第28話

ウルトラマンジュダ
牙獣 ガモラフ
メセドメキア
登 場




暗闇の世界でアルヴィスとジュダが、相対しています。
双方に攻撃を繰り返す、二人の超人戦士。
“マミ”もアルヴィスと共に奮戦しますが、“ユウコ”とジュダとの力の差は大きく、追い詰められてゆきます。

≪何を守ろうと言うの?その為に関係のない人々が苦しんでも良いの?≫

脳裏に響く“ユウコ”の声に惑わされる“マミ”
ついには、ジュダの必殺技シュスペールが、アルヴィスに向けて放たれます。
“ユウコ”の嘲りの声と共に・・・

≪死になさい、アルヴィス。そしてマミ。貴方達を許さない・・・・>>>>>>>


4S基地司令部で、当直任務中に仮眠を取っていた“マミ”は、椅子から飛び起きます。
その様子に驚いた“ファ”は、“マミ”に声をかけます。
「どうしたの?マミ」
“ファ”の声で現実に引き戻される“マミ”。その姿は、憔悴していたのでした。
「マミ、貴方、この間の戦いから様子が変よ。一体何があったの?」
心配そうに見つめる“ファ”から目を逸らす“マミ”。
「マミ。良く聞いて。此処には、私たちしかいない。何があったか話してちょうだい。アルヴィスの共生者は、貴方だけではないのよ!」
真剣な“ファ”の態度に“マミ”は、先の戦いを彼女に伝えます。
アルヴィスとジュダ、ウルトラの戦士、メセドメキア、そして・・・“ユウコさん”の事。
黙って“マミ”の話を聞く“ファ”。
「マミ・・・そう・・ユウコは、救えなかったのね」
救えなかった友に思いを馳せる“ファ”の目に涙が溢れます。
その思いは、タヌマ副隊長を失った時と同じだったのです。
その“ユウコ”を追いやった原因は自分達であり、アルヴィスであるという事実に“マミ”は、失意を隠せません。
「ねぇ、ファ」
「私達って、一体なんなんだろう・・・」
“マミ”の問いかけに、“ファ”は、彼女を見返します。
「ウルトラの戦士の共生体、戦士の心の補完者、でも本当は、なんなの?」
「怖い・・・怖いわ・・ファ。こんな気持ち初めて・・・」
“マミ”のアルヴィスへの絶対の信頼が揺らぎ始めていたのです。
そんな“マミ”をそっと抱きしめる“ファ”が、そこにいました。

突然、司令室内に鳴り響く警報音。
「緊急警報、防衛軍司令部発令!直ちに4S隊に出撃を要請するものなり。アジア地区に牙獣出現する。緊急警報・・・」
眠りを覚まされたサブリナス地球統合本部。
4S隊専用ハンガーから飛び出すSJV1号機と2号機。
一気に電磁カタパルトで打ち出された2機のSJVは、牙獣が出現したアジア都市に向います。

牙獣の正体は、ガモラフでした。
地上を、その業火で焼き尽くさんばかりに、熱線を吐き続ける牙獣ガモラフ。
4S隊はSJVによる空中攻撃を敢行します。
しかしガモラフは、その攻撃をものともせずに、地上を蹂躙して行くのです。
SJV2号機を操縦していた“ムロイ”隊員は、SJVの最新兵器“分子分解砲”で、ガモラフを掃射する為、接近戦を挑むのです。
だが、この行為は余りにも無謀でした。
分子分解砲の射程は100m余り、ガモラフと相対するには余りにも近すぎたのです。
驚異的な速度でガモラフはSJVに接敵すると一気になぎ払います。
直撃を受け、地上へと墜落してゆくSJV2号機。
機内は負傷気絶した“ムロイ”隊員に代わって、“ファ”が操縦桿を握っていました。
「マミ!この機体はもうダメ!!アルヴィスに」
“ファ”の言葉に反応するも、変身に躊躇する“マミ”。
「私・・私・・・」
震えて俯く“マミ”の姿に、意を決した“ファ”がイヤリングを輝かせるのでした。
「マミ!ムロイを頼んだわよ」
アルヴィスに変身した“ファ”は、SJVを抱え込み、地上へと無事に着陸させます。
その後方からガモラフが体当たりを食わせます。
吹飛ばされるアルヴィス。
勝ち誇るようにアルヴィスの前に立ちはだかるガモラフ。
その後方に、金色の輝く光体が出現すると、その姿は戦士ジュダの姿に変るのでした。

