第26話

牙獣 ガモラフ
ウルトラマンジュダ
登 場




4S隊副隊長“タヌマ・オキ”の死という事実は、4S隊員に深い悲しみを与えました。
ある者は無心に任務をこなし、ある者は訓練を続ける等、何かしら体を動かしていないと、その悲しみに押しつぶされそうな状態だったのです。
特に、“タヌマ”副隊長と任務についていた“マミ”と“ファ”隊員は、その精神的ダメージにより極度のストレスを被っていました。
“モリオ”隊長は、“マミ”“ファ”両隊員に、4S隊の任務を離れるように命令します。 このまま4S隊で任務を続ければ、その精神的ストレスから逃れる事ができずに最悪、任務の継続が不可能となることを心配したからでした。
抗弁する二人に“モリオ”隊長はその任を解き、新たな任務を指示します。
その任務は、防衛軍隊員として、災害地の復旧にあたる事でした。
二人は、しぶしぶながらも命令を受諾し、任地へ旅立つのでした。

牙獣による地球攻撃で、各地の都市は大きな被害を受け続けていました。
地球の重要な施設は、その利便性から大都市近辺に作られている事が多く、施設の攻撃は即、都市への被害となる場合が多かったのです。
中でもムルバンガス戦は都市中心部で行なわれた為、その損害は大きいものでした。
建物などの復旧作業は進んでいましたが、今だ行方不明者や災害孤児等の人的被害に対してのサポートは充分なものではありませんでした。
二人が新たに任地として指定された場所、そこは、そんな人々が集まった施設だったのです。

施設では、施設官が彼女らを歓迎し出迎えてくれました。
すぐに施設での任務に入る二人。
人手が慢性的に足りない施設での日常は、4S隊での悲劇を忘れさせるほどの激務を、彼女らに与えたのです。
そんな中、二人は、一人の少女と出会います。
彼女の名前は“ユウコ”
明るく振舞い、施設の子供達や被災者の人々を介助する彼女の姿は、暗い影を落としがちな施設の雰囲気を変えていました。
その献身的な姿に、二人も心を癒されていくのでした。
特に“ファ”隊員は、異星人の自分を受け入れてくれた地球人達(4S隊)への思慕と“ユウコ”が醸し出す優しい雰囲気を重ね合わせてしまいます。
“ファ”隊員と“ユウコ”は、すぐに意気投合し、仕事が終わると一緒に居る事が多くなったのでした。

しかし、ある日、その状況が一変します。

何気ない会話の中で、“ファ”と“マミ”が、特務科学特捜隊隊員である事、そして“ファ”自身が異星人である事を“ユウコ”が知ってしまうのです。
そして彼女らが、ムルバンガスの現場に直接関わっていたことも・・・。
うつむき加減の“ユウコ”が、呟く様に“ファ”に問いかけるのでした。
「なぜ貴方達は、あの場所で戦ったの?なぜ私の両親や兄を巻き添えにしたの?」
驚く“ファ”隊員。
あの現場近くで、“ユウコ”の誕生日を祝った彼女の家族は、4S隊とムルバンガス、アルヴィスと牙獣との戦闘に巻き込まれ亡くなったのでした。
言葉無く“ユウコ”を見つめる“ファ”隊員に、彼女は感情をぶつけます。
「私は許さない。私達家族の幸せを奪った人々を。その力を正義として行使してきた者達を」
“ユウコ”は、“ファ”隊員の制止を振り切り、施設を後にします。
一人残された“ファ”に、様子を見に来ていた“マミ”は、そっと肩に手を置くのでした。

「私に力があれば・・・そう!力があればあんな事には・・・」
涙ながらに呟きながら、夜の街を歩く“ユウコ”の前に突然光が集まります。
その光に取り込まれる“ユウコ”
そして光が集約すると、ジュダの姿が現われるのでした。

≪ユウコよ。力が欲しいか?何者にも勝る無限の力が?≫

驚きながらも、その申し出に喜びを隠せない“ユウコ”

「ええ、力が欲しいわ!私達家族の幸せを奪った人達への復讐の為なら悪魔だって良い!お願い、力を!!」

“ユウコ”の願いに“ジュダ”は彼女を共生体として取り込んだのでした。

心の安寧を取り戻しつつあった“ファ”と“マミ”でしたが、“ユウコ”の失踪は、思いもかけない出来事でした。
特に、4S隊以外の地球人と交流し、理解をしてくれたと信じていた“ファ”にとって、“ユウコ”の失踪は悲しむべき事だったのです。
しかし感傷に浸るまもなく、二人は4S隊任務の復帰を言い渡されます。
近くで、異常エネルギーの集束活動が認められたため、4S隊がその調査を行なう事になったのです。
お世話になった施設の人々に別れを告げ、4S隊任務に戻る“ファ”と“マミ”隊員。

