第22話

共生宇宙生命体フリフォール
登 場




統合作戦本部では常時2000〜2500名の隊員が、任務についています。
しかし統合本部で働く人間は、戦闘任務だけを繰り返しているだけではありません。 3000名近い人間の腹を満たす事は、通常の業務として考えてもかなりの重労働でした。
統合作戦本部の胃袋、その一つであるカフェテリアは、4S隊でもお気に入りの一つでした。他の設備と違い、ここは開放型の食事施設で、日時を問わず完全無休であることも、激務を繰り返す4S隊には有益な場所だったからです。

「いや〜今日のパトロールは大変だったな」
「先輩、頼みますよ、飛行機じゃないのですから、曲芸的走行は勘弁してください」
“ナガイ”と“ムロイ”両隊員は、和気藹藹と話しながらテリアに入店してきます。
そこに声をかける人物がいました。
「ムロイ!!おーいムロイ・・」
自分の名前が呼ばれているのを聞いて、テリア内を見渡す“ムロイ”隊員の目前に見覚えのある顔が・・・。
同期の“シラナミ”でした。
整備班に勤務している“シラナミ”と4S隊“ムロイ”は、候補生学校以来の友人でした。
「おっ!久振り〜〜」
「貴様の乗るSJVの整備で仕事する事はあっても、任務外ではなかなか会えないからな」
感慨深げに語る“シラナミ”に“ムロイ”隊員が尋ねます。
「で?何か用かい?貴様が声をかけてくるとは、一大事だからな」
“ナガイ”隊員は、“ムロイ”と“シラナミ”に気を使い、席を移ります。そんな先輩を見て会釈する二人。
“ムロイ”の顔をみながら、小声で“シラナミ”は、伝えるのです。
「ムロイ・・・俺が付き合っている“カナ”を知っているだろう」
「ああ、今度結婚するって伝えてきた彼女のことだろう」
「ところが、最近彼女と連絡が上手くとれないんだ」
訝しげな“ムロイ”隊員。「失踪?」
首を振りながら否定する“シラナミ”。「いや、そうでなく、会いたくないって、彼女が言うんだ。それも突然、最近になって・・・」
「新しい彼氏でもできたのかな?・・・」
“ムロイ”隊員のつぶやきに“シラナミ”が怒り出します。「おい、ムロイ、貴様・・・、彼女に限ってそんな!!」
余りの剣幕に“ムロイ”隊員は謝罪しつつ、彼女の変化について“シラナミ”から続けて話を聞いたのでした。

心配になった“シラナミ”は、彼女を秘密裏に尾行したそうです。
彼女の向う先は、最近巷で有名な“番いの場”と呼ばれるバーだったのです。“シラナミ”は彼女の裏切りを確信し、男が来るのを外で待っていました。
しかし入店するのは、女性かカップルばかり・・・。
不振に感じた“シラナミ”は、バーに入店しようとしますが、ボディガードに入店を断られてしまいます。
「申し訳ありませんが、ここは女性客とカップル様専用となっております、男性一人での入店は、お断りさせて頂きます!」
有無を言わせないボディガードの言葉に、引き下がるしかない“シラナミ”は、彼女が店を出てくるのを外で待ち続けるのです。
そこで、不思議な事に、彼は気づきます。誰一人として店からお客が出てこないのです。
不振に思う彼を残し、店は閉店してしまいます。
諦めきれない彼は、彼女の自宅に行くと、彼女は自宅で寛いでいました。
「カナ?!いつ戻ったんだい??」
彼の言葉に不思議そうに答える“カナ”
「えっ?ずっとここにいたわよ。最近変よ、シラナミさん。仕事が忙しいの??」
こんな事が数回あり、心配した“シラナミ”は、“ムロイ”に相談したのでした。事が公になると、彼女を傷つけるかもしれないと思ったからです。

「わかったよ、シラナミ。4S隊としてではなく、個人的に調べてみるよ」
親友の苦悩に、快く手を貸す約束をする“ムロイ”隊員。“シラナミ“は、事後を託して、整備任務に戻っていくのでした。
「しかし、誰か一緒に捜査しないとな・・・・」
思案している“ムロイ”隊員は、“リョウコ”と“ファ”隊員が近づいてくる姿が目に入ります。
「ファ!」
“ムロイ”隊員の呼びかけにニコリと笑みを溢し、彼の横に着席する“ファ”隊員。
「ファ、俺、君に頼みがあるんだけど・・・」
いつもの調子ではない“ムロイ”隊員の姿に、“リョウコ”隊員もビックリです。
「あんた、そんな風に人に頼み事もできるんだ。へぇ〜〜」
“リョウコ”隊員の言い草に、“ムロイ”隊員は、むっとした表情を一瞬浮かべます。が、すぐに表情を作り直し、“ファ”にバーへのデートを誘うのでした。
「ええ、いいですよムロイさん。でもそこには何があるんですか?そこには遊びに行くのではないのでしょう?」
勘の良い“ファ”は、“ムロイ”が何らかの理由で自分を誘い調査をしようとしていると感じていました。
そんな“ファ”を愛しく思う“ムロイ”隊員だったのです。

