第33話

ウルトラマンジュダ
牙獣 ギャス
登 場




ジュダの地球壊滅作戦は、地球と防衛軍に大きな痛手を与えました。
多くの人々が、地殻変動と異常気象で犠牲となり、防衛の要となるサブリナス統合本部も倒壊し、機能を失いました。
全ての防衛軍は、各地に分散する旧施設に臨時で移管され、4S隊も科学特捜隊日本支部で、再編される事になっていました。 しかし、殆どの装備を失った4S隊は、その特殊性から、一番再編が難しかったのです。

「隊長!どうするんです。SJVも兵器類もすべて灰燼か損傷して使用できません」
「此処には古参のJVが1機あるだけです。これじゃ、戦いになりません!」
“オジカ”隊員の言は、もっともだったが、今の4S隊に解決策はありませんでした。
「現状は、このまま行動するしかない!それともメセドメキアに降伏でもするのか?」
“モリオ”隊長の言葉に、4S隊員達は、全てを受け入れるしかありませんでした。

そして、防衛軍臨時施設の会議室でも、同じ様な不安の元に、今後の対策が練られていました。
「現状、地球軌道上にあの星は居座ったままです。太陽を挟んで反対に存在していますので、直接肉眼で確認はできませんが・・・」
「やつら、このまま作戦が終わっていないと言うことだろうか?」
「再度、攻撃があると言うのか??」
喧々諤々の会議の中、静かに語る参謀が一人。“アラシ”参謀でした。
「奴らが太陽系外に離脱できなかった理由は、他にあると思います」
「当然、なんらかの攻撃は考えられます。しかし単に攻撃するなら、ここに星を移動する必要は無いはずです。何らかの理由があるはずです」
「その理由とは?」
質問される事を予想していた“アラシ”参謀は、自分の作戦を述べるのでした。
「その為に、極秘調査隊をあの星に送り込みたいと思っています!」
何ら有効な対策がない参謀本部は、“アラシ”参謀の提案を受け入れ、4S隊にその任務遂行を命ずるのでした。

「で、我々4S隊に、その調査をしろと・・・」
防衛軍施設の一室では、“アラシ”参謀と“フジ”監理官が話をしていました。
「たのむよ。今纏まって動ける部隊は4S隊しかないんだよ」
「ダイスケ君、でも4S隊は装備も失っているのよ。どうやってあそこまで行くわけ?」
“フジ”監理官の問いかけに、“アラシ”参謀は、胸を張って話すのでした。
「その点は抜かりが無いよ!もう国連から委託されているんだ」
「え?一体なにを?」
「例の戦闘艇を執政官から借りて来ているんだ。ハヤタの奴、快く貸してくれたぞ!」
その言い草に、思わず噴出しそうになる“フジ”監理官。
「負けたわ、ダイスケ君。その作戦、遣らないわけにはいかないわね!」
こうして4S隊は、メセド(メセドメキアの星のコードネーム)に潜入する事になったのでした。

4S隊臨時本部で、謎の惑星突入作戦のレクチャーを受ける隊員達。
その顔には、失った仲間達の仇を討ちたいと、気色ばんでいたのです。
「いいか!これは敵討ちじゃない。あの星に潜入して、メセドメキアの目的を探るのが任務だ」
「情報を持って、生きて帰ってくる、これが一番大事な事だ」
“モリオ”隊長は、“オジカ”を指差し、諭します。
「特にオジカ!勝手な行動は、慎め!」
隊長の指摘に、苦笑いをする“ナガイ”副隊長。“オジカ”隊員は、頭を掻いて誤魔化しています。
「もうこれ以上、失ってはならんのだ・・・誰もな!!」
失った防衛軍の人々や、“タヌマ”副隊長に思いをはせ、気を引き締めるのでした。

