メセドメキアの邪雲の中で、光を受けるものがあります。 邪気を受入れた光の柱は、その姿を地球へ向けて飛び去ったのでした。 地球サブリナス諸島では、初夏の一番過ごし易い季節が訪れていました。LWD騒ぎの後はメセドメキアの侵略も無く、平穏な時が続いていたのです。 ここ4S隊でも、これまで激務が続いた事により、全ての隊員に交代で休暇が与えられていました。 サブリナス諸島は観光地も有しており、重要施設以外は一般の観光客も訪れる事が多く、人口が一気に増えるのも珍しくありません。 そんな中、“ファ”と“マミ”は、揃って観光地での買い物を楽しんでいました。 “ファ”は異星人であるため、なるべく基地内で行動する事が多く、“マミ”が無理やり外出に誘ったのです。 「ねぇねぇ、ファ。これって可愛くない?」 店屋に展示してある商品を手にとっては、繰り返し感想を聞く“マミ”に、“ファ”は、その気持ちが理解できないようだ。 そんな2人に近づく一人の影。 “ファ”は、その気配を感じると、即座に振り返り手刀を翳しますが、その人物を確認したとたん笑顔になります。 「おいおい、頼むよ、お嬢さん方。どうだいお昼を一緒に」 声をかけてきたのは、同僚の“ムロイ”隊員。彼も休暇で散策中だったのですが、彼女らを見つけて声をかけたのでした。 半ば強引にオープンカフェに彼女らを誘う“ムロイ”隊員。 着席すると、メニューを渡しながら2人にささやくように話しかけます。 「君達は彼らに気づいていたかい?さっきからずっと君達を尾行しているようだが・・・」 「ええ、知ってるわ」 驚く“マミ”を尻目に“ファ”は、頷き返します。 「本部から外出すると同時に尾行されてるの。何者かしら?」 「メセドメキアではなさそうだね。あれは、警務隊さ。しかし何故警務隊が尾行をしているんだろうね?」 「私達をスカウトする為?」 “マミ”のあんまりな答えに、顔を見合わせる“ファ”と“ムロイ”隊員でした。 と、突然諸島全体に鳴り響く警報音。 近くの拡声スピーカーから放送させる状況案内に、3人は基地へと急ぎます。 その彼らを追う黒服の一団も、続くのでした。 地球圏に侵入した光体は、地球防衛網を潜り抜け、アジア山中に着陸したとの報告が統合軍本部に入電します。 4S隊は、防衛軍より緊急出撃を要請され、最初に戻った“ファ”、“マミ”、“ムロイ”隊員に出撃を命じます。3人はSJVに搭乗し、現場に向うのでした。 光体の正体は小型の宇宙船で、森林に不時着しており、炎上していました。 防衛軍の攻撃と大気圏への無理な突入が損害を大きくし、操縦不能のまま墜落したものと思われました。 宇宙船に近づき、調査を開始する3人。 抵抗も無く、宇宙船の操縦席に近づく彼らの前に、意識を失い負傷している異星人の姿が・・・。 その姿を見て“ファ”隊員は驚くのです。 「リュンジィ!!」 「そいつを知っているのか?」 訝しげに“ファ”隊員に問いただす、“ムロイ”隊員。 「ええ、知っているわ。昔の・・・・」 「話は後にして、まずは彼を助け出しましょう」 “マミ”隊員に促され、異星人を助け出す3人。 その直後、墜落した宇宙船は大爆発を起こしたのでした。 科学警察機構への移送を検討していた防衛軍でしたが、参謀本部より直接統合軍本部への移送が命令されます。 統合本部のメディカルセンターへ移送される“リュンジィ”。 心配そうな顔の“ファ”隊員に“マミ”隊員が声をかけるのです。 「大丈夫よ。怪我の具合はここのセンターに任せれば安心よ。それに・・・」 “マミ”隊員の言葉が終わらないうちに“ファ”隊員は無言で自室へ戻っていくのでした。 その夜に突然基地内警報が鳴り響きます。 何者かが重要区画に侵入した為に発せられた警報でした。 4S隊も緊急に集まり、侵入者の捜索に当たります。 第5区画の動力炉近くで不審者を発見した“ファ”と“マミ”は、追跡を開始し、捕らえようとします。 「動かないで!」 “ファ”隊員の声で、立ち止まる不審者。しかし、その姿は“リュンジィ”だったのです。 「リュンジィ?!貴方・・・どうして??」 驚く“ファ”隊員に“リュンジィ”は安堵の表情を浮かべながら近づいてきます。 「ああ、ロギュテル。君を探していたんだ」 SG(スーパーガン)を構えながらも“ファ”には懐かしさにも似た表情が読み取れます。 「リュンジィ、怪我はもういいの?それになぜ、ここに居るの?」 「ロギュテル、君に会いたかったよ。リュディアの戦いで負傷した私は、捕えられたんだ。でも君がこの地球にいると知って脱出してきたんだ」 「リュンジィ、貴方が無事でよかったわ、私も貴方に・・・」 その言葉が終わらないうちに、突然警務隊の一団が現れ、“ファ”、“マミ”、“リュンジィ”の3人を取り囲みます。 銃口をかざす警務隊の後から、参謀“オカモト”の姿が。 