第36話

ミコロネ星人ワグトニ
牙獣 ドナカナー
ウルトラマンマキシマ
登 場




「第四離着艦口を開放。ウェーブシャッターを開け」
サブリナス基地のドックより発進体勢に移行しようとする4S隊機。
「4S隊、こちら発進管制塔。SSS号の移動を開始します。カタパルト移乗後、2.5秒で加速、発艦予定over」
管制官からの連絡に、“ムロイ”隊員が返事をします。
「こちら4S隊SSS号。了解しました。移乗後の加速を待ちます」

SSS号とは、国連から貸し出されていた大型戦闘艇を科学警察機構に移譲して、名付けた新コールサインです。
SSS号はカタパルトに移動すると即座に打ち出され、加速されていきます。
「行ってらっしゃい、4S隊。無事の帰還を祈ります」
管制官の心地よい見送りの声とともに、サブリナスベースを離艦するSSS号。
「続いて、アマティ隊機、発進準備に架かります・・・」

太陽系を離れる事150光年先に、宇宙連合の同盟星系“ミコロネ”が、ありました。
人類と似た生態系で、同じ様に進化してきたミコロネも、メセドメキアの侵略を受けてしまったのです。
牙獣と超人戦士の襲来に、惑星は壊滅状態に陥り、ミコロネ人達は地下都市にて細々と生き延び、抵抗を続けていました。
しかし、牙獣の魔の手が地下エネルギー施設を破壊するに至り、連合に救援を願ったのでした。
宇宙連合もミコロネ救出作戦を展開しますが、強力な牙獣に、被害だけが多く発生してしまいます。
連合は、牙獣迎撃に多大な成功率を誇る地球防衛軍に援軍を要請し、防衛軍は、4S隊、アマティ隊の両部隊を現地に向かわせる事にしたのでした。

ミコロネに到着した4S隊は、眼下に広がる破壊の爪あとに声もありません。
地表は高温で焼かれ、海は干上がり、地表では生きているものは認められませんでした。
「ひどい・・・」 “リョウコ”隊員の呟きに、同意の肯きを返す仲間達。
ミコロネに対してメセドメキアは、生存の可能性さえ奪おうとしていたようでした。
「4S隊!前方より襲撃体を確認。牙獣と思われます。アマティ隊は、攻撃を開始します!」
“ユウコ”隊員の連絡で、現実に戻る4S隊。
「我々も攻撃に向かう!」

いち早くアマティ機は、牙獣の迎撃を開始します。
牙獣の攻撃を避けながら、情報を解析し、パターンを読み取ろうとするアマティ隊。
「凄い。神業で攻撃を避けている」
“ムロイ”隊員も、その機動回避能力に驚きを隠せません。
「誰がメインパイロットでしょうか?」
その質問に、“マミ”隊員は思いました。
≪ユウコ隊員に違いないわ。ウルトラの戦士の力を上手く使って操作している・・・≫

「牙獣のデーターを転送します」
“ユウコ”隊員の通信後、SSS号のメインコンピューターに牙獣の攻撃パターンが転送されてきます。
「全く・・・完璧だね。情報管理も素晴らしいね」
“ナガイ”副隊長も舌を巻きますが、“モリオ”隊長の叱咤が、機内に轟きます。
「お前ら!感心するばかりでは、彼らに手柄を横取りされるぞ!」

4S隊は、SSS号で牙獣の攻撃を開始します。
攻撃パターンを読みきっている為に、ミサイルが次々と牙獣に命中してゆきます。
連続の被弾に牙獣も怯み、逃げ去ろうとします。
そこにアマティ隊機が重粒子ミサイルを撃ち込み、撃破に成功したのでした。
「任務完了。目標は消滅しました」
感動も無い冷静な“ユウコ”隊員の報告に、思わず“オジカ”隊員のぼやきが、機内に聞こえるのでした。
「あの冷血女め。くそう!」
牙獣を仕留めた腕前に舌を巻くのを隠すための言と、他の隊員は分かっていました。
手柄を取られた悔しさを感じた“オジカ”隊員は、自分の言を恥ずかしく思ったのか、その後は静かに任務につくのでした。