4S隊に移管された戦闘艇は、宇宙連合の技術を取り込み、以前とは全く異なった外見になっていました。
そして外見だけでなく、装備も格段の進歩が見られたのです。
「すごい!SJVの50倍以上の推進力が確保されている!」
「居住空間も素晴らしいね。これだけで長期単独作戦が、可能だね」
4S隊員達の感歎の声が止まりません。
「いつまでも浮かれていないで、すぐに飛び立つぞ!慣熟訓練は、目標までの航海中に行う予定だ!」
「では、いくぞ!」
“モリオ”隊長の指示で、4S隊は新型戦闘艇を駆り、目標の惑星へ向かいます。

太陽を挟んで、地球と相対に位置するメキア。
「あれが、アルヴィスの故郷・・・」
呟く心の声が、“ファ”にも届きます。
「そうねマミ。あれが、ウルトラの星、メセドメキアを生み出した元凶」
「当然あそこには・・・」
「ええ、ジュダもユウコさんも居るでしょうね」
“ファ”の口調に“マミ”は心配します。彼女の心が、戦う事への決意が緩むことを・・・。
「ファ・・・」 「大丈夫よマミ。心配しないで・・・」
二人の手は、座席横でしっかりと握られていました、お互いを信じ合うように・・・。

メキアに近づくと同時に、4S隊戦闘艇に、突如として襲い掛かるものがありました。
牙獣ギャスが、メキアに進入する不審者である4S隊を攻撃してきたのです。
急激な反転運動で、ギャスの攻撃を避ける“オジカ”。
「牙獣です!隊長、レーダーに反応はありませんでした、突然現れました!」
何の障害物も無い荒涼とした大地に、“モリオ”隊長も良い作戦が浮かびません。
「くそう、どこにも遮蔽物がない。どこかに・・・」
その時彼らの目前に、透明な柱が乱立する場所が現れるのです。
「隊長!何らかの人工的な建造物を発見!」
「よし!そこに逃げ込め!!」
一直線に構造物へと向かう4S隊戦闘艇。
しかし牙獣ギャスは、それ以上、彼らを追いかけようとはしませんでした。
そう、何かを恐れるように去っていったのです。

「隊長!牙獣が去ってゆきます、何故なんでしょうか?」報告する“リョウコ”隊員も戸惑っています。
「判らん、が、助かった。しかし此処は何なのだ?」
外部モニターに映る情景は、幻想的でしたが、冷たい印象を4S隊員達に感じさせたのです。
聳える光の柱、それらは幾本も無数に存在し、冷たい光を放っていたのです。
「クリスタルシティー・・・」
“マミ”の呟きに“ファ”が、聞き返します。
「マミ、此処が何か知っているの?」
問いかけに、彼女は以前アルヴィスが見せてくれた、ウルトラの星の情景を思い出します。
「ええ、ファ。此処がクリスタルシティー・・・ウルトラマン達の都市・・・」
突然“マミ”は、隊長に進言します。
「此処は、何か重要な施設に違いありません。だからこそ牙獣は、此処には来なかったのだと思います」
「うむ・・確かに!着陸して調査してみよう」

4S隊は、クリスタルシティーの調査に乗り出します。
「なんだか街だったような・・・でもこの透明感・・・不思議な感じ」 「確かに、一種の都市だったのかも」
口々に驚嘆の声を上げる4S隊員達。
「隊長、あれを見てください」
“ナガイ”副隊長が指差す先に、一つだけ光り輝いている柱が、乱立する光柱の中に見えます。
「行きましょう。あれが何か確認しましょう。もしかすると敵の本拠地かと?」
“ムロイ”隊員の進言を受け入れ、歩を進める4S隊。

