気圏への無理な突入が損害を大きくし、操縦不能のまま墜落したものと思われました。
宇宙船に近づき、調査を開始する3人。
抵抗も無く、宇宙船の操縦席に近づく彼らの前に、意識を失い負傷している異星人の姿が・・・。
その姿を見て“ファ”隊員は驚くのです。
「リュンジィ!!」
「そいつを知っているのか?」
訝しげに“ファ”隊員に問いただす、“ムロイ”隊員。
「ええ、知っているわ。昔の・・・・」
「話は後にして、まずは彼を助け出しましょう」
“マミ”隊員に促され、異星人を助け出す3人。
その直後、墜落した宇宙船は大爆発を起こしたのでした。

科学警察機構への移送を検討していた防衛軍でしたが、参謀本部より直接統合軍本部への移送が命令されます。
統合本部のメディカルセンターへ移送される“リュンジィ”。
心配そうな顔の“ファ”隊員に“マミ”隊員が声をかけるのです。
「大丈夫よ。怪我の具合はここのセンターに任せれば安心よ。それに・・・」 “マミ”隊員の言葉が終わらないうちに“ファ”隊員は無言で自室へ戻っていくのでした。

その夜に突然基地内警報が鳴り響きます。
何者かが重要区画に侵入した為に発せられた警報でした。
4S隊も緊急に集まり、侵入者の捜索に当たります。
第5区画の動力炉近くで不審者を発見した“ファ”と“マミ”は、追跡を開始し、捕らえようとします。
「動かないで!」
“ファ”隊員の声で、立ち止まる不審者。しかし、その姿は“リュンジィ”だったのです。
「リュンジィ?!貴方・・・どうして??」
驚く“ファ”隊員に“リュンジィ”は安堵の表情を浮かべながら近づいてきます。
「ああ、ロギュテル。君を探していたんだ」
SG(スーパーガン)を構えながらも“ファ”には懐かしさにも似た表情が読み取れます。
「リュンジィ、怪我はもういいの?それになぜ、ここに居るの?」
「ロギュテル、君に会いたかったよ。リュディアの戦いで負傷した私は、捕えられたんだ。でも君がこの地球にいると知って脱出してきたんだ」
「リュンジィ、貴方が無事でよかったわ、私も貴方に・・・」
その言葉が終わらないうちに、突然警務隊の一団が現れ、“ファ”、“マミ”、“リュンジィ”の3人を取り囲みます。
銃口をかざす警務隊の後から、参謀“オカモト”の姿が。
「やはり君達かね。何かあると必ず君の姿があるようだね、ファ隊員」
参謀は、部下に命じて“リュンジィ”を拘束しようとします。
しかし“リュンジィ”は抵抗して、逃亡を図ろうとします。
逃げようとした“リュンジィ”に、警務隊員が発砲し、銃弾が彼に命中してしまいます。
倒れる“リュンジィ”、その彼に覆いかぶさるように“ファ”が倒れこみます。
咄嗟に警務隊と“ファ”の間に割って入る“マミ”隊員。
「撃たないで!!」
「そいつには、地球に対するスパイ嫌疑がある。身柄を渡してもらおう」
参謀の申し出に、黙って首を振り拒絶の対応をする“ファ”隊員。その姿に、銃口を再度向けて威嚇する警務隊員。
一触即発の事態に緊張が高まりますが、騒ぎを聞きつけた他の4S隊員が駆けつけ、不慮の事態は避けられました。
“リュンジィ”は警務隊預かりとなり、“マミ”、“ファ”両隊員も自室にて待機となるのです。

“ファ”の部屋を訪れた“マミ”は、“リュンジィ”の事を尋ねます。

「彼は、貴方のなに? 良かったら話してくれない?」
“マミ”の問いかけに、“ファ”は、重い口を開くのです。

「リュンジィは、リュディアでの盟友。私達はメセドメキアとの死闘で共に戦った仲間なの」
「でも彼は戦闘中に行方不明となり、消息が途絶えたの。でも生きているって信じていた」
「そして、彼は本当に生きていたわ!」
「でも地球人は、彼を撃った!魔手から逃げて、安住の地を探そうとして、私を頼って来たのに・・・」

