第25話

宇宙鳥人フリス星人
牙獣 バルバロニス
登 場




サブリナス地球統合本部に宇宙連合代表部より緊急連絡が入ります。内容は、以下の通りでした。
「惑星フリスで、伝染病の大流行が確認されました。メセドメキアの牙獣により病原菌の噴霧が行なわれたものと推測されます」
「病原菌は未知のウィルスで、手がつけられません」
送られてきた病原菌を検査する防衛軍医務局。
その内容は、驚くべきものでした。
検出された細菌は、Chlamydiapsittaci、別名psittacosis(オウム病)だったのです。
菌そのものの毒性と感染力は、地球で確認されているクラミジア菌と比較できないほど強化されていましたが、その根幹部の遺伝子情報はオウム病のそれと同一でした。鳥類型種族のフリス星人に対する攻撃としては、正に的を射たものだったのです。
防衛軍は、100万人規模の薬剤を医療チームと同時に派遣することを決定します。
しかし準備に数週間かかるため、急ぎ、臨牀診断方法とテトラサイクリン系薬を強化したものをサンプル薬として、惑星フリスへ届ける事にしたのでした。
当然、この任務は4S隊に命令されます。
「諸君、これは急を要する任務です。地球人には感染しにくい病気ですが、フリスの人々には致命傷の病気です」
「彼らを救わなければなりません。メセドメキアは、この地球から、その病原菌を培養したと考えられるからです」
地球を利用して他生命体に攻撃を仕掛けるメセドメキアに、憤慨する4S隊員達。
「地球の生命体が、他の惑星を滅ぼす要因になっては、絶対にいけません」 「皆さんの奮闘を期待します!」
監理官の訓示の後、作戦の詳細が隊長より指示されます。
SJVによる輸送は、行程の危険性も鑑み、同じ医療設備が2機に分配されて運搬します。2機は別ルートで向かい、敵を攪乱するつもりだったのです。
基地を発進する2機のSJVは、惑星フリスに旅立つのでした。
到達限界時間は76時間。その時間を越えると、病原菌は爆発的毒性を発生し、地球から送られる薬剤でも人々を助ける事は不可能になるのでした。

地球を旅立ち、惑星フリスへと進路をとる4S隊。
太陽系重力圏を離脱した後に、別ルートで目的地に向う予定でした。
ところが、目標地点に牙獣の姿が現われたのです。地球に潜入させている協力者からの連絡で事情を知ったメセドメキアは、阻止の為にバルバロニスを派遣したのでした。
バルバロニスは、SJV阻止の為に攻撃を開始します。
“モリオ”隊長の1番機は、バルバロニスを引き付け、囮に徹します。
「いけ!我々は、こいつを撒いてから、そちらに追いつく!」
“タヌマ”副隊長は、自分を囮にして2番機を目的地に送るという“モリオ”隊長の作戦の真意をさとり、機体を反対方向に向けるのです。
「副隊長!1番機は?1番機の援護を・・・」
牙獣に追われる1番機をモニターしている“マミ”隊員からの叫び声に、悔しそうに語る“タヌマ”副隊長。
「我々の任務を思い出せ。時間の遅れは、フリスの人々を死滅させかねないのだぞ!」
回避運動を取りながら、囮として牙獣をおびきよせる1号機。
2番機は、そんな1号機の無事を祈りながら、空間転位するのでした。

無事空間転位し、通常空間に戻るSJV2号機。
「転位完了、次期転位まで充填時間3時間」
「1号機・・・無事であれば良いが・・・」
2号機隊員たちの心配をよそに、1号機からの連絡は途絶えたままでした。そこに現われるバルバロニスの影。
「牙獣が来ます!!」 “ファ”隊員の指摘で、レーダー画面を見る“タヌマ”、“マミ”両隊員。
「いかん、転位可能まで何処かに・・・・」
逃げ場を探す“タヌマ”副隊長に、“マミ”隊員は小惑星帯へ逃げ込む事を進言します。
SJV2号機は攻撃を避ける為に小惑星帯に向うのでした。
バルバロニスは、SJV2号機を追撃してきます。小惑星帯を舞台にしたチキンレースの始まりでした。
少しの操縦ミスが、機体の破壊と言う危険性の中で、高速飛行を続けるSJV。しかし逃げ切れる事は叶わず、ついには牙獣の攻撃で被弾し窮地に陥ってしまいます。
操縦系統に損傷を受けたSJV2号機は、激しい振動を繰り返し、危険な状態でした。
“タヌマ”副隊長は、損傷部位の修復の為機体後部に出向きます。それを見届けると“マミ”隊員は、アルヴィスに変身して牙獣を迎え撃つのです。
しかしアルヴィスも、バルバロニスの俊敏さに梃子摺り、戦いは一進一退を呈します。特に牙獣の回復力は異常で、アルヴィスの攻撃で損傷した皮膚組織は、数秒で治癒してしまうのでした。
SJV2号機の機関部では、“タヌマ”副隊長が必死で修復作業を行なっていました。
「くそう!時間が無いんだ。こんな所で道草を食っている暇はないんだ!」
バルバロニスの攻撃を受け返すものの、相手を沈黙できないアルヴィスは、牙獣より、惑星フリスへの到着を優先させようとします。
SJV2号機を抱きかかえると、空間転位をおこなうアルヴィス。
その転位の瞬間、アルヴィスの背中に、バルバロニスの攻撃が炸裂するのでした。激動するSJV機内では、“ファ”、“タヌマ”両隊員は、叩きつけられて意識を失ってしまいます。
しかし、アルヴィスとSJVは空間転位できたのでした。

