第31話

メセドメキア
ウルトラマンジュダ
登 場




M78星雲に浮かぶウルトラの星。
嘗て宇宙に君臨する正義の星も、メセドメキアに犯され、邪推の星として、他の星系から恐れられる存在でした。
その闇の奥底で、メセドメキアと対峙する超人戦士の姿がありました。

≪ジュダよ、大転換装置の準備は進んでいるのか?≫

メセドメキアの問いかけに、ジュダは答えます。

≪メキアよ。すでに準備は整った。あとは発動させるのみ≫

ウルトラの星で破棄されていた大転換炉は、ウルトラ族が生み出した超兵器でした。
全ての物質を取り込み、対消滅させて得るエネルギーは、強大なパワーを得ることができるのです。
メセドメキアは、膨大なエネルギーの消費が必要でした。
その為に大転換炉を稼動させて、その問題の解決をしようとしていたのです。
しかし、最大の力を得る為に必要な重要なキーポイントが、それには欠けていました。

≪ふふふ・・・、まあ良い。それは向うで得ることにしよう。あちらには豊富な・・・があるしな≫

≪しかし、これがまだ存在していたとは・・・我が一族・・・恐るべし・・・≫

ジュダは、急ぎ作戦の準備を進めるのでした。


数日後、宇宙連合から緊急の連絡が、サブリナスの防衛軍本部にありました。
地球規模の惑星がM78から銀河星系、太陽系に移動している事が観測されたのです。
一斉に科学局の天文局が、その星の観測体勢に移行します。
結果、報告された事実は驚愕なものだったのです。
地球型惑星が、驚異的な速度で、太陽系に侵攻してきている事。
その軌道が一直線のため、なんらかの人為的な要素が考えられる事。
連合の探査機が全て破壊されてしまった事。
これらを主軸に、総合的に判断した結果、防衛軍は以下の結論に達したのでした。
“M78の惑星移動は、メセドメキア主導に行われる惑星規模の起動爆雷攻撃である!”と。

対メセドメキア戦闘の主軸である太陽系軍の壊滅は、宇宙連合にとっても痛手となる為、次々と援助の連絡があります。
医薬品、食料、そして究極には宇宙連合最大の宇宙戦艦“アルガドバン”級までが、地球圏に到着したのでした。
人類のパニックを防ぐために、住民の地下施設や宇宙基地、他星系への避難等を順次行って予定でしたが、90億もの人類が全て避難できるかは、誰にも分かりませんでした。
為に徐々に人々に恐怖が生まれ、各地で暴動が頻発するようになっていたのです。

4S隊も各地で避難民の誘導、連絡等、救助任務についていました。
「マミ、ちょっと良い?」
振り返ると“ファ”が、怖い顔をして立ちすくんでいたのです。
「どうかしたの?」
怪訝な顔で聞き返す“マミ”に“ファ”は、驚くことを伝えます。
「私、さっき任務中に、・・見かけたの・・・・」
「えっ?」
「ユウコさんを見かけたの!」
あの“ユウコ”が地球に居る!!とすれば“ジュダ”も地球に居るのだと!!“マミ”は直感します。
「どこで見かけたのファ!、彼女はジュダの共生体よ。今回の事件にも必ず関係があるはず!」
「ええ・・向うの人ごみの中で、ちらっと。海岸のほうに向かったみたい」
「行きましょうファ!ユウコさんに会いに!」

任務を離れ、“ユウコ”を捜し求める二人。
その目の前に突然現れる“ユウコ”の姿に、足が止まる二人。
「やはり来たわね。ね?!ジュダ。私の言ったとおりでしょ」
笑みをこぼし、ジュダの幻影に語りかける“ユウコ”の姿は、畏怖すべき存在に見えました。
「ユウコ・・・さん・・・」
「此処じゃあなた方が、困るから、向うの人気のないところへ行きましょう」

