第39話

牙獣 ヒジラウルス
警備ロボット ユートム
登 場




地球上に突然現れた牙獣の迎撃に出撃する4S隊。
しかし交戦中に“マミ”と“オジカ”隊員の乗ったJVが撃破され、墜落の危機に陥ります。
絶体絶命の中、アルヴィスに窮地を救われる事になった4S隊。
牙獣と対峙するアルヴィスに、墜落機から脱出した“オジカ”隊員が、叫びます。
「アルヴィス!止めてくれ。そいつは・・・そいつはヒジリなんだ!!」


牙獣のエネルギー波を受けて墜落する瞬間、“オジカ”隊員は、はっきりとした意識の進入を感じていました。
「先輩!機首を起こして!機を立て直さないと・・・ん?なんだ??」
「何?オジカ!もっと力を入れて引っ張って!!」
操縦桿を二人で引き上げるその時、操縦パネルが発火、爆発します。
“オジカ”隊員は、その衝撃で気絶し、“マミ”は、アルヴィスに転身し窮地を脱したのでした。
その気絶した“オジカ”隊員の意識に、意識が流入してゆきます。

≪オジカ!聞こえるか?お前だろ。そこにいるのは・・・。見えないが感じるんだ・・・お前の存在を・・・≫

〈どこにいるんだ?死んだんじゃなかったのか?今助けにいくぞ!待ってろ!!〉

暗闇で、“ヒジリ”の声だけが響く中、彼の姿を捜し求める“オジカ”隊員。
一瞬“ヒジリ”隊員の刺青が光り、それを目印に彼を追おうとした“オジカ”隊員。
しかし、彼の姿は闇に消えて行くのでした。

≪オジカ!!助けてくれ〜!!≫

その声で現実に戻り、意識を回復する“オジカ”隊員。
その目前でアルヴィスと牙獣が対峙しています。
ふと牙獣を見ると、その額の部分に“ヒジリ”の刺青の紋章が見えます。
牙獣は、“ヒジリ”隊員と何らかの関係を持っている事を、指し示していました。
そして“オジカ”隊員は、牙獣に“ヒジリ”隊員が、取り込まれているのを察したのでした。
炸裂するアルヴィスの攻撃に“オジカ”隊員は、声高く叫んでいたのでした。


“オジカ”隊員の叫びを聞き、攻撃を戸惑うアルヴィス。
その隙を狙って牙獣は攻撃を再開し、狂ったように周辺施設を破壊しまくります。
“モリオ”隊長以下の4S隊員達にも、彼の声は届いていました。
「オジカ!状況を説明しろ。牙獣がどうしたと言うのだ??」
隊長の言葉に“オジカ”隊員は、牙獣が親友と何らかの関係がある事、CDの件を概略で伝えるのでした。
アルヴィスは、牙獣の攻撃を遮り、オリスクビームで、威嚇します。
そのビームが刺青に命中した瞬間、牙獣は苦しみだし、突然姿を消してしまうのでした。

一先ず、危機は去りました。
しかし、謎は深まるばかりです。
4S隊は、謎の建築現場に向かい、現状と被害状況を確認しようとしますが、防衛軍の警務隊がその行く手を阻みます。
地球防衛軍の特別な施設だから、部外者は遠慮したいとの事でした。
“モリオ”隊長の強い抗議にもかかわらず、彼らの態度は、変りません。
隊長は、監理官の指示を仰ぐ為に、一時SSSの着陸場所に引き上げることにします。
しかし、監理官からの連絡も似たような状況でした。
科学警察機構の厳重な抗議にも関わらず、防衛軍参謀本部は、その存在を否定していたのでした。
何らかの秘密が隠されていると感じた“フジ”監理官は、4S隊に独自の潜入調査を指示します。

「よろしいのですか?監理官」
「ええ、隊長。何らかの作為的悪意を感じます。その施設には、大きな秘密が隠されているようです。ぜひそれを暴き出してください」 「地球と連合との間に問題が、発生する前に、我々で決着させる必要があります」
“フジ”監理官の強い決意の元、潜入作戦は決行されたのでした。

