緊急展開する地球防衛軍、宇宙戦闘艦隊。火星軌道上で待ち受ける彼らの目の前に、宇宙船団が地球に向って進んでゆきます。 地球で言う貝殻型の宇宙船は、数隻認められ、防衛軍の勧告も無視しながら進路を維持していました。火星軌道に至るまで、全くの通信封鎖をしており、目的が皆目不明でした。メセドメキアの新しい牙獣かと思われましたが、あまりの進行速度の遅さに否定的な見方をされていたのです。 防衛軍は臨検の為に艦隊を差し向けます。その艦隊が展開しているのです。 「こちらは地球防衛艦隊“旗艦アルマダ”である。貴船団の目的と所属を述べよ。これは最後通告である」 艦隊司令の勧告でも船団の進行は止まりません。 「侵攻してくる敵宇宙船を撃滅する。砲雷撃戦用意!」 防衛軍の戦闘艦の砲塔が、船団を指向します。 「全艦・・・」 「司令、緊急通信があります。宛 宇宙艦隊 元 統合防衛本部 :コウゲキヲチュウシシ、センダンヲゴエイシ、ツキキドウニムカエ 以上」 副指令からの連絡で攻撃の中止を行った艦隊は、一転して護衛をすることになります。これは、先ほど突如として入電してきた謎の船団からの通信が解読できた為でした。 船団は、牙獣に通信機能が破壊され、その修理が完了するまで通信ができない状態と分かったからです。 防衛軍では、船団をメセドメキアから逃げてきた異星人達の集団(難民)と判断していました。 彼らの要求は、以下の通りです。 “我々、恒星アバンとその周辺地域の星人は、地球に保護を求めます。こちらは牙獣の攻撃を繰り返し受け、宇宙船の被害甚大で、食料等物資の備蓄も底をついています。ぜひ我々の願いを・・・・” 恒星アバンは、数ヶ月前に連絡を取り合っている異星人との連絡会議で、壊滅した事が確認されていました。 一旦、月軌道で船団を確保し勾留した防衛軍は、国連にて事態を説明し、受け入れについて協議に入ります。 会議は紛糾し、各国の思惑も入り、結論に達しません。 しかし、人道上(異星人を人として認めるかどうかは異論があったが・・・)の理由から、結論が出るまで、物資の補給のみ許可する事にしたのです。 「なぜ彼らを受入れて頂けないのですか?フジ監理官、答えてください」 「状況と補給部隊の報告から、かなりの損害が彼らの宇宙船にあるようです。このまま放置すれば彼らは、滅んでしまいます」 “ファ”と“ムロイ”両隊員に詰め寄られる“フジ”監理官。 彼らは、難民の悲惨さと厳しさを知っているだけに、今回の国連の決定の理不尽さに怒っていたのです。 「分かっている・・・が、まだ交渉している状態なの。無理に受け入れを開始すれば、地球人と異星人の間で問題が発生する事を心配しているらしいの」 「私もこれから執政官の補佐として、国連会議に向う予定なの。一刻も早く、受け入れが認められるように尽力するつもりよ」 “フジ”監理官の言葉を受入れるしかない二人は、本部司令室での待機に戻るのでした。 監理官の乗る特別機が発進すると、すぐに防衛軍の監視網が急速に月へ接近する物体を報告してきます。 「接敵影は、牙獣と判断される。繰り返す、牙獣と判断される」 防衛軍からの連絡に4S隊は、代行指揮を行う“モリオ”隊長の下、SJVの出撃準備を始めます。 ところが、突然に防衛軍からの連絡が、4S隊に入るのです。 「これより国連暫定決議に基づき、地球防衛の為にLWDを展開する。亜宇宙圏内の飛行は、これを安全の為に禁止する。 以上」 防衛軍は、牙獣の地球への侵入を防ぐ為に、LWDを展開して安全を確保しようと言うのでした。 LWDは地球を壊滅に導く兵器でしたが、あれから科学局の研究・改良を重ねて、メセドメキアに対する有効な防御兵器として再利用しているのです。 「彼らを見殺しにするのですか?地球人は!」 “ファ”隊員が呟きます。 「隊長!」 足止めをされ、出撃を取りやめになった4S隊員達も憤懣が募ります。 「私達だけでも飛ばしてください」 「無理にでも発進します。隊長!」 特に“ファ”と“ムロイ”が搭乗するSJVは、独断でも出撃する気配を呈していました。 「お前たちは・・・まったく」 “モリオ”隊長はにやりと笑うと、防衛軍に連絡を取るように通信員に指示します。 「4S隊から防衛軍へ。SJVは離陸を開始。大気圏脱出は2分後。LWD展開を待たらせたし!」 「お前達、頼んだぞ。責任は俺が取る」 「隊長・・・・」 “モリオ”隊長の決断に勇んで飛び出すSJV。 SJVの亜宇宙脱出とともに地球にLWDの光の帯が張られるのでした。 牙獣の攻撃を受ける宇宙船団。 防衛軍も応戦しますが、機動性の悪い宇宙戦闘艦では、牙獣の敵ではありませんでした。次々と粉砕されてゆきます。中には船団の盾となって沈んでゆく船もあります。地球政府の意思とは関係なく、艦隊の諸兵は、異星人の宇宙船を守る為に牙獣の盾になって撃破されていくのです。 船団は地球艦隊の犠牲で最小限の被害で済んでいましたが、牙獣の攻撃は続いており、壊滅も時間の問題でした。 「なんといことを・・・牙獣!!」 SJVは、牙獣が船団を攻撃するのを阻止する為に攻撃を開始します。しかし牙獣の攻撃は止みません。ついには2番機が被弾してしまうのでした。 「マミ!」 被弾してLWDに墜落してゆくSJV。 LWDに触れれば、SJVは跡形もなく消え去ってしまうでしょう。 誰もが覚悟した時、光が輝き、アルヴィスが現れ、墜落するSJVを捕まえるとLWDから引き離してゆきます。 SJVを無事な空間に移動させたアルヴィスは、牙獣と対敵するのです。 牙獣の高速に翻弄されるアルヴィスでしたが、クリッピングビームで動きを抑制する事に成功し、牙獣の動きが止まります。 動きの遅くなった牙獣は、アルヴィスの前に屈するのでした。 「我々地球人類は、すでに星間戦争に巻き込まれています。 メセドメキアの脅威がそれです。 彼らによって多くの星々が取り込まれ、消滅しているのです。 これからも侵略行為は続くでしょう。 これに対抗するには、我々の力だけでは不足です。 メセドメキアを敵と認識する、全ての異星の人々と協力してゆく関係を築くことが、勝利する近道となるはずです。 姿形が違う、異星の生物を我々と同じに扱うなとの意見もあります。 が、彼らも人なのです。 自分達で考え、笑い、恐怖する、間違いながら進化する、我々と同じ人なのです。 ならば我々地球人も人として、彼らに対応する必要があるはずです。 “自分達だけがよければいい”と言う考え方は、恥ずべき事だと信じます」 議場、“ハヤタ”執政官の演説後、国連は難民の受け入れと、正式に対メセドメキア宇宙連合軍への加盟を決議することになります。 今初めて、地球は異星人に門戸を開き、外の世界との共存を意識し始めたのでした。 難民船団の救出に成功した4S隊は、地球の科学センターで難民の受け入れに奔走していました。 忙しく対応する“ファ”達。 しかしその笑顔は、なによりも代えがたい信頼を得た自信の表れでもありました。 【第17話/完】 |