数多の戦いに尽力してきた4S隊も、“タヌマ”副隊長の殉職、“ファ”、“ムロイ”隊員の負傷などが続き、戦力の低下が問題視されました。 地球防衛の要である4S隊の問題は、早急に解決する必要があったのです。 しかし、防衛軍のTOPチームである4S隊に入隊できる能力の有る人物は少なく、その人選には苦労が続いていました。 そんな中、防衛軍人事部から4S隊に、人員補充の連絡があります。 その噂はすぐに広まり、すでに4S隊内でも、誰が来るのか、その話題に持ちきりでした。 次の日、司令室の扉が開き、隊長と監理官と同行してくる人物の姿が、隊員達の目に入ります。 「オジカ?!」 “ナガイ”隊員の驚きの表情に、にやりと笑みをこぼす“オジカ”隊員。 「ええ、先輩!約束通り来ましたよ!」 「今度4S隊の補充隊員として選抜されたオジカ隊員です。えっと・・ナガイ隊員は、知っているようですね」 “フジ”監理官に続いて、“モリオ”隊長が、“オジカ”隊員と他の隊員を引き合わせてゆきます。 「現状、君を含めて4S隊は5人だが、暫くすればファ、ムロイの二人も戻ってくるだろう」 「其れまでは、なんとか皆で尽力してほしい!」 敬礼をする4S隊員達。 「ところでオジカ隊員の教務担当だが、マミ隊員にお願いしたいと思う」 思わず隊長の顔を見入る“マミ”隊員。 “オジカ”隊員も、女性隊員が教務と聞いて表情が曇ります。 「ああ、本来ナガイに任せるつもりだったが、副隊長と兼任ではな、ちと体がもたん」 「リョウコ君も、ナガイ、ムロイ両隊員の業務の引継ぎに忙しくてな、で 手が空いているのは君しかいない。よろしく頼む」 隊長からの命令で、“オジカ”隊員の教務担当となった“マミ”隊員。 不承不承“マミ”と握手する“オジカ”隊員の姿に、前途多難を予想する彼女だったのです。 4S隊専用兵器の運用習得訓練に参加する“オジカ”隊員。 元来パイロット要員の彼には、なんの問題もない訓練でした。 しかし機体の運用方法で4S隊の隊員達とぶつかる事が多い彼は、チーム内で浮いた存在になっていたのです。 個人技量で秀でている彼は、“ナガイ”隊員以外の4S隊員とそりが合わなかったのです。 特に、彼は“マミ”隊員が、気に入りませんでした。 女伊達らに4S隊員で活動する彼女を、一方的な偏見で異端視していたのです。 ある時、“マミ”と“オジカ”隊員は、新型艇DCクルーザーの運用訓練を実施していました。 DCクルーザーは、宇宙連合から寄贈された重力制御装置(GS)を使い、製造された、海地中専用艇でした。 そのテスト運行で“オジカ”は、“マミ”を脅かそうと画策します。 その姿を嘲笑しようとしたのでした。 管制塔の指示を無視して、炉の出力を臨界点まで引き上げ、GSを最強稼動させる“オジカ”隊員。 その効果で、一気にDCクルーザーは大気圏外へと高度を上げてゆきます。 その速度は驚異的で、艇内Gは8Gにもなろうとしていました。 「あ・・・あん・た!なにしてんの?!!」 押しつぶされる荷重の中から振り絞るように声を出し、“オジカ”を制しようとする“マミ”隊員。 「先輩?ど・・うです?苦・・しかったら・・やめまし・・ょうか?」 “オジカ”の意図を悟った“マミ”隊員は、最後まで付き合うことを決意します。 「あ・んたこそ・・やせ我慢は、や・め・・た・・ほうが良いわよ!」 加速によるGの我慢比べは、DCが大気圏外に飛び出すまで続きましたが、どちらも耐え抜いたのです。 「あんたやるねぇ、感心した!」 停止したDC艇内で、“マミ”が意識を失わなかった事に感嘆する“オジカ”隊員。 その言葉を聞いた途端、“マミ”が素早く反応しました。 “オジカ”の顔面に彼女のパンチが炸裂したのです。 衝撃で気を失う“オジカ”隊員。 「いい?運命の天秤に命を賭けるのは、こんな時ではないの。軽々しく行動しないで!」 