第27話

ウルトラマンジュダ
メセドメキア
ウルトラマンアルウォン
登 場




異空間で二人の超人戦士が対峙していました。
彼らの名前は、ウルトラマンアルヴィスとジュダ。
その彼らの共生体である二人の地球人。
異空間に存在する4つの生命体の中で、今真実の扉が開かれようとしていたのです。

ウルトラマンジュダは、アルヴィスと2人の地球人に語りかけるように意思を伝達してゆきます。

≪我々は、故郷M78星雲の普通の生命体だった。
しかし太陽の寿命でその存在が、失われようとした、死せる運命の生命体であった。
だが、我々はプラズマスパークを完成させ、その窮地を乗り越える事ができた。
そして、プラズマスパークから発せられるディファレーター光は、我々に必要以上の力を与えてしまったのだ。
肉体的な進化と精神的な進化が伴わない事は、地球人も我々も同様だった。
ある者はその力を自分の快楽の為に使い、ある者は他者を従わせる為にその力を使った。
M78星雲は、力ある者、ウルトラマンが支配する世界に作り変えられていったのだ≫

≪しかし、それを良しとしない人々もいた。彼らは、悪しき心を持つ者達と戦い、ついには勝利した≫
ジュダに向けてアルヴィスが反論します。

≪ああ、確かに勝った。しかし彼らはその戦いの後で何をした?
悪しき者達との戦いで勝利した事が、さらに我々の意識を増長させただけではなかったのか?
M78星雲のみならず、周辺銀河の生命体への介入行為は、それを物語っていないのか?≫

ジュダは、アルヴィスを見つめます。

≪すでに、我々の時間でも昔の事。故に真実は分からぬ。
最初は、善意だったのかもしれない。
未開の生命体を我々が、成長させ、宇宙の調和を求めてゆく。
“ウルトラマンが宇宙の調和を導く”・・・
なんと素晴しい響きであろう≫

アルヴィスと共にジュダの意識が流れ込んでいる“マミ”には、ウルトラの戦士達の姿が次々と映し出されていました。
宇宙に旅立つ多くの戦士たち。
しかし到達した惑星の多くが、死滅してゆく姿が映し出されたのでした。
「ああ・・・なんて事なの・・・」
思わずその悲劇的な光景に声を漏らしてしまう“マミ”。
それを聞いたジュダは、話を続けます。

≪それが、なんと無謀で愚かな行いであったのかは、今見た事で明らかであろう。
我々の驕りが、他の生命体を滅ぼして行く事に気づかぬとは・・・。
望まれない進化の関与は、その生命体の生存さえ奪ってしまう。
それに気づくのは、もう暫くしてからだった。
失われた生命体は多く、すでに取り返しの聞かない状況に陥っているにも係わらずだ!
しかし、度が過ぎた馬鹿者どもは、自己の責任に気づく事がなく、剰さえ失敗の理由を我々の負の意識のせいにしたのだ。
負の意識を取り去れば、完全なウルトラマンが完成し、宇宙に調和が取り戻せると。
これがメセドメキア計画の始まりだった・・・≫

「ウルトラマンが作り出した?メセドメキアを・・・・」
“マミ”は、混乱していました。
地球と銀河を守っているウルトラマンが、銀河最強の敵メセドメキアを作り出した・・・。
“マミ”の心の中では、アルヴィスを信じる心と裏切られた思いが、ぶつかっていたのです。
その混乱を見越したようにジュダは、“マミ”と“ユウコ”に語り続けます。

≪ウルトラマン、超人戦士達の負の意識を直接抽出し、閉じ込め封印する。
計画は、簡単だった。
だが、一番安易な道を選んだ代償は大きかった。
確かに、負の意識を排除したウルトラマン達は、見かけ純粋な愛と慈愛に満ちた存在となりえた。
しかし、拮抗する精神がない生命体は、ロボットと同じだった。
何者にも慈愛を与える存在・・・言葉は素晴しいが、現実は酷いものだった。
自分の生命さえも与えてしまう、愚劣な存在に成り下がったのだ。
計画したウルトラの戦士達は、恐怖した。
このままでは、ウルトラの戦士自身が他の生命体に呑み込まれてしまうと≫