目前に突然現れる光柱。
下部から光が頂点へ抜けて行く様は、巨大なネオンサインのようであり、光の噴水をイメージさせました。
「うっ・・・あれは!!」
“オジカ”隊員の声に、すべての隊員が、振り向き、彼が指差す先を見つめます。
「ジュダ・・・」
地球を壊滅状態に陥れ、多くの人々を死に追い遣ったメセドメキアの使者“ウルトラマンジュダ”が、その光に包まれていたのでした。
「くそう!!皆の仇だ!!」
思わずSバズーカを発射してしまう“オジカ”隊員。
しかし、攻撃は光柱に弾かれ、ジュダには、何の効果も与えられません。
「止めろオジカ!そんな玩具じゃ役に立たん!」
“ナガイ”副隊長の制止に歯噛みする“オジカ”隊員。
そこに突然響く、女性の笑い声が・・・。
「ふふふふふ・・・そう、賢明な選択ね。4S隊の皆さん、ようこそメセドメキアの星に」
姿を現したのは、ジュダの共生体“ユウコ”。
彼女の姿は、光に包まれ、“ファ”“マミ”以外の隊員には、完全な姿を捉えることができません。
しかし二人には、彼女である事が判りました。
「ユウ・・!」
咄嗟に彼女の名前を呼ぼうとして“ファ”に止められる“マミ”。

≪今は駄目、マミ!彼女との関係を知られると、私達の秘密が、皆に知られてしまうわ!≫

“ファ”の言に思わず声を飲み込む“マミ”。
「初めてお会いするわね・・・皆さん・・・」
“マミ”と“ファ”に目線を交わすと、にこりと微笑む“ユウコ”。
「貴様は何者だ?!、何故此処に居る?」
“モリオ”隊長の言に、苦笑しながら答える“ユウコ”
「あらあら、無断で訪れたのは、貴方達のほう。で、無粋な歓迎を受けたのは、私達」
「そんな貴方達の質問に、答えなくてはいけないかしら?」
余りにも不遜な態度に4S隊員達にも憤怒が湧き上がります。
「貴様も、メセドメキアの仲間だな。くそう!!」
“オジカ”の放ったSSGの弾丸は、“ユウコ”の顔前で、何か壁に阻まれて空中に弾き飛ばされてしまいます。
「なに?!!」
“オジカ”隊員の驚きも束の間、“ユウコ”の指先が“オジカ”隊員を指すと同時に、彼は吹き飛ばされます。
「うゎ!」 「オジカ!」 「オジカ君!」
飛ばされ別の光柱に叩きつけられた“オジカ”隊員を助ける4S隊員たち。
「あらあら、おいたをした子供は、罰を受けなきゃね」
瞬間、雰囲気が変り、口調が鋭くなります。
「殺さなかっただけでも有り難いと思いなさい!」
余りの激変に驚き戸惑う4S隊員たち。
その様子を見て、“ユウコ”の様子が、元に戻ります。
「貴方達の事は、全てを把握しているわ!その目的もね」
「知りたいのは、メセドメキアの秘密、この星の秘密よね」
“ユウコ”の手にディスクが現れ、“モリオ”隊長の手に投げ渡されます。
「そう、それが、貴方達の知りたい、ひ・み・つ・・」
「それを持ち帰って解析できれば、メセドメキアの全てが明らかになるわ。解析できれば・・・ね」
“ユウコ”の意外な申し出に戸惑う4S隊。
「何故、我々にその秘密を明かす?何が目的だ?」
“モリオ”隊長の質問に、“ユウコ”は、笑って答えます。
「貴方達の勇気に免じて。それじゃ駄目かしら?」
「それに、生きてこの星を出られるかは、分からないでしょ?外にはギャスが待ち構えているわ」
「メセドメキアの本拠地に乗り込んできたのは、有史以来貴方達だけ。それだけでも十分そのディスクを持つ資格があるわ」
ディスクを見つめる“モリオ”隊長。このディスクが、彼女の言うとおりの物なら、これで任務は達成される。
が、しかし信用できるのか?何か罠ではないのか?“モリオ”隊長は、判断に苦慮します。
「それとも拒否して此処で屍を晒すのが、ご希望かしら?」