そう言い切ると、DCを基地へ帰還させる“マミ”隊員でした。 DCクルーザーの運用で、隊長から叱責される二人。 そんな時、防衛軍の早期警戒システムが、牙獣の侵入を通報してきたのです。 防衛軍の迎撃部隊を突破した牙獣フルトンは、地球に到達すると、地面を掘り返し地中に潜みます。 迎撃で受けた傷の回復を地中で行うつもりだったのです。 攻撃の手が及びにくい地中での活動は、牙獣有利に働き、各地の防衛軍は、次々撃破されてしまうのでした。 牙獣の進路を予測した防衛軍は、4S隊にDCクルーザーの発進を要請します。 敵の目標は、科学特捜隊日本支部! 現在は、科学警察機構の一支部として運用継続している基地ですが、科学局の最大施設として防衛軍の要を担っていたのです。 SJVの光牽引でDCクルーザーを運搬し、目的地に向かう4S隊。 「いいか、作戦を伝える!DCで牙獣を地上に追い込め。奴は地球人が地中を進める兵器を持っていることを知らない。そこを撃つ!」 DCクルーザーは、“マミ”、“オジカ”両隊員を乗せて潜行を開始します。 「いよいよ対決か!わくわくするぜ!」 軽口を叩く“オジカ”隊員に顔を顰める“マミ”隊員。 そんな艇内の雰囲気に関係なく、DCクルーザーは地中に潜行し牙獣を探します。 DCの地中レーダーに牙獣の反応を見つけると、“オジカ”隊員は、猪突猛進に攻撃を開始するのでした。 地中ミサイルで牙獣を追い込むDC。 しかし牙獣フルトンは、自身を高熱源体に変化させ、DCを焼き尽くそうと反撃するのです。 「くそう、振り切れない!!」 「オジカ君!DCをこの地点に誘導して!」 地中レーダーを指差す“マミ”隊員。 “マミ”隊員が誘導した場所、そこは湖を指し示していました。 自身が高熱に発熱し、地中を掘り進む牙獣フルトン。 そいつがDCを追いかけ湖に飛び込めば、その熱が牙獣に重大な傷を負わせることができる・・・。 “マミ”隊員の作戦を理解した“オジカ”隊員は、DCを湖に向かわせます。 「いい、オジカ君!奴が湖に飛び込むと同時に、水蒸気爆発が発生するわ!その時の衝撃波でDCが破壊されるかも!」 「あんたこそ、良い度胸だぜ!」 「命を懸ける・・・死の天秤がどちらに傾くか、あんたについてゆくぜ!」 今“オジカ”隊員は、“マミ”隊員が、自分が考えていたほど弱い存在でなく、一人の戦士として自分と対等な存在である事を認識したのです。 そしてその“マミ”がいる4S隊の優秀性を信じることができた瞬間でした。 遁走を図るDCを追いかける牙獣フルトン。 その魔手がDCを捕らえようとする瞬間、DCは湖に飛び出します。 飛び出した穴に湖水が流れ込んだ瞬間、牙獣フルトンの高熱と反応し、爆発が起こります。 衝撃波は、DCとフルトンを吹き飛ばし、湖に大きな水柱を作ったのでした。 「オジカ君! オジカ君!」 衝撃で気絶した“オジカ”隊員を介抱する“マミ”隊員。 その時、彼女の目に、爆発にも拘らず存在している牙獣フルトンの姿が映ります。 「やはり不十分ね。アルヴィス、お願い!」 彼女は艇外へ飛び出すと、アルヴィスに変身し、フルトンと対決するのでした。 手傷を負ったフルトンは、自慢の高熱攻撃ができず、アルヴィスに抗うことは無理でした。 アルヴィゥム光線で、爆砕されるフルトン。 地球に侵入した牙獣は、ここに潰えたのでした。 「先輩!」 “オジカ”隊員の声に振り返る“ナガイ”副隊長を尻目に、彼は“マミ”隊員の元に駆け寄ります。 「先輩、見直しました!これからも宜しくお願いします!!」 驚く“マミ”隊員の背後から“リョウコ”隊員が茶化します。 「あら、マミ、良かったわね。貴方の小雀ちゃん、やっと懐いたみたいね」 「小雀?」 「懐いた??」 その言葉に反応する“マミ”と“オジカ”の姿に、4S隊員の笑い声が響くのでした。 【第29話/完】 |