≪こっけいな事だよ。
力ある者として銀河を征してきたウルトラマンが、力なき者と称した弱い生命体に滅ぼされようとしたのだから。
だが、少し気づくのが遅かった。
メセドメキアは、ウルトラマン達の負の意識を取り込む事により、それ自体が自我を持つようになってしまったのだ。
奴は戦士達を飲み込み、悪意の根源として活動を始めてしまった。
戦う意志の欠如したウルトラマン達に、メセドメキアを防ぐ手立てはなかった≫

≪しかし、それを食い止めようとしたウルトラの戦士達がいた≫
アルヴィスは、ジュダに反論します。
が、それをあざ笑うかのように、ジュダは話し続けます。

≪笑わせるなアルヴィス。
貴様の仲間達がとった、最大の愚劣さを私は許さない。
メセドメキアを滅ぼす為に立ち上がった、我が父であり、最強の戦士アルウォンとその仲間達を見捨てた事を≫

宇宙空間でメセドメキアと対決するアルウォンと仲間達。
しかし戦いは、アルウォンと仲間達の敗北で終わります。
戦意という負の意識を取り込まれていたウルトラの戦士達は、メセドメキアに抗う事ができずに呑み込まれていく姿が、“マミ”の意識に流れ込んできます。
そして、一瞬ですが、アルヴィスの意識に悲しみを感じた“マミ”でした。
丁度アルウォンが飲み込まれて行く場面で・・・。

≪アルウォン達は、我々の制止を振り切り、無謀な戦いに身をおいたのだ。
必ず敗れる戦いだった・・・。
我々は、もう一つの方法を試そうと・・・≫

アルヴィスの後悔とも取れる意識が、“マミ”に流れてきます。

≪なぜ助けてくれなかったの?兄さん・・・≫

ジュダの口から思わぬ言葉が、アルヴィスに向けられるのを信じられぬ思いで、聞く“マミ”。

≪マミ≫
ジュダは、“マミ”に直接語りかけてきます。

≪君達のような生命体は、未来へ向って進化の過程にある。
その過程の中で、生命体には自己防御としての戦う意識が存在している。
我々ウルトラの戦士達が、メセドメキアと戦う為に足りないのは、それだったのだ。
生命体と共生するのは、戦うと言う意識を取り込む為に行なう行為なのだよ。
兄さん・・・いや袂を分かってしまっている今、アルヴィスと呼ばせてもらおう。
アルヴィスも、マミ、君に戦う心を補完してもらっているだけなのさ。
これが、君達を助ける理由なのさ!≫

宇宙の脅威メセドメキアは、ウルトラの戦士達が、自分達の慢心故に作り出した怪物でした。
そのメセドメキアを破壊する為に、失われた戦う意識を他の生命体と共生する事で得ているウルトラの戦士達。
力ある者、無い者、それは単なる慢心が生み出した虚像だったのです。

話し終えたジュダに“ユウコ”は、苦笑しながら話しかけます。
「慢心故の迷惑行為・・・何処かの誰かと一緒ね。
ジュダ、私もその慢心さ故に、家族を殺されたわ。それを許す事はできないの」

≪同じ目的を持った者同士という事かな?≫

ジュダの言葉に頷く“ユウコ”
「いけない!ユウコさん。ジュダに取り込まれては・・・・」
“マミ”は“ユウコ”を思い止まらせようと声をかけるのですが、その思いは伝わりません。
「私は、私の家族と幸せを奪った人々を許さない。
その為にジュダに私の戦う心を補完してあげるの。
それが、私の復讐を遂げる近道だから」
ジュダの意識に溶け込もうとする“ユウコ”だったが、“マミ”に、もう一度振り返ります。
「それと、もう一人のファさんにも宜しく伝えてちょうだい。何れお伺いすると・・・」
話し終え“マミ”を見つめる“ユウコ”の瞳は、復讐の業火に包まれているような輝きを見せていたのでした。

ジュダはアルヴィスと“マミ”に秘密を話し終えると、異空間を解除してゆきます。
消え去ろうとするジュダの姿と共に“マミ”に届く言葉。

≪地球人マミよ。君が守ろうとしたものは、本当に必要なものだったのか?
必要な犠牲であったのか?
良く考えることだ≫

異空間から放り出されたアルヴィスは、“マミ”を地上に戻した後、何も伝えずに姿を消してしまいます。
ウルトラマンの真実に呆然と立ち尽くす“マミ”。
その姿は、打ちひしがれた戦士そのものだったのです・・・。
【第27話/完】




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