建設途中の為に、進入経路の確保は容易でした。
また、広大な現場に警務隊の警備も手薄な状態だったのです。
“オジカ”隊員の持つCDから、重要な施設と思われるB7エリア(地下7階部分)を重点的に調査することにした4S隊は、分散して潜入したのでした。
「ここが、B7エリア。他の区画と比較すると、かなり工事は進んでいるみたいね」
「ええ、先輩。でもまだ監視装置は未設置みたいですね。反応がありません・・・」
“オジカ”隊員が足を踏み出そうとした瞬間、“マミ”隊員は、彼を制します。
「待って!!そうでもないみたいよ。あれを見て」
“マミ”隊員の指差した方向を見ると、無人巡回警備ロボットが、確認できます。
警務隊の開発した警備ロボットは、対メセドメキア用の重装備を有しており、このような施設での運用は不適切なものでした。
それだけ、この奥の施設は重要な施設だと言えました。
「任せてください、先輩!あいつの弱点、俺知っているんです。」
「え?」
怪訝な顔の“マミ”隊員に言うが早いか、飛び出してゆく“オジカ”隊員。
「以前ヒジリが、教えてくれたんですよ!!」
飛び出した“オジカ”隊員は、警備ロボットのセンサーが自分を捕らえて、火器を使用するコンマ何秒かの間に、弱点とも言うべきICブロックを撃ちぬきます。
「動きの早い目標物に対して、一瞬タイムラグが発生するんですよ。警務隊のプログラムミスらしいですが、奴ら全然気づいてないって・・・あいつ・・・」
親友“ヒジリ”隊員を思い出した“オジカ”隊員を、肩に当てた手で慰める“マミ”隊員。
「さあ、行きましょう。あの奥に何があるのか?何が待っているのか?それを確かめに!」

二人は、最深部の施設ドアの前に立ちます。
開閉ロックは、進入時に倒した警務隊員のIDカードが使用できました。
ドアを開放し、突入した二人の目の前に現れたのは、何らかの研究施設です。
内部に人影はありませんでしたが、乱立した内部には、用途の不明な機器が多くあります。
「なんの設備なのでしょう?雰囲気的には、手術室みたいに見えるのですが・・・」
“オジカ”隊員の呟きに耳を貸しながら調査を続ける“マミ”隊員の目前に、驚くべきものが現れたのです。
等身大のカプセルの中身は、半壊した人体と牙獣の形成物が鎮座していたのです。
「なに?!これは・・・」
顔を近づける“マミ”隊員。
するとその異物は、突然目を開き、“マミ”隊員に思念を送り込んできたのです。

≪苦しい・・・体が熱い・・・殺してくれ・・・≫

それは、以前人だったものの意識でした。
「なんなの?これは人なの?一体此処でなにがあったの??」
驚く“マミ”隊員。その奥で、物音がすると白衣を着た人物が、機器を盾に隠れていたのを発見しました。
自称、ここの研究員と称する謎の男は、二人の詰問にあうと、一気に詳細を話し始めたのです。
「ええ、此処は防衛軍、特に警務隊管轄の研究施設です。私はここで研究助手をしていました」
「一体、ここでなにを研究していたの?」
「よくは知りません。しかし人間の発展を図る実験だと教授は言っていました」
「なんだ!人間の発展とは?!」
怒りに震える“オジカ”隊員の態度に恐怖した研究員は、震えながら答えます。
「私には分かりません。ただ、私は研究を・・・」

突然の銃声が、研究員を貫き、彼を即死させると、その奥に新たな人物が立っているのが、二人に確認できました。
「よくもまあペラペラと・・・お喋りは、死期を早めましたね。おっと!動かないで下さい、お二人さん」
後方から強い光で照らされている為に、その人物の顔は、見て取れません。
しかし、その威圧感は、強く二人に感じられていました。
「貴様は一体何者だ!」
“オジカ”隊員の問いかけを無視して、その人物は、話を続けてゆきます。
「おっと、これは知っている人が居られますね、マミさん。これで二度目ですね」
彼が何者であるか気づく、“マミ”隊員。
彼は、サブリナス基地で出会ったPurityの組織員だと。
「彼は、おしゃべりが下手です。私が、貴方達の質問に少しだけ答えましょう。ここまで来たご褒美に」
対峙する3人
「我々Purityは、異星人達と対する為に大きな力を必要としています。そう、ウルトラマンアルヴィスのような」
「しかし、彼のような力を、簡単に手に入れることは、できないようです」
「ならば、彼を我々が創ればよいと考えたのです」
驚く“オジカ”“マミ”の両隊員。
「そんな・・・そんな事が可能なのか?!」
「驚かれるのも無理はありません。しかし、メセドメキアとの戦いで我々は学んだのです。人間とメセドメキアの関連性を。当然ウルトラマンとの関連性もね」
「そこから導き出された答えは、条件さえ整えば、我々も戦士を創れると!!」
「しかし、まだ研究が足りません。ほら、そこのカプセルに鎮座している物体、それは研究素体の一部ですよ」
先程、思念を送ってきた物体を思い出し、恐怖に震える“マミ”隊員。
「貴方達は、人間を使って実験したと言うの?牙獣との融合を図ろうとしたの?」
「おや?貴方は、あれを融合と見ましたか?あれは、融合したものではありませんよ」
「あれは、単なる進化の落伍者です。そう次の世代への進化に敗れたものの姿です」
「我々は、メセドメキアが何者かを一部理解しています。その因子を取り込む事で人をウルトラマンに進化させる事が可能だと知ったのです」
「しかし、すべての人間が、その条件に合うようではないようです。その条件を探り出すのが、重要案件なのです」
銃を向けて、相手を威嚇する“オジカ”隊員
「だから、ヒジリをその実験体に使用したのか!!そんな事の為に彼の命をうばったのか!!」
「ええ、彼は秘密に近づきすぎました。しかし、かれはアジア地域の少数民族の家系でした。そうアイヌ一族のね。だから我々は、単一民族で、遺伝子があまり汚されていない彼を、実験材料の一つに選びました」
「実験は、ある意味成功で、ある意味失敗でした」
“マミ”隊員も銃を構えます。
「それは、どんな意味なの?」
その質問に笑みをもって謎の男は答えます。
「我々が欲しかったのは、ウルトラマン。しかし完成したのは牙獣。そういう事ですよ」
「それに、彼は、牙獣になりきれてないというべきでしょうか。人間の意識をもち続けています。それも失敗というべきでしょうか??」
あんまりな言い草に、ついに“オジカ”隊員が、弾けます。
「お前!お前!お前!」
銃を撃ち、彼を追い詰めようとしますが、男の前に張り巡らされた遮蔽壁に遮られてしまいます。
男の後ろの空間が開き、そこへ逃げ込もうとする男が、最後に二人に言い放ちます。
「あの牙獣には、素体の心が残っています。その意味では、まだ人間です。が、かれを元に戻す方法は、ありません。彼をどうするかは、貴方達に任せましょう」
その瞬間、施設自体が揺れだし、二人は床に倒れこみます。
“マミ”隊員の通信機が鳴り響きます。
「マミ、オジカ、又、奴が暴れだした。急ぎ地上へ戻れ!調査は中止だ!」

