諸島に見える【サブリナス地球統合本部】通称アンブレラベースは、その姿を朝焼けの光の中に浮かび上がらせています。 地球防衛の要として、常時2000人の隊員が職務につき、家族を含めると5000名を超える人員を有する此処は不夜城でもありました。 その一室、中央シャフトに位置する此処は、特務科学特捜隊監理官の専室です。 現在は、フジ・アキコ女史・一等監理官が、その責務に当たっていました。 執務室の窓辺に静かに佇むフジ監理官。 その背後には、起立姿勢で立つ4S隊の隊員達がいます。 「4S隊は、マウリヤ星の要請により、連絡を絶った宇宙船の捜索と救助の為に出撃します」 “モリオ”隊長が復唱します。 「ええ、但しマウリヤ星からの通信文は上手く翻訳できず、詳細は不明です。充分注意を払って下さい」 「了解しました」 “モリオ”隊長と同時に敬礼する、隊員達。 急ぎ準備と装備確認の為、4S隊地区へ移ろうとする時、フジ監理官が声をかけます。 「マミ・ショウ隊員には少し話があります。残って下さい」 怪訝な顔をする他の隊員達でしたが、“マミ”を置いて部屋を出て行きます。 不安そうな“マミ”隊員にフジ監理官は微笑みながら話しかけるのでした。 「4S隊は、如何かしら?少しは慣れましたか?」 「はい。皆さんのお蔭で助かっています」 元気な答えを返す“マミ”にフジ監理官は問いかけます。 「マミ隊員・・・。私ウルトラマンを知っているの」 「ウルトラマン?ですか・・・?」 意外な言葉に如何反応して良いかわからない“マミ”にフジ監理官は言葉を続けます。 「彼には名前があるのかしら?貴方は御存知?」 この時“マミ”はフジ監理官が、アルヴィスの事を言っていることに気がつきます。 如何するか・・・“マミ”は即断しました。 「監理官殿。お話されている意味が、わかりません。出撃の準備がありますので、これで失礼します」 慌てて、部屋を辞する“マミ”に微笑むフジ監理官の姿がありました。 《ああ、驚いた。アルヴィスの事を何故知っているのかしら?》 部屋から飛び出してきた“マミ”の姿に驚く“リョウコ”隊員。 彼女は“マミ”を心配して、外で待機してくれていたのです。 「どうしたの?マミ、そんなに慌てて。何かあったの?」 心の動揺を隠すように笑顔で答える“マミ”隊員。 「いいえ先輩。皆さんに遅れないよう急いで飛び出したんです。御心配掛けました」 “リョウコ”と“マミ”両隊員は、4S隊地区へと急ぐのでした。 Umbrella.baseを離脱して宇宙空間を飛行するSJVは、マウリヤ星人から連絡のあった宇宙船の捜索を行っていました。 マウリヤ星人からの要請は、行方不明の宇宙船が太陽系に消えたので、捜索して欲しいという事でしたが、積荷、乗員等の詳細は不明であり、地球防衛軍は近辺の民間宇宙船を向かわせずに、4S隊に出動を命じたのです。 宇宙船は、火星軌道上で見つかります。 宇宙船は外壁が破損しており、内部の機器もかなりの損害があるものと判断されました。 「今より接舷する!タヌマは、捜索班を指揮!」 “モリオ”隊長の指示が飛びます。 「了解!ナガイ、ムロイ、リョウコは、俺に続け。」 “タヌマ”副隊長の言葉の中に自分の名前が無い事に気づいた“マミ”隊員。 「副隊長!私も・・・」 「マミ隊員は、現状維持で待機!隊長を補佐せよ」 置いてきぼりを食う事に不満顔の“マミ”隊員に、捜索任務につく隊員が話しかけます。 「行ってくるからな、マミ。留守番頼んだぞ」と“ナガイ”隊員。 「お土産を待ってな」と“ムロイ”隊員。 「何かあったら頼んだわよ」と“リョウコ”隊員。 マウリヤ星人の宇宙船に侵入する4S隊員達。 内部はかなりの損傷が見受けられ、マウリヤ星人と見られる人型の生物の屍体が散乱。 生存者は無いかと思われた時、カプセルに入り冬眠常態になっている異星人を発見、そのままの状態でSJVへ格納する事に成功し、地球への帰還を果したのでした。 地球の国際科学警察機構、ボリビア支部へ移送した4S隊は、このまま現地に留まり、冬眠状態の生物の解凍を見守ります。 サブリナス地球統合本部に詳細を報告し、4S隊の隊員達には、つかの間の休息が与えられました。 しかし独り、“ムロイ”隊員は、マウリヤ星人の宇宙船から回収したディスクの分析を続けなくてはなりませんでした。 数時間後、ボリビア支部でカプセルの解凍作業中に突然カプセルが崩壊し、中から異星人が飛び出してきます。 異星人は職員を殺害し、その肉体を取り込んでしまいます。 