M78星雲に浮かぶウルトラの星。 嘗て宇宙に君臨する正義の星も、メセドメキアに犯され、邪推の星として、他の星系から恐れられる存在でした。 その闇の奥底で、メセドメキアと対峙する超人戦士の姿がありました。 ≪ジュダよ、大転換装置の準備は進んでいるのか?≫ メセドメキアの問いかけに、ジュダは答えます。 ≪メキアよ。すでに準備は整った。あとは発動させるのみ≫ ウルトラの星で破棄されていた大転換炉は、ウルトラ族が生み出した超兵器でした。 全ての物質を取り込み、対消滅させて得るエネルギーは、強大なパワーを得ることができるのです。 メセドメキアは、膨大なエネルギーの消費が必要でした。 その為に大転換炉を稼動させて、その問題の解決をしようとしていたのです。 しかし、最大の力を得る為に必要な重要なキーポイントが、それには欠けていました。 ≪ふふふ・・・、まあ良い。それは向うで得ることにしよう。あちらには豊富な・・・があるしな≫ ≪しかし、これがまだ存在していたとは・・・我が一族・・・恐るべし・・・≫ ジュダは、急ぎ作戦の準備を進めるのでした。 数日後、宇宙連合から緊急の連絡が、サブリナスの防衛軍本部にありました。 地球規模の惑星がM78から銀河星系、太陽系に移動している事が観測されたのです。 一斉に科学局の天文局が、その星の観測体勢に移行します。 結果、報告された事実は驚愕なものだったのです。 地球型惑星が、驚異的な速度で、太陽系に侵攻してきている事。 その軌道が一直線のため、なんらかの人為的な要素が考えられる事。 連合の探査機が全て破壊されてしまった事。 これらを主軸に、総合的に判断した結果、防衛軍は以下の結論に達したのでした。 “M78の惑星移動は、メセドメキア主導に行われる惑星規模の起動爆雷攻撃である!”と。 対メセドメキア戦闘の主軸である太陽系軍の壊滅は、宇宙連合にとっても痛手となる為、次々と援助の連絡があります。 医薬品、食料、そして究極には宇宙連合最大の宇宙戦艦“アルガドバン”級までが、地球圏に到着したのでした。 人類のパニックを防ぐために、住民の地下施設や宇宙基地、他星系への避難等を順次行って予定でしたが、90億もの人類が全て避難できるかは、誰にも分かりませんでした。 為に徐々に人々に恐怖が生まれ、各地で暴動が頻発するようになっていたのです。 4S隊も各地で避難民の誘導、連絡等、救助任務についていました。 「マミ、ちょっと良い?」 振り返ると“ファ”が、怖い顔をして立ちすくんでいたのです。 「どうかしたの?」 怪訝な顔で聞き返す“マミ”に“ファ”は、驚くことを伝えます。 「私、さっき任務中に、・・見かけたの・・・・」 「えっ?」 「ユウコさんを見かけたの!」 あの“ユウコ”が地球に居る!!とすれば“ジュダ”も地球に居るのだと!!“マミ”は直感します。 「どこで見かけたのファ!、彼女はジュダの共生体よ。今回の事件にも必ず関係があるはず!」 「ええ・・向うの人ごみの中で、ちらっと。海岸のほうに向かったみたい」 「行きましょうファ!ユウコさんに会いに!」 任務を離れ、“ユウコ”を捜し求める二人。 その目の前に突然現れる“ユウコ”の姿に、足が止まる二人。 「やはり来たわね。ね?!ジュダ。私の言ったとおりでしょ」 笑みをこぼし、ジュダの幻影に語りかける“ユウコ”の姿は、畏怖すべき存在に見えました。 「ユウコ・・・さん・・・」 「此処じゃあなた方が、困るから、向うの人気のないところへ行きましょう」 海岸線に到着すると、二人と対峙する“ユウコ”。 「ユウコさん、貴女は一体此処で何を?」 「お久しぶりね、マミさんにファ・・・さん」 “マミ”の問いかけには答えず、“ファ”を見入る“ユウコ”の目に何らかの感情が見えたのは、錯覚だったのか? 「あの星は何?何をしようと画策しているの?教えなさい、ユウコさん!」 強い口調で諭す“マミ”に“ユウコ”が答えます。 「ああ、あれね。今からもっと面白いことが起きるから、楽しんで頂戴!」 言い放った“ユウコ”は、両手を高く挙げると右手のカラータイマーを翳します。 光り輝くタイマーが、その光を空に飛ばした瞬間、地球の空に青白く光り輝く惑星が、肉眼でも確認できるようになったのです。 