≪ジュダ!≫ 「ユウコさん!」
アルヴィスと“ファ”の意識が交叉します。

「あら?マミさんじゃなく、ファさん? ジュダ・・・残念ね、貴方が倒したい、真のアルヴィスではないみたい」

≪ユウコよ、君に任せる、好きに戦うが良い≫

ジュダはガモラフを自己に吸収すると、アルヴィスと相対します。

「ユウコさん、私は貴方に・・・」
“ファ”は“ユウコ”に自分の贖罪の気持ちを伝えようとするのですが、“ユウコ”は、きっぱりと言い放つのでした。
「私の苦しみは誰の為?悲しみは誰の為?燃えさかる心の業火は、誰の為に生まれたの?」
“ユウコ”の叫びと共にアルヴィスを強打してゆく、ジュダ。
“ファ”と“ユウコ”の戦闘意欲の違いは、二人のウルトラマンの力の違いとして表れていました。
追い込まれるアルヴィスと“ファ”。
「私は、ジュダと共に全てを葬るつもりです。私も最期は、その業火で滅びるでしょう」
「そう、誰もそれを止められはしない・・・」
ジュダの手掌から放たれるカウンターブロス光線。
狙い違わず、アルヴィスに直撃したブロス光線にアルヴィスは抵抗できず、“ファ”との共生変身が解けてしまうのでした。

消えゆくアルヴィスを見入るジュダ。
ジュダもその姿を見届けると姿を消すのでした。
あとに残るのは、不時着したSJV2号機と、重傷の“ファ”と“ムロイ”隊員。
そして、二人を呆然と見つめる“マミ”隊員。
彼女達を4S隊が発見救助したのは、それから数時間経過した後の事でした。

救助された3人は、統合本部の病院へ直ちに搬送、手当てを受けました。
しかし、“ファ”は、意識が戻らず、ICUでの治療が続けられていたのです。
“マミ”隊員も精神的外傷を負っていました。
彼女の心は、“ファ”の負傷の原因を自分の為だと思った事で、閉ざされようとしていました。
「私が・・私があの時、変身できていれば、ファもこんな傷を負う事も無かった」
「アルヴィスを信じられない私の弱さが、彼女を、ムロイ隊員を、危険な目に合わせてしまった・・・・」

病室に見舞いに来た“フジ”監理官は、“マミ”の姿を見ると彼女の心が崩壊しつつある事を見抜きます。
担当Dr.の協力の下、病室で“マミ”と二人きりになる“フジ”監理官。
完全防音で、監視装置もOFFの状態の病室を用意させます。
“マミ”の秘密を守る為に“フジ”監理官が用意させたのでした。
“マミ”に寄り添うと“フジ”監理官は、意識を集中させてアルヴィスを呼びます。
「ウルトラマン、宇宙の戦士よ。今彼女は、永遠に心の闇に呑み込まれようとしています」
「彼女は、貴方と共に戦ってきた戦士なのです。その彼女をこのまま闇に沈めてしまっても良いのですか?」
“フジ”監理官の叫びは、アルヴィスに届きました。

≪地球人よ、我も彼女が、愛しい。しかし彼女の心が、我を阻んでいるのだ≫

≪彼女自身が、我を受入れねば、我は力を失う・・・≫

「ウルトラの戦士よ。私は前にも戦士と共に戦った事があります。その時、共生体の青年とウルトラマンは、強い絆で結ばれていました」
「最初の彼とウルトラマンの出会いは、最悪な状況だったそうです。しかし戦士は、真摯な心で彼を救いました」
「貴方とこの娘の関係も、そうでは無かったのですか?」
「ウルトラの戦士よ!貴方しか彼女を救う事はできません。どうぞ彼女の心を救ってあげてください」
“フジ”監理官の願いは、アルヴィスに受入れられました。

≪地球人よ。マミの心に、今一度通じ合わせよう。その時に、彼女が如何するかを見守る事にしたいと思う≫

≪彼女が望むなら・・・≫

アルヴィスは、そう言葉をかけると二人にウルトラの過去をみせるのでした。
今まさに暗黒に閉ざされようとするアルヴィスの故郷M78
しかし奇跡が起きます。
M78の太陽の代わりに、惑星自身が光り輝き始めたのです。

≪あれが、始まりの光であった。最初は希望の光、そして慢心の光へと変化していく・・・光・・・≫

M78の人々の姿が次々とウルトラの戦士に変化してゆきます。
驚き、画像を見つめる“フジ”監理官。傍の“マミ”も画像を見つめていますが、その表情に変化は感じられません。
M78の戦士達の戦いが映し出されます。