異星人は、次の獲物を求めて基地内を徘徊するのでした。 解凍状況の確認の為に研究施設を訪れた“モリオ”隊長は、カプセルが破れ異星人が消えている事に気づきます。 緊急招集をかける“モリオ”隊長。 其処に先の異星人が現れます。 SSGで応戦する隊長に、部下の応援がやってきます。 処が異星人は一体でなく、通路から無数の異星人がやってきます。 「こいつら、いったい何処から侵入したんだ?」 そこにディスクの解析を終えた“ムロイ”隊員から連絡が“モリオ”隊長に入りました。 「隊長、あれはマウリヤ星人ではありません。彼らが捕獲して研究していた群生肉食獣“ザイム”だそうです。奴は、捕食した生物と同じだけ個体を分離できるようです」 「つまり、あれは此処の職員が食われて、分離した奴の分身か?!」 「と言う事は、ここの職員300名近くを相手にする事になるかも・・・」 話を横聴きした“タヌマ”副隊長は呟きます。 SSGで応戦しながらも、数が多い為、ついには研究所の奥に追い込まれてしまう4S隊隊員達。 電気系統が銃撃で破損した室内は薄暗く、4S隊は個別の戦闘を強いられ苦戦に陥ってしまいます。 “マミ”隊員は、アルヴィスに助けを求めました。 「アルヴィス、御願い!」 耳のイヤリングが光ると“マミ”の体を取り囲み、アルヴィスが現れます。 「むう?新手か!?」 光を見た“ナガイ”隊員は、SSGの銃口を向けようとしますが、そばにいた“リョウコ”隊員に止められます。 「いえ、敵じゃないわ!又彼が現れたわ!」 アルヴィスは無敵のパワーでザイムを倒していきます。 形勢が不利なのを悟ったザイムは、全ての群生体を終結させ合体、巨大獣に変化し、基地外へ脱出しようとします。 しかしアルヴィスは、ザイムに熱波光線デッドショットを放ち、焼き滅ぼします。 此処に地球の危機は救われたのです。 マウリヤ星人は“ザイム”の遺伝子を変化させ、生体兵器として運用するつもりで宇宙船で運搬していたのでした。 しかし、手違いからカプセルの一つが開放され、マウリヤ星人もボリビア支部の人間と同じ運命に陥ったのです。 連絡を絶った宇宙船が太陽系内に迷い込んだ事を知ったマウリヤ星人は、地球に連絡し爆破を依頼したのですが、通信文の解析が不完全な為、救出活動と誤解した人類は“ザイム”を地球圏に入れてしまったのです。 正に、招かざるもの、がやってきたのでした。 サブリナス地球統合本部で報告を受けるフジ・アキコ女史・一等監理官。 「ザイムの件、ご苦労様でした。貴方達の活躍で、無事この件を解決する事ができました。以上で状況を終了します」 敬礼後、部屋を退出していく4S隊隊員達。彼らの退出を確認すると“モリオ”隊長が監理官に問いかけます。 「監理官殿!」 「なんでしょう、モリオ隊長?」 「報告書にも記載しました通り、例の謎の異星人の件なのですが・・・・もしや・・」 「ああ、あれね」 監理官の返答に訝しげな“モリオ”隊長。 「そうね、暫くは記録から削除します。これは、特務科学特捜隊監理官の一存で行います」 「了解しました」 「“モリオ”隊長。今後の作戦に障害がある為に一言述べておきますが、二人の秘密としておいて下さい」 “モリオ”隊長の顔に緊張の色が浮かびます。 「彼は、ウルトラマン。以前地球を救ってくれたウルトラマンと同種の異星人みたいね。マウリヤ星人に今回の画像を転送し、報告した後に返礼通信がありました。それには、アルヴィスとありました。マウリヤ星人は、彼を知っているみたいね」 「ウルトラマン・・・アルヴィス・・・ですか?」 「ええ、しかし名称以外は、極秘事項とします。よろしくお願いしますね」 “モリオ”隊長に、フジ監理官は微笑みかけると、退出を促します。 部屋を辞する“モリオ”隊長は、再度呟きます。 「ウルトラマンアルヴィス・・・ウルトラマン・・」 かつて、どこからともなく現れ、我々地球人の危機を幾度と無く救ってくれた謎の生命体・ウルトラマン。 “モリオ”も少年時代に憧れていた銀色の巨人・ウルトラマン。 そのウルトラマンの同族がこの地球にやってきたというのでしょうか? しかし国際科学警察機構は、以前のウルトラマンの生態や行動原理などについて未解明のままでした。 “地球人類に味方する正義のヒーロー” これだけがただ一つはっきり言えた事だったのです。 はたしてこのアルヴィスも我らの味方なのか? 監理官は何かを知っているというのか? 疑問を持ちつつも、信頼する監理官の言葉に再び任務につく“モリオ”隊長でした。 【第2話/完】 |