第23話

音速巨獣スフリンガー
登 場




地球防衛軍の士官候補生を訓練する施設“ジオ・デストロック”。
ここは、地球防衛軍の精鋭たちが集まり、特殊な訓練を経て、その技量を向上させるところです。
特に防衛軍のTOP・GUNを目指すパイロット達には憧れの場所であり、入学を許されることが誉れでもありました。
基地ゲートを潜り、車から降りてきたのは、4S隊隊員“ナガイ・シゲル”。彼は、この学校の第一期生であり、TOP・GUNフライヤーの称号を持つ、優秀なパイロットです。その技量は、現在までに数多く4S隊の窮地を救ってきたのでした。
今回彼は、一時的に4S隊を離れ、後輩の育成のために派遣されてきた実地教官として、やってきたのでした。

「ナガイ、待っていたぞ!」
訓練隊の整備班長は、“ナガイ”隊員の旧友です。
「お久しぶりです」 笑顔で答える“ナガイ”に班長は伝えるのです。
「貴様も驚くぞ、“オジカ”の弟が来ている。」
驚く“ナガイ”隊員。・・・“オジカ・シンジ”の弟・・・。

“オジカ・シンジ”は、“ナガイ”隊員と同期生で、大親友でした。しかし、5年前の訓練飛行中の事故で、彼は墜落し、殉職したのです。

事故の原因は、突発性の竜巻現象に巻き込まれた、として処理されましたが、“シンジ”の弟“リュウジ”は、それを信用していませんでした。 何らかの諍いがあって、“ナガイ”が、兄を殺したと思っていたのです。
その“オジカ・リュウジ”が、防衛軍の戦闘機訓練学校にいたのです。
「私は、貴方を認めない!」
“オジカ”の“ナガイ”に対する敵愾心は、他の隊員から見ても強烈なものでした。
しかし、“ナガイ”隊員は、思っていました。 「いずれ、分かる時が来る、きっと来る」と・・・・。

ある日の午後、戦闘機部隊を率いて訓練に勤しむ“ナガイ”隊員と訓練生たち。
その中に当然、“オジカ”も参加していました。
「これよりBFMの最終訓練に移る。これが最終的な卒業試験になる。訓練機は1番機の私を追尾撃墜せよ」
“ナガイ”隊員は機体を捻ると、訓練機に向って飛行してゆきます。
「I want attack to be・・・、print・・・GO!」
“ナガイ”隊員は急上昇をかけ、警戒飛行をしている訓練機を下方から模擬攻撃します。
「be advised・・・No3、No,4 missed!」
鮮やかな攻撃で、2機を撃墜したと認定される“ナガイ”機。そこに突っ込んでくる機体の姿が・・・“オジカ”機でした。驚異的マニューバで、“ナガイ”機の後方を追尾する“オジカ”機。
その時突然、山中から何かが躍り出てきてきます。怪獣スフリンガーが、出現したのでした。
スフリンガーは、音速にいたる飛行能力を持つ、地球型巨獣生命体です。以前防衛軍は、これを撃ちもらしていました。
「訓練中止!訓練中止!you are free to return to base!!」
“ナガイ”教官の指示が飛びますが、動揺した訓練機は、次々とスフリンガーに撃墜されてゆくのです。
「くそう!!」
“オジカ”機は、ミサイルの封印をとき、スフリンガーに照準をあわせるのです。飛び出すミサイル。
しかしスフリンガーは、高速スパイラル飛行に移り、そのミサイルを弾き飛ばしてしまうのでした。
「戻れ、オジカ!」
「何故ですか?皆、あいつにやられました。貴方は又逃げるんですか?」
しかし基地司令や“ナガイ”の説得で、武装等の貧弱な訓練機でスフリンガーを止めることが出来ない事を理解した“オジカ”は、不承不承ながら基地へ戻るのでした。

基地に戻ると彼は、“ナガイ”隊員に詰め寄るのです。
「貴方は、また見捨てたのですか?兄のように・・・」
しかし“オジカ”の話を待たずに、鉄拳が“オジカ”の顔に炸裂するのでした。
「オジカ、いい機会だ・・・」
殴りあう二人を格納庫から見ていた整備班長は、そのまま二人を残して、扉を閉めるのでした。

暫くして、班長が格納庫に戻ると、息も絶え絶えの“オジカ”だけが取り残されていました。
「なんだい、飛行だけでなく、喧嘩もナガイの勝ちか?」
見下ろして呟く班長に、“オジカ”は尋ねるのです。
「ナガイさんは、泣きながら自分を殴っていました。そして最期に黙って行ってしまいました」 「班長! ナガイさんと兄の事故のこと、真相を教えてください。御願いします」
真剣な眼差しの“オジカ”を見据え、班長は真実を語るのです。