ミコロネの地下基地から地球軍に連絡が入ります。
牙獣迎撃の成功とお礼を地下基地にて行いたいとの申し出でした。
快く申し出を受ける彼らは、地上に解放された開口部に機体を進めます。
基地にたどり着いた機体は、整備の為に連合の補給部隊と合流したのでした。
4S隊、アマティ隊は、基地司令部へと招かれます。

「ありがとう御座います。基地司令のワグトニです。地球軍の皆さんを歓迎いたします」
ミコロネ人達の歓迎を受け、歓談する4S、アマティ隊。
そんな中、“ユウコ”隊員は、その席を離れ密かに基地内部へ潜入するのでした。
手にした観測装置で、何かを計測するような仕種を繰り返す“ユウコ”隊員。
「何をしているの?ユウコさん」
突然声を掛けてきた“ファ”に振り向き、微笑む“ユウコ”隊員。
「あら?ファ。貴方もかしら?基地の調査をするのは・・・」
彼女の小馬鹿にした言動に、“ファ”は声を荒げてしまうのです。
「冗談でしょう。牙獣救援に応える為に私達はここを訪れたのです。黙って基地を調査する為ではありません」
“ファ”隊員の言い草に、驚くとともに、感心する“ユウコ”隊員。
「貴方って本当に良い人なのね。異星人である事を残念に思うわ。でも地球人の中には、そんな良い人ばかりではないの」
「ここは、新エネルギーの集積炉があるの。そのデーターを入手する為に私達は送り込まれたの」
驚く、“ファ”隊員。
「そうね・・・ただで、直接影響の無い、こんな惑星系を救難する意義は、地球に無いわ」
「でも、宇宙連合も一枚岩では無いの。地球軍に此処での作戦を任せる事で、自分達のメセドメキアへの対抗戦力を残そうとしたの」
「で、牙獣から救ってもらったミコロネは、大助かりって訳」
肩を竦める“ユウコ”隊員。
「でも、その事をミコロネ人達は、知っている・・・?」
“ファ”隊員の問いかけに、“ユウコ”隊員は、悲しそうな顔をします。
「そんな訳ないでしょう。でもそんな風に考える貴方が好きよ」
衝撃を受け、立ち竦む“ファ”隊員を残して、基地奥へと姿を消す“ユウコ”隊員を、彼女は、見送る事しかできなかったのです。
そんな所に現れる“マミ”隊員。
彼女は、姿が消えた“ファ”隊員とアマティ隊を探していたのでした。
「マミ!彼女らは・・・・」
事実を知った二人は、アマティ隊の行動を止めさせるべく、彼女らを追おうとします。
しかし、その時通信機からの連絡があったのです。
「マミ隊員!ファ隊員を探し出したらすぐに戻れ!牙獣が、又現れた!」

ミコロネの基地施設近くに、突如として現れた牙獣に、基地内は大混乱に陥っていました。
開口部を無理やりこじ開け、内部へと侵入してくる牙獣に、4S隊とミコロネの防衛軍は、地上兵器で応戦してなんとか侵入を食い止めようとします。
しかし、牙獣には対抗できず、徐々に内部に押し込まれていきます。
「う〜ん・・・、拙いわねぇ。もう少し時間が無いと、この集積炉の制御装置を外せないわ。ジン、頼めないかしら?」
“ユウコ”隊員の指示に、“ジン”は頷き返すと懐からアイテムを取り出します。
スパークするマキシマム。輝く光体は、“ジン”隊員を包み込み、新たななる超人戦士に変貌してゆきます。
「いってらっしゃい、頼んだわよ。ウルトラマンマキシマ!」