「あれは・・・」 「そう、ウルトラの星、ジュダの故郷・・・おっとアルヴィスもね」 「かの星は、すでに火星軌道まで一気にやってきました。メセドの技術は、本当に素晴らしいわね」 誇らしげに語る“ユウコ”に、詰め寄る“マミ” 「あの星を、地球にぶつけるつもりなのね!そうはさせないわ!」 “マミ”がイヤリングに触れ、アルヴィスを呼び出そうとした時、すばやく“ユウコ”が彼女の手を打ち、イヤリングを地面に落とさせます。 「くぅ!!」 落ちたイヤリングを拾う“マミ”。 「慌てないで!そんなに死に急ぎたいの?ショーは始まったばかりなのよ」 天に輝く星が、いっそうの輝きを増した瞬間、黒い影が星を離れ、徐々に姿が大きくなってゆくのが判ります。 「一体なにをしたと言うの?」 「連絡を取ってみたら如何?防衛軍基地にでもね・・・」 笑い、誘う“ユウコ”に言われるまでも無く、通信機で本部と連絡を取る“マミ”と“ファ” 「何処に居る?二人とも。大変だ、惑星から分離した小惑星が、地球への衝突コースを取っている。数分で達する程の速度だ。基地へ戻れ!」 レシーバーの隊長の声に、信じられない表情の二人。 地球防衛軍では、謎の惑星が太陽系内に空間転位した瞬間より、防衛体制をレベル2に移行し、様子を伺っていました。 しかし突然、惑星から大質量物質(小惑星)が打ち出されるのを見て、地球規模での避難勧告を連絡し、レベル1へ移行しLWDを発動させます。 地球を包み込むLWDの光。 間一髪、小惑星はLWDで阻止され軌道を逸れて行ったのでした。 ほっとした人類の様子とは裏腹に、空から次々訪れる悪意の槍は、地球に向かっていました。 「また来るぞ!逃げろ!」 人類の避難は、まだ続いていました。そして徐々に恐怖が、地球を包み込み始めていたのです。 LWDに阻止される攻撃に、安心する“マミ”と“ファ” そんな姿を見て“ユウコ”は、笑みを浮かべます。 「流石はLWDね。此処から見ていると上空で花火が上がっているみたいに見えるわ」 「そう・・・人類の終焉をお祝いする為にね」 「LWDが存在する限り、貴方達の攻撃は、効をなさないわ!あきらめなさい!!」 “マミ”の言葉を嘲笑するかのように笑い続ける“ユウコ” 「おばかさんね。それなら最初に、ジュダとなってLWD基地を粉砕すればよい事。これからよ、これから・・・」 「もう止めて!ユウコ!」 “ファ”は“ユウコ”の前に飛び出し、涙ながらに訴えます。 「もう止めて。私は貴女に大きな犠牲を強いました、そして其れを話す機会を得られませんでした。その事が貴女を・・・」 「ファ・・・もう私は、あの頃の私ではありません。家族を失い、信じていた友に裏切られた私の心は、あの時死んだのです!」 「すでに私は、ジュダの戦士として生きています。もう後戻りはできません・・・」 “ファ”は、ユウコの決意を聞き、項垂れます。 二人の前に進み出る“マミ”。 その片手は、“ファ”を庇う様に差し出されています。 「ファ、もうユウコさんは、貴方の知っているユウコさんじゃありません」 「地球を、いえ太陽系を滅ぼす使者でしかないわ!」 驚く“ファ”は、“マミ”を見返します。 「ユウコさん、私は貴方の所業を理解するつもりはありません。そして私の弁護もするつもりはありません」 「何が正しくて、何が間違っていたか。それは私にも分かりません」 「でも全ての罪と共に生きる決意があります。そしてその罪故に、苦しむ人々を救う義務もあるのです」 “マミ”の決意、“ユウコ”の決心は、どちらも揺ぎ無い意思の力に支えられていました。 そう!二人のウルトラの戦士の意思の力が、彼女らを支えていたからです。 「これからよ。貴方達、為政者が本当に苦難を知るのは!」 再度タイマーを翳す“ユウコ” それに反応するかのように、ウルトラの星が地球に近づいてきます。 「LWDが如何に無力か、教えてあげるわ!」 ![]() 星の重力同士が、重なり合い宇宙空間で軋みをあげます。 その反動は、地球、ウルトラの星双方に大きな影響を与え始めていました。 LWDも地球自身の胎動を制御しえません。 地殻変動が各地で活発化し、地上での被害が広がっていったのです。 雨と風が吹きすさぶ、サブリナス諸島。 そこで対峙する3人の戦士。 地球規模の異変は、一刻の猶予もなくなっていたのでした・・・。 【第31話/完】 |