海岸線に到着すると、二人と対峙する“ユウコ”。
「ユウコさん、貴女は一体此処で何を?」
「お久しぶりね、マミさんにファ・・・さん」
“マミ”の問いかけには答えず、“ファ”を見入る“ユウコ”の目に何らかの感情が見えたのは、錯覚だったのか?
「あの星は何?何をしようと画策しているの?教えなさい、ユウコさん!」
強い口調で諭す“マミ”に“ユウコ”が答えます。
「ああ、あれね。今からもっと面白いことが起きるから、楽しんで頂戴!」
言い放った“ユウコ”は、両手を高く挙げると右手のカラータイマーを翳します。
光り輝くタイマーが、その光を空に飛ばした瞬間、地球の空に青白く光り輝く惑星が、肉眼でも確認できるようになったのです。
「あれは・・・」
「そう、ウルトラの星、ジュダの故郷・・・おっとアルヴィスもね」
「かの星は、すでに火星軌道まで一気にやってきました。メセドの技術は、本当に素晴らしいわね」
誇らしげに語る“ユウコ”に、詰め寄る“マミ”
「あの星を、地球にぶつけるつもりなのね!そうはさせないわ!」
“マミ”がイヤリングに触れ、アルヴィスを呼び出そうとした時、すばやく“ユウコ”が彼女の手を打ち、イヤリングを地面に落とさせます。
「くぅ!!」
落ちたイヤリングを拾う“マミ”。
「慌てないで!そんなに死に急ぎたいの?ショーは始まったばかりなのよ」
天に輝く星が、いっそうの輝きを増した瞬間、黒い影が星を離れ、徐々に姿が大きくなってゆくのが判ります。
「一体なにをしたと言うの?」
「連絡を取ってみたら如何?防衛軍基地にでもね・・・」
笑い、誘う“ユウコ”に言われるまでも無く、通信機で本部と連絡を取る“マミ”と“ファ”
「何処に居る?二人とも。大変だ、惑星から分離した小惑星が、地球への衝突コースを取っている。数分で達する程の速度だ。基地へ戻れ!」
レシーバーの隊長の声に、信じられない表情の二人。

地球防衛軍では、謎の惑星が太陽系内に空間転位した瞬間より、防衛体制をレベル2に移行し、様子を伺っていました。
しかし突然、惑星から大質量物質(小惑星)が打ち出されるのを見て、地球規模での避難勧告を連絡し、レベル1へ移行しLWDを発動させます。

地球を包み込むLWDの光。
間一髪、小惑星はLWDで阻止され軌道を逸れて行ったのでした。
ほっとした人類の様子とは裏腹に、空から次々訪れる悪意の槍は、地球に向かっていました。
「また来るぞ!逃げろ!」
人類の避難は、まだ続いていました。そして徐々に恐怖が、地球を包み込み始めていたのです。

LWDに阻止される攻撃に、安心する“マミ”と“ファ”
そんな姿を見て“ユウコ”は、笑みを浮かべます。
「流石はLWDね。此処から見ていると上空で花火が上がっているみたいに見えるわ」
「そう・・・人類の終焉をお祝いする為にね」
「LWDが存在する限り、貴方達の攻撃は、効をなさないわ!あきらめなさい!!」
“マミ”の言葉を嘲笑するかのように笑い続ける“ユウコ”
「おばかさんね。それなら最初に、ジュダとなってLWD基地を粉砕すればよい事。これからよ、これから・・・」
「もう止めて!ユウコ!」
“ファ”は“ユウコ”の前に飛び出し、涙ながらに訴えます。
「もう止めて。私は貴女に大きな犠牲を強いました、そして其れを話す機会を得られませんでした。その事が貴女を・・・」
「ファ・・・もう私は、あの頃の私ではありません。家族を失い、信じていた友に裏切られた私の心は、あの時死んだのです!」
「すでに私は、ジュダの戦士として生きています。もう後戻りはできません・・・」
“ファ”は、ユウコの決意を聞き、項垂れます。
二人の前に進み出る“マミ”。
その片手は、“ファ”を庇う様に差し出されています。
「ファ、もうユウコさんは、貴方の知っているユウコさんじゃありません」
「地球を、いえ太陽系を滅ぼす使者でしかないわ!」
驚く“ファ”は、“マミ”を見返します。
「ユウコさん、私は貴方の所業を理解するつもりはありません。そして私の弁護もするつもりはありません」
「何が正しくて、何が間違っていたか。それは私にも分かりません」
「でも全ての罪と共に生きる決意があります。そしてその罪故に、苦しむ人々を救う義務もあるのです」
“マミ”の決意、“ユウコ”の決心は、どちらも揺ぎ無い意思の力に支えられていました。
そう!二人のウルトラの戦士の意思の力が、彼女らを支えていたからです。

「これからよ。貴方達、為政者が本当に苦難を知るのは!」
再度タイマーを翳す“ユウコ”
それに反応するかのように、ウルトラの星が地球に近づいてきます。
「LWDが如何に無力か、教えてあげるわ!」

星の重力同士が、重なり合い宇宙空間で軋みをあげます。
その反動は、地球、ウルトラの星双方に大きな影響を与え始めていました。
LWDも地球自身の胎動を制御しえません。
地殻変動が各地で活発化し、地上での被害が広がっていったのです。
雨と風が吹きすさぶ、サブリナス諸島。
そこで対峙する3人の戦士。
地球規模の異変は、一刻の猶予もなくなっていたのでした・・・。
【第31話/完】




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