地球外生命体との交流で、徐々に異星人の文化が流入し始めた地球に、色々な商品が見られるようになりました。
検閲の為、全ての物流が開放されたわけではありませんが、異種技術は、地球の科学力の一端を担うようになっていたのです。 その中でも最近、爆発的に地球人に受入れられている商品がありました。 その機械の名前はフォトーン。 地球人にその機械が受入れられた訳は、その機械の特殊な機能にありました。 1m×2mの箱型のフォトーンは、開放口より物質を投げ込むと、すべてを分解してしまうのでした。 環境破壊とゴミ問題に苦労していた地球人は、争ってこれを購入します。 すべての廃棄物がこれによって処理されるようになると、その大きさや家庭でも購入できる手軽さ等から、爆発的な勢いで広がっていったのです 防衛軍の庶務局でも購入され、4S隊司令室にも、ゴミ箱として置かれていました。 「こりゃ便利になったねぇ。捨てると無くなる、手品みたいだ」 「ゴミ処理も莫大な手間をかけず、お金も消費しなくて、これからは地球もきれいになるわ」 口々に便利さを讃える、4S隊隊員たち。 「しかし、科学局もこの箱の分析はできなかったそうだ」 「ブラックホールでも仕込んでいるのですかねぇ?」 「まさか?」 驚く、4S隊隊員に“モリオ”隊長は、真剣なまなざしで話を続けるのです。 「その為に4S隊は、フォトーンの実体を調査するように国際科学警察機構に依頼された」 「どうも警察機構は、こいつを不審な物体と疑っているようだ」 4S隊は調査のために、フォトーンを売り出している銀河商社ムルバンガスに向うのです。 ムルバンガスは、銀河宇宙でも名の知られた商社で、所謂揺り籠から墓場までを謳い文句に活動していました。 しかし科学警察機構では、ムルバンガスの裏の面を心配していたのです。彼らは、紛争地域で死の商人としても暗躍しており、フォトーンがある種の兵器ではないかと疑っていたのです。 初めて会うムルバンガスは、愛想の良いまさに商人的な異星人でした。 しかし異星人の言葉を理解できる“ファ”は、ムルバンガスの付き人がしていた会話を聞き逃す事はしませんでした。 ≪地球人の奴らなにか気づいたのか?≫ ≪やつら、なんにもしっちゃいねーよ、おい!愛想笑いしとけ≫ “ファ”の顔を見て、笑顔で会釈するムルバンガスの異星人に、“ファ”は微笑を返すのでした。 会談を終えた4S隊は商社を後にしますが、“ファ”からの話を聞いた“モリオ”隊長は、商社への潜入を計画します。 「やはり何らかのからくりがあるようだ。その正体を暴くぞ!」 深夜、商社に潜入する4S隊。 地球での協定で、建物の構造は地球で提供するものを改造しないようにとの申し合わせがありましたが、この商社は地下深く改築、改造されていたのです。 すでに地上部分での業務は終了している為、最低限の警備を残しているだけで静まり返っていました。 しかし地下部分に至る通路には多くの異星人の姿が見られ、荷物の運搬作業に移ろうとしているようでした。 ≪次の班は、地下第三ブロックだ、急げよ≫ 追い立てられるようにエレベーターに載せられ移動する異星人たち。 「一体なにを運んでいるんだろう?」 「さあ?それよりフォトーンを調べに来たのでしょ!!」 “マミ”隊員が一喝し、潜入を継続する4S隊。 ついに彼らは、深部にある秘密施設のありかを突き止めたのでした。 目の前にそびえる巨大な壷、その姿を見て“ファ”が驚きます。 「こ・・これは、クラインの壷」 “ファ“隊員がつぶやいた言葉を聞き、問質する”タヌマ“副隊長。「なんだ、これは?」 「これはクラインの壷だと思います。クラインの壷は4次元で存在する内外面を共有する壷の事です」 「たぶんフォトーンはこいつと繋がっていて、フォトーンに捨てられたゴミや廃棄物はこれに蓄積されていただけでしょう」 「これが満杯になったらどうなる?」 「今は流入弁も排出弁も閉鎖されていますが、これが開放・・・・」 心配そうに壷を見上げる“ナガイ”隊員に、“ファ”隊員が答えようとした瞬間、ムルバンガスの兵士達に取り囲まれてしまいます。 銃を構え、威嚇するムルバンガス兵達。その影からムルバンガス本人が現われます。 「おやおや、これは4S隊の皆さん、おそろいで」 ムルバンガスは、4S隊を見回すと愉快そうに話します。 