基地郊外パーグシティで頻発する爆破事件に、4S隊も警備任務についていました。過激派とも異星人とも、犯人の噂の絶えない中で、事件だけが発生していたのです。
為に、パーグシティには、警務局隊員による巡回が繰り返されていて、多数の彼らの姿が見られたのです。
市民に動揺が広がらないようにと、防衛軍が取締りを強化しましたが、不安感は払拭できず、あまつさえ、爆破事件は繰り返されていたのでした。 郊外大型ショッピングセンター。 ここはシティでも有数の総合ショッピングセンターで、買い物客の出入りは1日数千人に及びました。 最近は異星人の姿も多く見られ、地球人と異星人が邂逅できる最も有名な場所でした。 「ねぇ、お母さん。あの緑の人は、何処から来たのかしら?」 一組の地球人女性の買い物客、それは4S隊のモリオ・シン隊長の妻と娘さんでした。 地球外生命体を興味津々に見つめて話しかける娘に、母は諭します。 「失礼ですよ、ヨウコさん。あんまりジロジロ見てはいけません」 最近特に異星人に興味を持ち始めた娘に、あきれ顔の母。 「お父さんの影響なのかしらねぇ」 ため息をついて娘を見た瞬間、背後の店舗から煙が上がったかと思うと、爆音が響き渡ります。 近距離での爆発でしたが、末端操作ボックスが盾になり、二人は軽症で済みます。 辺りは、四散した残骸と死傷者であふれかえっていました。 混乱する二人は、その場所を脱出しようとする人々の群に飲み込まれます。 その際、娘は一人の人物が、見慣れない操作盤を隠すのを見たのでした。 一瞬の事でしたが、見られた事を察した彼らは、二人を人ごみと混乱に乗じて拘束します。 数分後、警務隊や救助隊が到着した時、彼らの姿はそこから消えていたのでした。 「如何思います?最近の爆破事件。地球側のテロとの噂もあるのですが・・・」 “リョウコ”隊員の質問に“ナガイ”隊員も思案下に答えます。 「異星人説も多いね。どちらにしても人身の撹乱が目的だとすれば、効果はあるね」 「パトロールでも事件を防げていないので、市民団体や異星人協会からの突き上げが怖いですね」 「防衛軍も大変だよ」 コーヒーを飲みながら“モリオ”隊長は、続けます。 「だが、4S隊もパトロールを強化するよう要請があった。今後も爆破事件が続けば、防衛軍の威信に関わるだけでなく、犠牲者の数も増えるだろう」 「みんなも心して頑張ってくれ」 そこに“ムロイ”隊員が、“モリオ”隊長に外線がある事を伝えます。 「奥様からお電話です。なんでも急用のようですよ」 電話を取ると“モリオ”隊長の表情が曇ります。すこし慌てたように電話を切る“モリオ”隊長。 「困ったものだ。仕事場へ家庭の事でTELするなんて・・・、自室で取るので、後を頼む」 言い残すと、司令室を出てゆきます。 「隊長も大変だね。妻子持ちは苦労が耐えないよね」 「俺は、お前の子守のほうが苦労が耐えないのだがな・・・」 “ムロイ”隊員の軽口に“タヌマ”副隊長が切り返します。苦笑し合う4S隊隊員達。 そんな中で、“マミ”隊員だけは、いつもと様子が違う“モリオ”隊長の姿に気づいていました。 自室の外線で通話する“モリオ”隊長。 「娘と妻は、無事なのだな」 「ああ、そこで交換条件がある。君にしかできないことだ。統合本部への無制限アクセスコードが欲しい」 「アクセスコードだって?」 「そうだ。そのコードと引き換えに人質を換えそう。期限は・・・場所は・・・だ」 相手は用件を言い残すと、“モリオ”隊長の呼びかけに答えず通信を切るのでした。 “モリオ”隊長は、“フジ”監理官に急用の届けを出し、統合本部を後にします。急な隊長の行動に、4S隊は動揺しますが、“タヌマ”副隊長に代行する事で任務を引き継ぐのでした。 郊外の倉庫施設へ向う“モリオ”隊長。