異邦人としての悲しみと辛さを訴える“ファ”の言葉に、返す言葉が無い“マミ”隊員。

「でも、すべての地球人が、異星人を拒絶するわけではないわ!ムロイ隊員のように命を懸けて貴方を・・・」

「ええ、知っているわ。そして感謝しています。でも心の奥でもう1人の私が叫ぶのを止められないの!」
「地球人は、異星人全てに対して敵対しているって・・・」

その言葉を聞いて驚く“マミ”は、懇願するように“ファ”に話します。
「御願い、ファ。そんな風に思わないで」

その時、部屋の扉が開き、警務隊が入室してきます。
「えっ?なに?」 驚く、“ファ”と“マミ”の前に“オカモト”参謀が現れるのです。
「悪いが、君達にも事情を聞く必要があるようになった。同行してもらおう」
「どういうこと?」 “マミ”の質問に参謀は、2人を見ながら話すのです。
「君達には、スパイの嫌疑がある。リュンジィを取り調べた際に、彼から何かを渡されたはずだ!」
「?」 顔を見合わせる2人。
警務隊員が“ファ”の机を調べると、そこから何かの設計図が見つかるのです。
「どうやら事実のようだな。防衛軍の重要機密を盗んだ罪で拘束する!」
「ウソよ!そんな設計図の事なんか知らないわ!」
口を揃えて抗議する2人に、参謀は、にやりと笑みを浮かべると警務隊員に拘束の指示を出します。
壁側に追い詰められる2人。
「リュンジィは何処?彼は何処にいるの??」
「彼か・・・彼は死んだよ。ちと尋問がきつすぎたかな」
平然と死に対して言葉を選ばない、参謀“オカモト”。
怒りに我を忘れた“ファ”は、SGを抜き、参謀に銃口を向けます。それに反応し、2人に銃口を向ける警務隊員たち。そこに“ムロイ”隊員が尋ねてきます。
「お〜い!元気出せよ、ファ・・・・」
不意の来訪者に注意のそれた警務隊員の隙を見逃さなかった“マミ”隊員は、“ファ”を連れて部屋からの脱出に成功します。

「くそ!逃がすな!ロギュテルを・・・」

参謀の声が聞こえる中、銃撃を避けながら廊下を走る“マミ”と“ファ”隊員。
「気づいた?ファ」
“マミ”の問いかけに訝しげな“ファ”隊員。
「参謀、貴方の事をロギュテルって言ったわ。聞いたでしょ」
追っ手を一時的に撒いた2人は、倉庫区画へ逃げ込みます。
「貴方の名前を“ファ”とは呼ばずに“ロギュテル”って呼んだわ。その名前は、4S隊と一部の人達しか知らないはず」
彼女の意図を先読みした“ファ”から驚愕の表情が窺えます。
「そう。かれは参謀じゃないわ。異星人に操られているか、そのものね」
「じゃ、リュンジィが死んだと言うのも・・・」
「それは、分からないわ。でも状況が悪すぎ、どうにかしないと・・・・」
思案顔の“マミ”に“ファ”が提案します。
「監理官に話さないと」
「ええ、でもどうやって執務室に?周りは警務隊だらけよ。さすがに警報は出てないみたいだけどね」
“ファ”は“マミ”に向って天井を指差します。
「ダクトか・・・」
「背に腹は変えられないものね」
言うが早いか、ダクトの扉を開け、執務室へ向う2人。

スパイ容疑の疑いで手配される“ファ”と、その幇助で同じく手配される“マミ”。
2人は無事に“フジ”監理官の元に辿り着き、疑いを晴らせるのか?
そして、メセドメキアの企みとは?・・・
【第13話/完】




ホームに戻る / アルヴィス設定ページに戻る