「どうも地球人は、等価交換というか、自己責任が少ないんでしょうね〜」 「ゴミも廃棄物も自分たちの都合で生み出した負の遺産ですよ。それを簡単に処理できると思って安易に考えましたねぇ」 「宇宙はゴミ箱じゃないんですよ〜〜」 諭すような口調に“ファ”隊員が問いかけます。 「だとしても、クラインの壷をフォトーンとして売り出すなんて非常識にも程があるわ!」 「おじょうさん、だれも無公害処理機としてフォトーンを売り出したわけではありませんよ。誤解したのは無知な地球人の貴方がたです」 「自分の目の前に無ければ、それは無いもの、存在しないものと考えている貴方がたの悪い癖です」 地球人をこ馬鹿にした言い草で表現するムルバンガス。 「でも、もう手遅れよね。クラインの壷ももう満杯。そろそろ逆流が始まるのね〜〜」 気楽に話すムルバンガスだったが、状況は最悪でした。ここ数ヶ月にわたり捨てられていたゴミや廃棄物が、すべてのフォトーンから逆流してくるのです。生ゴミならまだしも、一部の所では核廃棄物をも投棄していたのです。 もしそれが地球上に開放されたら・・・・。 「ゴミに埋まりながら、死になさい地球人。これがメセドメキア様からのメッセージよ!」 笑いと共に、姿を消すムルバンガス。それを追う4S隊でしたが、微妙に感じる揺れが地下から轟いてきます。 「いかん、壷の逆流が始まるぞ、一旦この場から撤収する!」 “モリオ”隊長の命令に従い撤収を始める4S隊でしたが、崩落と揺れにバラバラで逃げる事になるのでした。 「マミ!まさかこのまま逃げ帰るなんて考えてないでしょうねぇ??」 “ファ”の問いかけに踵を返すと“マミ”は、言います。 「冗談じゃないわ。あれだけ地球人をバカにされて黙っていられると思う?」 二人はニヤリと笑みを浮かべると、ムルバンガスが逃げ去った方向に走ってゆくのです。 地上に脱出した4S隊は、防衛軍にフォトーンに対する警告を促しますが、対応に苦慮してしまいます。 支社の格納庫から現われる超巨大円盤。地球から脱出しようとするムルバンガスの円盤です。 SJVで追跡する4S隊。その行動を疎ましく思い、牙獣に応戦させるムルバンガス。 牙獣の攻撃に苦戦し、ムルバンガスの円盤は地球を離れていきます。追跡を続行しようとするSJVに襲い掛かる牙獣に4S隊はピンチに陥ります。 そこに現われるウルトラマンアルヴィス。 牙獣の攻撃から4S隊を守ったアルヴィスは、牙獣と激闘を重ねます。しかしアルヴィスの圧倒的パワーの前に牙獣は敵ではありませんでした。 地球防衛圏を突破して、ムルバンガスの円盤は亜空間に突入してゆきます。 「くそう、ムルバンガスの奴。逃げられたか・・・」 「防衛軍から連絡です、隊長」 ムルバンガスを逃がしてしまい、クラインの壷逆流現象を心配していた4S隊のSJVに連絡が入ります。 「現状、各国のフォトーンに関して回収作業を施行中。現在フォトーンに何の変化もなし 以上」 安堵する4S隊であったが、疑問がありました。 「いったい逆流した廃棄物やゴミはどこへ?」 そこに入電する“マミ”と“ファ”隊員からの連絡。 「お前たち無事だったのか!良かった、良かった」 安堵の表情の“モリオ”隊長。 「その問いには、ファが答えますわ」 「ええ、隊長。ムルバンガスの持っていたクラインの壷本体を、やつらの円盤に積み込んでおきました。奴ら地球で交換した物資や金属類を持ち逃げしようとしていましたから、その中に紛れ込ませて・・・です」 「当然、壷の電磁栓は、タイマーをかけて開放するように細工しときました」 いたずらっぽく語る“ファ”とそれを見ている“マミ”は、笑いを隠せないようでした。 「とすると・・・逆流するはずだった廃棄物は・・・」 「ええ、内圧に耐えかねて地球上に噴出するはずの廃棄物は、電磁栓の開放された円盤内に噴出しているはずよ」 「ムルバンガスの円盤内は・・・・」 「ゴミと廃棄物であふれかえるでしょうね」 その頃ムルバンガスの円盤内部では・・・ ≪どわ〜〜なぜクラインの壷がここにあるんだ?≫ 驚くムルバンガスに手下の異星人が注進します。 ≪ゴミが・・・廃棄物が・・・船内にあふれてきます≫ ≪くそう!覚えていろ地球人め!!≫ 亜空間内でゴミを撒き散らしながら飛行するムルバンガスの円盤の姿が、そこにありました・・。 【第20話/完】 |