その夜、非番を無理に変わってもらった“ファ”と“ムロイ”は、久しぶりに4S隊制服でなく、私服にて夜の街を歩いていました。
目的の“カナ”さんが、自宅を後にするのを確認すると、その後を追います。
彼女が店に入った事を確認後、カップルを装い店内へ。途端、目の前が暗転し、奇妙な部屋にいる事を知ります。他にも何人かの同様なカップルと女性の姿が・・・。
その彼女らを選別するような光が、天井の機械から投射されているのです。その光を避けながら、意識のない地球人を調べる“ムロイ”と“ファ”。
「少なくとも死んでないみたい」
「なぜ、俺たちは・・・・」
“ムロイ”隊員の言葉に“ファ”隊員は、手のひらに小さな機械を載せて、見せるのです。
「これは、簡易LWD・・・どこからこれを?」
「フジ監理官が持っていきなさいって。イデ主任が作られた試作品らしいけど、これが防いでいてくれたみたい」
“ファ”隊員は、今回の調査を“フジ”監理官に相談しており、危険を案じた監理官が、“ファ”に新兵器を持たせたのです。
4S隊に連絡を取り、状況を報告する二人。そして黒幕を暴く為に、奥へと進む二人は、突き当りの部屋に辿り着くのです。

「ここみたいね、ムロイ」 「ああ、いくぞファ!! 1.2.3!」
掛け声と共にドアを蹴破ると、二人は謎の異星人と一緒にいる“カナ”さんを発見します。
「カナさん!!」
異星人は、“カナ”さんを確保しようとした二人に向って迫ります。
「待って!フリフォール、話せば・・・・」
“カナ”の叫び声も届かず、異星人との戦闘に陥るのでした。
“ムロイ”隊員の射撃に手傷を負ったフリフォールは、必死の抵抗をします。そして近くにいた、“ファ”に襲いかかろうとするのです。
その時、異星人と“ファ”の間に現われる、ウルトラマンアルヴィス!
アルヴィスは異星人の攻撃を跳ね返し、異星人にスラッシュショットを浴びせかけようとします。
ところがその異星人をかばう地球人の姿が・・・。
それは“カナ”さんだったのです。
「御願い!彼を許してあげて!ごめんなさい、ごめんなさい・・・・」 泣き崩れる“カナ”さん。
アルヴィス(マミ)は、“ファ”を一瞬見て、同意を得るようにうなずくと消え去るのです。
「カナさん・・・その異星人とは・・・?」
“ファ”の質問にたどたどしく答える“カナ”。

〜〜〜“シラナミ”との婚約が成立し、残り僅かな独身時代を謳歌しようと友人たちと飲みに行った帰りにこのバーに立ち寄ります。 他の地球人と同様に、異星人の機械によって気を失った彼女でしたが、意識を取り戻すとそこにフリフォールの姿があったのです。
彼ら異星人は、共生体が必要な生命体でした。
元来生命力が弱い彼らが、銀河で生きてゆく為に生命力の強い種族に守ってもらう形で生き延びてきたのです。
しかし、その守護主の異星人が、メセドメキアに滅ぼされます。
かれらの元を脱出したフリフォール達は、生命力の満ち溢れる地球人に、共生体となることを望みました。
しかし、共生は双方が了解の下に行なわなければなりません。そのため、協力者をここで探していたのでした。
慈愛に満ちた女性や、愛にあふれているカップルならこの願いを聞き入れてくれると信じて・・・。
しかし、聞き入れてくれたのは“カナ”だけだったのです。
“カナ”は、共生が遅れて瀕死のフリフォールの恋人を受け入れる事を承諾したのです。
しかしフリフォール自身も余命僅かになっていたのでした。〜〜〜

後日、4S隊に事後を託すフリフォールの元に、“シラナミ”と“カナ”が面会に来ます。“ファ”、“ムロイ”の両名も一緒に。
「フリフォール。カナから話は聞いた。君と共に生きよう、俺の体に共生してくれ!」
“シラナミ”は、“カナ”から事情を聞き、自分も共生体として生きようと決心したのでした。
共生体となることで引け目を感じている“カナ”の気持ちも汲んだのです。
フリフォールは、彼の申し出を受け、共生するのでした。

「なあ、ファ・・・」
「なに?ムロイ」
「彼らが共生する事で、地球人に何か効果があるのかな?例えば超能力が使えるとか、長生きできるとか・・・・」
“ムロイ”隊員は心配した口調で“ファ”に質問します。
「科学局によると何にも無いみたいよ。単に共生しているだけらしいわ」
「そうなんだ・・・」
残念そうな“ムロイ”隊員に“ファ”は悪戯っぽく答えるのです。
「ムロイも私と共生してみる?」
笑いながら“ムロイ”隊員の許を去っていく“ファ”の姿がそこにありました。
【第22話/完】




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