メセドメキアの情報を入手するという目的を達した今、ここでの交戦は、地球にとって不利益に他ならないと判断した隊長は、撤収を指示するのでした。
「撤退する。このディスクを地球へ届けるのだ!」
意外な申し出に、4S隊員達から抗議を受ける“モリオ”隊長。
「まだ、この星を調べていません!」 「あんな奴の言うことを信じるのですか?」 「私に仇を討たせてください!」 等。
全員を見渡すと、“モリオ”隊長は、状況を語るのでした。
「皆、聞いてくれ。いまだ我々は、痛手から回復してはいない。残念ながら地球防衛軍でまともに運用できるのは4S隊とこの戦闘艇だけだ」
“オジカ”隊員は、隊長に詰め寄ります。
「隊長!逃げるのですか?我々が力を合わせれば・・・」
「勝てるとでも言いたいのか?!貴様は、あれの力を受けたのではなかったのか?」
諭され言葉を失う、“オジカ”隊員。そんな彼に、“ナガイ”副隊長が、手を肩に当て慰めます。
「メキアの秘密の一部がこのディスクで解析できるだろう。これを持ち帰れば、未来へつながる橋が、架けられるだろう」
「今後も続く、奴らとの戦いの為にも・・・」
“モリオ”隊長は、“ユウコ”に振り返ると、言い放ちます。
「ディスクは、有難く頂いておく。中身については、貴方を信じよう」
振り返り、帰途に着く“モリオ”隊長は、心の中で呟くのでした。
「このディスクが指し示す未来は、我々か貴様達か、どちらの側に微笑むのだろうか・・・」

4S隊は戦闘艇に引き上げ、クリスタルシティーから飛び立ちます。
それを待っていたように襲い掛かる牙獣ギャス。
各員は、銃座に分座して、ギャスに対応します。
しかし、ギャスの攻撃速度は速く、徐々に被弾して、戦闘艇の機能を喪失してゆきます。
このままでは、撃墜される。
“マミ”は、“ファ”に銃座への対応を頼むと、アルヴィスに変身します。
アルヴィスは、戦闘艇を守りながら、ギャスをけん制します。
ギャスの高速飛行攻撃に惑わされそうになりますが、“ファ”が放った一撃がギャスに致命傷を負わせることに成功します。
アルヴィスのスラッシュに、ギャスは粉砕されたのでした。
無事を喜び合う隊員達。
戦闘艇はメキアを脱出する事に成功したのでした。


飛び去る4S隊戦闘艇を見送る“ユウコ”。
その意識に語りかけるジュダ。

≪良いのか?ユウコ。私の傷ならもう心配はない・・・≫

「ええ、あれで良いの。ディスクを解析してもらう事で、彼らには地獄を味わってもらうわ」

≪そして、その恐怖が、宇宙を席捲する・・・?≫

「だと良いわね。でも上手くいくかは、判らないわ」
「でも上手くいかなくても、連合で内紛が起こるはず・・・」

≪怖い生命体だな、君は≫

ジュダの声を聞いた“ユウコ”は、嬉しそうに答えます。
「私を選んだのは貴方、貴方を受け入れたのは私。当然でしょ。ふふふふふ・・・」

地球に近づく4S隊に地球防衛軍から通信が入ります。
「隊長!参謀本部から入電です。読み上げます」

〈宛 4S隊 任務成功に感謝する。戦闘艇は、科学特捜隊日本支部でなく、地球軌道上で待機せよ〉

訝しげな4S隊員達の前に、地球の裏側から巨大な宇宙船が、現れます。

〈お帰りなさい4S隊。新防衛軍基地サブリナスベースに、ようこそ〉

それは、宇宙連合から贈られた戦艦アルガドバンでした。
新たな基地に驚く4S隊。
戦闘艇は、静かに新基地の発進口に吸い込まれていったのでした。
【第33話/完】




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