その後方には、“マミ”隊員の姿が・・・。 隊長の異常を感じ取った彼女は、“フジ”監理官に事情を話し、同様に休暇届を出して隊長の後を尾行していたのです。 「きたぞ!そこにいるのか」 大声で叫ぶ“モリオ”隊長の前に、誘拐犯たちが姿を現します。 「我が“粛清の絆”にようこそ。モリオ隊長」 4〜5人の地球人が、“モリオ”隊長の前に立ちます。 「ほう、地球人グループだったとは驚きだな。てっきり俺は、異星人かと・・・」 “モリオ”隊長の言葉は、彼らを傷つけたようです。 「だまれ!だまれ!異星人から地球を守り、地球から異星人を粛清するのが、我々の責務なのだ」 「その異星人と手を組んだ防衛軍は、我々に対する犯罪行為だ!」 彼らは、これまでのメセドメキアの侵略戦争で、家族や恋人を失った人々だったのです。 「モリオ隊長。我々は不本意にも一般民間人を捕らえることになった。爆破現場で、我々の姿が見られたからだ」 「しかし、その人質が4S隊の関係者と知り、有効利用させてもらうことにした」 「これは、我々の愛する人達を救えなかった事に対する、貴様たちへの許された行為なのだ」 自己陶酔する形で、演説のように持論を展開する彼らの話を黙って聴いていた“モリオ”隊長は、一言問いかけるのです。 「では、なぜ君達の爆弾は異星人の技術を使って作られているのだ?」 驚いたように顔を見合わせる彼ら、“粛清の絆”グループ。 「なに?それはどういうことだ!?」 リーダーは、仲間の一人に問質します。その仲間の一人は肩を震わせると雰囲気が一変し、凶悪な一面を表すのです。 「あ〜あっ、ばれちゃった。五月蠅いね君は。地球人ごときがあんな高性能な爆弾つくれるわけないでしょう」 「異星人の力を借りて、異星人を排除する?笑わせてくれるよ。現実が認識できない者は・・・」 いきなりリーダーの頭部を掴み、その腕力で握りつぶすと、“モリオ”隊長に相対します。 「五月蠅いハエは、いなくなったわ。で、コードを教えてもらうわよ」 「こ・と・わ・る」 意外な反応に驚くバークス星人。 「じゃ、貴方の家族も、彼らの家族のように死ぬのよ」 「ああ、俺も一緒に死ぬ為に、ここに来た。コードは渡せない。しかし家族を救出する事は、できない。ならば出来る事は自ずと決まる」 “モリオ”隊長は相手を見据え、覚悟を決めたように座り込みます。 「どうして地球人って、扱い難いのでしょうねぇ」 あきれ顔のバークス星人は、そう言うと体を輝かせるのでした。 「では、死んでしまいなさい」 牙獣に転身して、“モリオ”隊長とその家族、絆のグループを踏み潰し、妬き殺そうとします。 危険を認識した“マミ”は、4S隊本部に連絡するとアルヴィスに変身してバークス星人の行動を阻止します。 バークス星人の攻撃を掻い潜り、家族と絆のグループを救出した“モリオ”隊長。 そこに4S隊の皆も現われます。 「お前たち!ここがどうして・・・・」 驚く“モリオ”隊長でしたが、すぐに冷静さを取り戻します。 「いや、詮索はあとだ、彼らを安全な場所へ」 アルヴィスは、彼らが安全地帯に逃げ出すのを見届けると、フラッシュリングをバークス星人に叩きつけ、倒すのでした。 絆のグループは警務隊に送られますが、情状が酌量され罪は軽いものになるでしょう。 “モリオ”隊長の家族も無事に救出され、何時もの日々が戻りました。 任務に復帰した“モリオ”隊長。 司令室で書類の整理をしている彼の後ろから“マミ”隊員がそっと近づいてきます。 耳元にささやくように声をかけるのでした。 「俺も死ぬために来た・・・・自ずと決まる!」 何処かで聞いた台詞に、思わず咳き込む“モリオ”隊長。 「マ、、マミ隊員・・・どこでそれを・・・・」 その姿を見て、“マミ”隊員は笑顔で言うのでした。 「良かったですね。隊長♪」 【第19話/完】 |