≪その慢心が生んだ悪行を諌める為に戦士同士が、戦う事になった≫

≪戦いは、是正しようとした戦士達の勝利に終わった。これで何もかも元通りになると、誰もが信じていた≫

≪しかし、彼らも形は違うが、慢心していたのだ≫

メセドメキアを生み出す機械を調整中のウルトラの戦士達。
そこに取り込まれる戦士たちの心。

≪心を失った戦士達は、長老(指導的立場のウルトラの戦士達)の奴隷、いやロボットでしかなかった≫

≪無用の混乱を防ぐ為と言いながら、思い通りに動かせるウルトラの戦士を、彼らは欲しかっただけだった≫

事実を知ったウルトラの戦士達が集まり、抗議に向おうとしています。

≪私も反対派の一人で、ジュダと共に長老への抗議を行なうつもりだった≫

≪長老達の中には、我らの父もいたので、平和的に話せると信じていた≫

≪しかしメセドメキアは、自己意識を持ち始めており、長老達もメセドメキアに支配されてしまっていたのだ≫

メセドメキアと戦闘になるウルトラの戦士達。
牙獣を含めたメセドメキアは、取り込んだ戦士を兵士に仕立て、ウルトラの戦士を粉砕してゆくのでした。

≪戦いの中、ジュダと逸れた私は、生き残りの戦士達と共にM78を離れ、メセドメキアへ抵抗組織を作り出した≫

≪しかし、すでに戦士達の戦う心は、メセドメキアによって取り込まれてしまっていた≫

≪心が無い戦士は戦いには勝てない。しかし我々は、宇宙にメセドメキアを放ってしまった事を償わなければならなかった≫

≪為に、メセドメキアに襲撃されそうな生命体の居る惑星系で、その住民となる生命体に力を借りる事にしたのだ≫

≪勝手な言い分かもしれない。我々の慢心さが生み出した宇宙の悲劇に、君達を巻き込んだことは、許して欲しい≫

≪我が弟、ジュダもすでにメセドメキアに取り込まれてしまった≫

≪これからの戦いで、メセドメキアを倒す為には、弟も倒さなければならないだろう≫

≪決してこの戦いは負けてはならない戦いなのだ。生命に関与する事は、何者であろうと許されない≫

≪これからも決して犠牲は少なくないだろう。そして、直接戦いに関与しない人々を巻き込んでいくだろう≫

≪しかしその責任は、彼女らには無い。すべての責任は、我々ウルトラの戦士にあるのだ≫

≪戦いが終われば、我々は全ての生命に贖罪しよう。それで許されるとは思わないが・・・・≫

アルヴィスは、ウルトラの星の秘密とメセドメキアを生み出した罪について語り終えたのでした。

長い夢のような映像を見せられていた“フジ”監理官と“マミ”の二人。
「ウルトラマン・・・贖罪の戦士達・・・」
“フジ”監理官の呟きに反応するように“マミ”が続けます。
「いえ、罪は私達にもあります。私達も知らぬ間に慢心していたのです。そして罪を犯し、ユウコさんの家族と幸せを奪ったのです」
「そしてその罪から逃げようとして、ファを傷つけました」
“マミ”の目に光が戻っていました。
「私は、アルヴィスと共にその罪を背負って生きるつもりです。それが、私を救ってくれた彼に対する、最大の恩返しになるのですから」
“フジ”監理官は、自我を取り戻した“マミ”に微笑みかけます。
「貴方達だけではないわ。私達も同じ罪を背負っているの」
「貴方達を、決して一人にして見捨てはしない。罪を隠し、それから逃げるような心の闇こそ、恥ずべきものである事を忘れないで」
「アルヴィス、彼女らを頼みます」
“フジ”監理官の呼びかけにうなずき返し、姿を消すアルヴィス。
と同時に、監理官の通信機が鳴ります。
「監理官。ファの意識が戻りました。病室にお越し下さい」
モリオ隊長の報告に、二人は、喜びを隠せませんでした。

心の闇は、その罪から逃れようとする時、生まれます。
罪を見つめ、その過ちを正そうとする心を失えば、生きる意味を失ってしまうのです。
アルヴィスと“マミ”、そして“ファ”の戦いは、これからも続きます。
彼女らの心が、強さを失わない限り。
【第28話/完】




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