「やはり君達かね。何かあると必ず君の姿があるようだね、ファ隊員」 参謀は、部下に命じて“リュンジィ”を拘束しようとします。 しかし“リュンジィ”は抵抗して、逃亡を図ろうとします。 逃げようとした“リュンジィ”に、警務隊員が発砲し、銃弾が彼に命中してしまいます。 倒れる“リュンジィ”、その彼に覆いかぶさるように“ファ”が倒れこみます。 咄嗟に警務隊と“ファ”の間に割って入る“マミ”隊員。 「撃たないで!!」 「そいつには、地球に対するスパイ嫌疑がある。身柄を渡してもらおう」 参謀の申し出に、黙って首を振り拒絶の対応をする“ファ”隊員。その姿に、銃口を再度向けて威嚇する警務隊員。 一触即発の事態に緊張が高まりますが、騒ぎを聞きつけた他の4S隊員が駆けつけ、不慮の事態は避けられました。 “リュンジィ”は警務隊預かりとなり、“マミ”、“ファ”両隊員も自室にて待機となるのです。 “ファ”の部屋を訪れた“マミ”は、“リュンジィ”の事を尋ねます。 「彼は、貴方のなに? 良かったら話してくれない?」 “マミ”の問いかけに、“ファ”は、重い口を開くのです。 「リュンジィは、リュディアでの盟友。私達はメセドメキアとの死闘で共に戦った仲間なの」 「でも彼は戦闘中に行方不明となり、消息が途絶えたの。でも生きているって信じていた」 「そして、彼は本当に生きていたわ!」 「でも地球人は、彼を撃った!魔手から逃げて、安住の地を探そうとして、私を頼って来たのに・・・」 異邦人としての悲しみと辛さを訴える“ファ”の言葉に、返す言葉が無い“マミ”隊員。 「でも、すべての地球人が、異星人を拒絶するわけではないわ!ムロイ隊員のように命を懸けて貴方を・・・」 「ええ、知っているわ。そして感謝しています。でも心の奥でもう1人の私が叫ぶのを止められないの!」 「地球人は、異星人全てに対して敵対しているって・・・」 その言葉を聞いて驚く“マミ”は、懇願するように“ファ”に話します。 「御願い、ファ。そんな風に思わないで」 その時、部屋の扉が開き、警務隊が入室してきます。 「えっ?なに?」 驚く、“ファ”と“マミ”の前に“オカモト”参謀が現れるのです。 「悪いが、君達にも事情を聞く必要があるようになった。同行してもらおう」 「どういうこと?」 “マミ”の質問に参謀は、2人を見ながら話すのです。 「君達には、スパイの嫌疑がある。リュンジィを取り調べた際に、彼から何かを渡されたはずだ!」 「?」 顔を見合わせる2人。 警務隊員が“ファ”の机を調べると、そこから何かの設計図が見つかるのです。 「どうやら事実のようだな。防衛軍の重要機密を盗んだ罪で拘束する!」 「ウソよ!そんな設計図の事なんか知らないわ!」 口を揃えて抗議する2人に、参謀は、にやりと笑みを浮かべると警務隊員に拘束の指示を出します。 壁側に追い詰められる2人。 「リュンジィは何処?彼は何処にいるの??」 「彼か・・・彼は死んだよ。ちと尋問がきつすぎたかな」 平然と死に対して言葉を選ばない、参謀“オカモト”。 怒りに我を忘れた“ファ”は、SGを抜き、参謀に銃口を向けます。それに反応し、2人に銃口を向ける警務隊員たち。そこに“ムロイ”隊員が尋ねてきます。 「お〜い!元気出せよ、ファ・・・・」 不意の来訪者に注意のそれた警務隊員の隙を見逃さなかった“マミ”隊員は、“ファ”を連れて部屋からの脱出に成功します。 「くそ!逃がすな!ロギュテルを・・・」 参謀の声が聞こえる中、銃撃を避けながら廊下を走る“マミ”と“ファ”隊員。 「気づいた?ファ」 “マミ”の問いかけに訝しげな“ファ”隊員。 「参謀、貴方の事をロギュテルって言ったわ。聞いたでしょ」 追っ手を一時的に撒いた2人は、倉庫区画へ逃げ込みます。 「貴方の名前を“ファ”とは呼ばずに“ロギュテル”って呼んだわ。その名前は、4S隊と一部の人達しか知らないはず」 彼女の意図を先読みした“ファ”から驚愕の表情が窺えます。 「そう。かれは参謀じゃないわ。異星人に操られているか、そのものね」 「じゃ、リュンジィが死んだと言うのも・・・」 「それは、分からないわ。でも状況が悪すぎ、どうにかしないと・・・・」 思案顔の“マミ”に“ファ”が提案します。 「監理官に話さないと」 「ええ、でもどうやって執務室に?周りは警務隊だらけよ。さすがに警報は出てないみたいだけどね」 “ファ”は“マミ”に向って天井を指差します。 「ダクトか・・・」 「背に腹は変えられないものね」 言うが早いか、ダクトの扉を開け、執務室へ向う2人。 スパイ容疑の疑いで手配される“ファ”と、その幇助で同じく手配される“マミ”。 2人は無事に“フジ”監理官の元に辿り着き、疑いを晴らせるのか? そして、メセドメキアの企みとは?・・・ 【第13話/完】 |