あの5年前の訓練中にも、スフリンガーが突然飛行隊に襲い掛かったのでした。
武装も満足でない訓練機でしたが、血気盛んな“ナガイ”と“オジカ・シンジ”は、攻撃を仕掛けます。
しかし、今回と同じ様に高速スパイラル飛行でその攻撃を弾き飛ばしたスフリンガーは、“オジカ”機、“ナガイ”機を巻き込み墜落させたのでした。
不時着した両機。しかし着陸した場所が悪く、“オジカ”は、重傷を負い、病院で息を引き取る事になったのでした。
その際“オジカ”は、“ナガイ”にスフリンガーの弱点を伝えるのです。高速スパイラルの後方、渦の中心を抜ける事ができれば、奴の体に直撃させることができると・・・。
訓練機による怪獣の阻止と言う命令違反は、“オジカ”の死と言う結果を生み出しました。
しかし防衛軍もスフリンガーを取り逃がしてしまいます。怪獣の取り逃がしは、防衛軍の面対に関わる問題でした。為に今回の一件は、事故として処理されたのでした。
「一番辛かったのは、ナガイ・・・あいつだよ。親友を失い、家族から憎まれ、真相を言えず、4S隊任官までは、仇を討つチャンスもなかったんだからな」

4S隊基地、SJV格納庫で、一人SJVに乗り込もうとする“ナガイ”隊員。
その彼に声をかける“マミ”隊員。そしてその後から4S隊隊員のみんなと、“オジカ”の姿が・・・。
「話は聞いた。一人で行くのは職務違反だ」
“モリオ”隊長の強い口調でも“ナガイ”隊員の決意は鈍りそうにありません。
「しかし、4S隊全員で行動するなら・・・な」
隊長の真意を得た“ナガイ”隊員は、自分の作戦を打ち明けるのでした。
SJVでの高速スパイラル飛行でスフリンガーと同調して、飛行器官にミサイルをぶち込む。SJV2機での作戦でしたが、“ナガイ”隊員は、1号機での単独操縦を固持するのでした。
「ナガイ隊員、御願いです、私を一緒に連れて行ってください。兄の仇を討たせてください!」
「お前・・・知っているのか・・・」
頷く“オジカ”に、同乗を許す“ナガイ”隊員。2番機は囮と補佐の為に“マミ”と“ファ”が搭乗し、残りは基地でサポートする事で、作戦は開始されたのでした。

スフリンガーの現われた地点で、旋回飛行を繰り返す4S隊。
すると即座に、スフリンガーが出現したのです。奴は高速飛行音に反応して襲い掛かっていたのでした。
攻撃に入るSJV。しかしレーザーでは、スフリンガーの体表装甲を撃ちぬけません。
ミサイル攻撃に切り替える4S隊。それを察知して高速スパイラル飛行に移行するスフリンガー。
「いまだ!いくぞ!」
同じ様にスパイラル飛行でスフリンガーを追尾するSJV1番機。
「シゲルさん、体がね・ねじ切れそうです・・・」 苦しい息の中から振り絞るように訴える“オジカ”に、“ナガイ”隊員は答えます。
「お前の兄さんは、この程度のGで泣き言を言わなかったぞ!兄貴を超えるのではなかったのか?!」
スフリンガーの回転についてゆくために、SJVの機体を高速回転させ続ける“ナガイ”隊員。
「く・くそう!!負けるもんか!」SJVの回転速度を限界まで上げる“オジカ”。
その回転速度が、スフリンガーの回転数と同調した時、弱点が、照準機に捉えられたのです。
「い・いまだ・・オジカ、撃て!」
“ナガイ”隊員の言葉にミサイルのスイッチを押す“オジカ”。狙いは違わず、弱点の器官に命中するミサイル。爆発する器官。
スフリンガーは、その衝撃で地上に叩きつけられます。
機体の回転を止めて、通常の旋回飛行に移るSJV。
“オジカ”は失神しており、“ナガイ”隊員は、彼を横目で見ながら、満足そうな表情をみせています。

しかしスフリンガーは、死んでいませんでした。
頭部から熱戦をSJVに向けて連射するスフリンガー。一瞬の隙に回避行動が遅れる“ナガイ”のSJV。
「ちぃ!!しまった!」
しかし熱戦は、SJVに辿り着く前に弾き飛ばされます。ウルトラマンアルヴィスが、熱戦に向かって放ったスペクトラムラッシュが、彼らを救ったのでした。
スフリンガーと相対するアルヴィス。
しかし回転飛行のできないスフリンガーにアルヴィスの攻撃を防ぐ事はできず、ギガカッターで粉砕されるのでした。

防衛軍医務局の病室。
“ナガイ”と“オジカ”は、同じ部屋の両隣で並んで寝かされていました。あまりの強Gに、身体機能が低下した為に、一時的に検査入院を命令されたからです。
「あの程度のGで、入院とは・・・なさけない・・・」ベッド上で、不覚を嘆く“ナガイ”。
「ええ、先輩、もう年なんですから引退しても良いですよ〜。あとは僕に任せてください♪」同じベッド上で固定、安静状態の“オジカ”がそれを揶揄します。
「バカ野郎、あの程度のGが耐えられなくて気絶する奴に任せられるか!」
「なんですって!!」
ベッド上での言葉と枕の応酬で大論争している二人の所に、回診にきた婦長が居合わせます。
「ナガイさん、オジカさん、点滴のお時間・・・」
正にその時、その枕が婦長の顔に・・・・。
其の後二人がどうなったかは・・・皆さんの御想像にお任せしましょう。
【第23話/完】




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