惑星フリス近辺の空間に飛び出すアルヴィスとSJV2号機。
しかしアルヴィスは、バルバロニスとの戦闘でエネルギーを消耗し、剰さえ背中への打撃にその行動力を減じていました。そこに出現するバルバロニス。牙獣は、アルヴィスとSJVに止めを刺す為に急速に接近してきます。
意識を取り戻した“タヌマ”副隊長は、現状を素早く把握し、“ファ”隊員を起こし、指示するのでした。
「ファ、フリスはここから直ぐだ。マミと一緒に脱出艇で、サンプルを届けるんだ!」
「副隊長は?」
“タヌマ”副隊長は、“ファ”隊員に言い聞かすように話します。
「いいか、もう時間がない。このSJVのエンジンではフリスに辿り着くことはできないんだ」
「しかし、君達なら届られるはずだ」 “タヌマ”副隊長は、言葉を続けます。
「ああ、知っていたよ、君達がアルヴィスだって事はね」 「君達は地球人を守ってくれた。私達も銀河の人々を同じ様に守らなくてはいけないんだ」 「だから、その責務を果させて欲しい。マミ隊員によろしくな!」
なんとか“タヌマ“副隊長の決意を覆そうとする“ファ”隊員を、脱出ポットに押し込め、離脱ボタンを作動させます。
「頼んだぞ!ファ」 飛び出してフリスに向うポッドを見送ると、“タヌマ”副隊長は、SJVを起動させるのです。

苦戦するアルヴィス。
バルバロニスが、アルヴィスに取り付こうとした瞬間、SJV2号機が頭部に特攻をかけます。
臨界点まで機関部を作動させていたSJVは、核融合爆発を起こし、バルバロニスに回復不能な傷を負わせるのでした。
バルバロニスの損傷部位に、オリスクビームを打ち込むアルヴィス。バルバロニスは、宇宙空間に散ったのでした。
アルヴィスは、“ファ”からのテレパシーで事情を聞き、ポッドを惑星フリスに送り届けます。

変身を解き、“ファ”隊員に詰め寄る“マミ”隊員。
「どうして?他の手段はなかったの?ファ!答えて!!」
“マミ”隊員の詰問に“ファ”隊員も激情を爆発させます。
「じゃ如何すればよかったの?フリスの人々が死に絶えてもよかった?それとも貴方とアルヴィスを見捨てればよかったの?」
「タヌマ副隊長は、私達がアルヴィスだって知っていたわ」
驚く“マミ”隊員。
「だからこそ、自分を犠牲にする事で、宇宙の未来を私達に託したの。分かってあげて・・・マミ・・・」

惑星フリスは、“タヌマ・オキ”副隊長の犠牲により、救われました。
しかし、この犠牲は4S隊にとって大きな犠牲となったのです。
数日後、サブリナス地球統合軍本部で、タヌマ・オキの葬儀が執り行われました。
遺影を胸に、タヌマの家族がそこにいました。
まだ幼いタヌマの息子は、その死を実感できない為、何度も棺を覗き込んでいます。
「ねぇ、お父さんはいつ起きるの?」
幼子の問いかけに、周りの人々は涙を禁じえませんでした。
「惑星フリスの苦難を、身を挺して救い、宇宙の平和を守った英雄、タヌマ・オキ4S隊 副隊長に敬礼!」
議長の号令とともに、礼砲が青い空に轟くのでした。
【第25話/完】




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