地上に再度現れた牙獣は、地上を破壊しつつ、近隣の市街地へ向っていました。
地上、空中の両面から牙獣を迎撃し、市街地への侵入を防ごうとする4S隊。
地上から牙獣を牽制しながら、Sバギーで追跡する“”マミ“と”オジカ“隊員。
「くそう!くそう!ヒジリ、お前を助けてやれない俺を許してくれ!!」
涙に目を曇らせながら、バギーを駆る“オジカ”隊員。そんな彼を横目で見ながら何もしてあげられない“マミ”隊員。
だが、その状況は一瞬の隙を生み出し、牙獣の攻撃を避け損なった彼らは、地面に放り出されてしまうのでした。
もう市街地は、すぐそこでした。
躊躇せず、アルヴィスに転身する“マミ”隊員。

倒れたバギーの側で、アルヴィスと対峙する牙獣を見ていることだけしかできない“オジカ”隊員。
牙獣とアルヴィスの戦いは続きます。
一進一退の激闘を繰り返す中、牙獣の攻撃がアルヴィスに命中し、アルヴィスは、牙獣に押さえ込まれてしまいます。
そんな時“オジカ”隊員は、“ヒジリ”隊員の意思を感じるのです。

≪オジカ!俺を救ってくれ!俺をお前の手で・・・≫

ついで“マミ”隊員の声が聞こえます。

≪貴方の手で、ヒジリ君を救ってあげなさい。これ以上彼の心を、汚させないで!≫

“オジカ”隊員は、二人の言葉に自分を取り戻します。
そう、“ヒジリ”は、元に戻してほしいと言っているのでなく、自分の心が、牙獣や邪な人々に操られ、その心が汚される事から救って欲しいと望んでいるのだと!
“オジカ”隊員は、アルヴィスを押さえ込んでいる牙獣の刺青部分に狙いを込め、ランチャーを発射させます。
見事、刺青に命中したランチャーの影響で、牙獣の動きが抑制されます。
刺青部分は、牙獣と“ヒジリ”を繋ぐ要素だったのです。
混乱した牙獣は、アルヴィスを取り逃がしてしまいます。
アルヴィスは、ジャストフラッシュの動作を行います。

≪さようなら、ヒジリ君。誰かが、これを終らせなきゃいけない。
でも、あいつにはそれをさせられない、それが私の運命だから。
貴方とは、もっと別なところで、早く出会いたかったわ。ごめんね・・≫

ジャストフラッシュが、牙獣に炸裂し、牙獣は粉々に砕け散ります。
そして、その牙獣の残骸の中から輝く光の粒子が、空に広がって一面が明かりに包まれます。
その粒子に包まれたアルヴィスの姿は、悲しみに満ちていました。


一人の地球人の犠牲により、地球防衛軍とPurityとの計画の一端が、垣間見られました。
驚くべき計画が進む中、ついに人類同士でも対立する図式が出来上がろうとしていました。
本当の敵は、なんなのか?
錯綜する思惑は、いかなる方向へ彼らを導くのでしょうか・・・
【第39話/完】




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