現場は施設近くの公園で、そこに二人は光の柱を発見するのです。
光の柱は、二人の前で輝きを増し、牙獣に変貌してゆきます。
牙獣ガモラフは、無防備の都市を粉砕しようとします。
本部に連絡を取り、牙獣の出現を伝えると、“マミ”は地上攻撃で牙獣ガモラフを威嚇し、“ファ”は進路上の住民を避難させようと行動するのでした。
しかし4S隊の援軍が来るまで、牙獣を足止めする事は難しく、避難民の犠牲も避けられない状況になってゆきます。
ついに、施設まで牙獣ガモラフが近づき、そこに残された人々が居る事を知った“マミ”は、アルヴィスに変身します。
アルヴィスは、牙獣ガモラフを押し返そうと組み合いますが、強大なパワーにじりじりと追い込まれてゆきます。
ついには、牙獣ガモラフに力負けしてしまうアルヴィス。
牙獣ガモラフの頭部が光り、破壊光線を乱射、逃げ遅れた人々と施設を破壊しようとした瞬間、新たな影がガモラフを蹴り上げ、光線の射線を変えたのでした。
そこに立つのはジュダ!
しかし次の瞬間、ジュダの体を覆っていた禍々しき黒い鎧が砕け散ったかと思うと、そこに現れたのはまぎれも無くウルトラマンの姿をした巨人。
「あれは?ウルトラマン!?」

人々が動揺する中、ジュダは両手でアルヴィスとガモラフを組み上げると異空間への入り口を空に開け、投げ入れます。
異空間に落とされるアルヴィスと牙獣ガモラフ。その後を追ってジュダも飛び込んでいきます。

ジュダは牙獣ガモラフを呼び戻し、吸収してゆきます。
対峙する二人の超人戦士。

≪ジュダ!これはどういうことだ?≫

アルヴィスの問いかけにジュダは、満足そうに応えます。

≪いいや、私は場所と機会を提供しているに過ぎない。この戦いを望んでいるのは、我々でなく、私の共生体なのだよ≫

ジュダの言葉の意味が図れないアルヴィスに、ジュダは、自分の共生体の姿をアルヴィスに提示するのでした。
光に包まれた地球人・・・其の姿は“ユウコ”。

≪そう、彼女の意思なのだよ。彼女が望んだ事に手を貸したに過ぎない。そう、アルヴィス、君がその共生体が望んだ事を実践したようにな!≫

ジュダの話を聞いて、“マミ”は叫びます。

「うそ!ユウコさんは、そんな事は望まない。ジュダ!貴方が操っているんだわ!」
“マミ”の衝動は、アルヴィスにも波及し、ジュダに格闘を仕掛けるのです。
その攻撃を難なく防ぎながら、ジュダは、“マミ”の心にも侵入してくるのでした。

≪アルヴィスの共生体よ。いや、敬意を払い“マミ”と呼ばしてもらおう。お前はアルヴィスの何だ?アルヴィスの何を知っている?≫

≪やめろ、ジュダ!マミに語りかけるのは!!≫

アルヴィスのジュダへの拒絶感は、共生体の“マミ”に衝撃的に伝わります。
“マミ”は、感じていました。
アルヴィスの不安、恐れという負の感情を。

攻防はジュダの優勢に進み、アルヴィスは、追い込まれてゆくのです。
ついに倒れるアルヴィス。
そのアルヴィスを見下ろすように立ち、意思を伝えるジュダ。

≪もう隠す必要など無いはずだ、アルヴィス。我々がなぜ敵対する事になったか、彼らには知る権利があるはずだ!≫
≪そう、我らがウルトラマンの罪を知るべきだと≫

力なく対峙するアルヴィスのカラータイマーが初めて点滅し始めます。まるで、ジュダの言葉を恐れるように・・・。
一体ジュダは、何を語ろうと言うのか?
超人戦士ウルトラマンの秘密とは?
異空間に閉ざされた世界で、その秘密が開かれようとしていたのです。
【第26話/完】




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