2層の壁をぶち破り、基地内部から突然“マキシマ”が現れ、進入してきた牙獣と対決し始めます。
突然の出来事に、驚く4S隊とミコロネ防衛軍。
「う・ウルトラマン??」 「なに?!」 口々に新しいウルトラマンの出現に叫ぶ隊員達。
しかしミコロネ人達の反応は、違っていました。
「超人戦士・・・、メキアの使者が・・・」
驚き、恐れる彼らは、持ち場を放棄し、逃げ出してしまいます。
牙獣とマキシマの戦いで、基地内部は大損害を被り、支持柱を失った内部は崩壊しつつあったのです。
「いかん。崩れるぞ。SSS号に急げ!」
隊長の指示で、急いで格納庫に向かう4S隊。
だが途中で通路が遮断され、“ファ”と“マミ”隊員が取り残されてしまいます。
「大丈夫か?今、助けに行くぞ!」
“ナガイ”副隊長の心配した掛け声に、二人はお互いを見てうなずき返すのでした。
「こっちは大丈夫です。先にSSS号に向かってください。私達は別ルートで脱出します!」
心配そうな他の4S隊員達に先を急がせると、二人は基地の崩壊を防ぐために、“アルヴィス”への変身を行うのでした。

“アルヴィス”は、牙獣と“マキシマ”との戦いに割って入り、基地外へ追い出そうとします。
しかし、強大な二つの力を“アルヴィス”一人では制御する事はできません。
逆に基地内部に押し込まれてしまいます。
ところが、突然“マキシマ”と牙獣が、基地外へ飛び出してゆくのでした。
追う、ウルトラマン“アルヴィス”。
ミコロネの空中で対峙する牙獣と“マキシマ”だったが、“マキシマ”から放たれた攻撃が牙獣に炸裂し、四散します。
牙獣を吹き飛ばした“マキシマ”は、眼下に“アルヴィス”を見据えると、戦闘態勢をとります。
最初の一撃は、“アルヴィス”に炸裂、吹き飛ばされます。
牙獣と敵対していた為、味方と油断したアルヴィスは、後手に廻ってしまい苦戦するのでした。
一気に窮地に追い込まれる“アルヴィス”。
しかし突然“マキシマ”は、“アルヴィス”に興味を失ったように、虚空に飛び去るのでした。
取り残された“アルヴィス”も変身を解き、“ファ”と“マミ”の姿を取り戻すと、SSS号の格納庫へ向かうのでした。

無事を喜ぶ4S隊の仲間達。
しかし、ミコロネ人達の雰囲気が、最初の出会いと違って、最悪の状況に陥っていました。
牙獣と超人戦士の戦いで、ミコロネの地下都市は、半壊滅。
そして彼らの命の綱とも言うべきエネルギー集積炉が破壊され、かつ重要な中枢回路の消失という事態が起こっていました。
疑惑は、地球人達に向けられていました。
そして、ミコロネ人達は、完全に地球人を敵視していたのです。
彼らが来たから、超人戦士が現れた。
彼らが来たから、牙獣に基地が破壊され、住むべき都市を失った。
彼らが来たから、愛すべき者達を失った。
そして、彼らが我々の生きる糧とも言うべき集積炉を奪った・・・と。
憎しみは、波及し、施設内にいる4S隊に向けられます。
そう、不条理な悲しみを打ち消すために、彼らには憎むべき対象が必要だったのです。
一斉にミコロネの人々が叫びます。
“侵略者は、この星から出てゆけ!”と。

一方、先に地球へ帰途についていたアマティ隊。
「どうだった?ジン。アルヴィス強いでしょう」
時空転移してきた“ジン”に“ユウコ”隊員は、笑顔で話しかけます。
「ユウコ隊員。アルヴィスは強いですね。私が勝てたのは、相手が躊躇したからでしょうね」
「そうね。でも精進してね、ジン。期待しているのだから」
“ユウコ”隊員の言葉に黙って肯く“ジン”隊員。
「これで、宇宙連合と地球人との間に不信感と言う楔を打ち込んだわ。一度歯車が狂えば、徐々に軋みが広がるわ」
「それと、やはりミコロネ人は、適合しないみたいね。素体粒子は、一人だけにしか反応しなかったし・・・」
「ええ、牙獣としてしか再生しませんでした。」
「やはり地球人が、一番、素体因子に合致しやすいみたいね。今後の参考にしなきゃ」

宇宙連合の諸惑星に生まれる、地球に対する不安と疑惑。
それに伴う地球人の反発と不信感。
連合と地球に暗躍する人々の悪意を利用して活動する“ユウコ”と“ジン”。
それを知りながら食い止めることができなかった“ファ”と“マミ”。
宇宙は、徐々にメセドメキアとジュダの影に覆われて行くのでした。
【第36話/完】




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