第40話

牙獣 ガウテン
ウルトラマンマキシマ
登 場




地球防衛軍の秘密基地建設は、公然の秘密として認識されるようになっていました。
先の牙獣騒動で、4S隊が施設内に進入、秘密実験の現場を押さえました。
参謀本部と警務隊は、科学警察機構に抗議を申し入れましたが、“フジ”監理官に諭され、黙るしかありませんでした。
「あら?この写真は某所という事実だけで、秘密基地とも施設とも報告を聞いておりません。それとも参謀本部は、基地が存在する事を認められるのですか?」
この言い草に苦虫を噛み下したような顔をしながら、押し黙る参謀達。
「しかし、すでにこの噂は、噂の域をでて、宇宙連合にも届いています。先日、彼らから地球軍に会談の申し込みがありました」
驚く参謀達。
「会議は、ここサブリナス基地の大会議室で行われる予定です。時刻は24時間後。急いで準備をお願いします」
連合の代表が訪れる事実を教えられ驚く防衛軍の諸氏を残して、“フジ”監理官は、席を立つのでした。

部屋を出た監理官に寄り添うように近づく“モリオ”隊長。
その彼に“フジ”監理官は、指示します。
「連合の代表を狙って、必ず敵対勢力が攻撃を仕掛けてくるはずです。その攻撃を阻止してください。これは全ての命令に最優先されます」
「メセドメキアが、でしょうか?」
思案げな“モリオ”隊長に監理官は諭します。
「いいえ。こうなると反連合組織は、すべて対象になります。そう、防衛軍内部も対象です」
驚く“モリオ”隊長。
「もし連合の代表が、ここで、この基地で倒れれば、メセドメキアに対抗する連合は分解、地球と連合、メセドメキアの3つ巴の戦争に陥る可能性があるわ」
「そうなったら、もう終わりよ。だからこそ、代表を守る必要があります」
「了解しました」
監理官の元を去り、任務に向う“モリオ”隊長の姿を目で追いながら、監理官は思うのです。
〈そう、必ず代表を狙って、敵は必ず、行動を起こすわ。それが阻止できない時、人類に、いえ、宇宙に明日はないわ〉


4S隊は、代表が乗る母艦を護衛してサブリナス基地に向っていました。
SSS号の長距離レーダーが異変を感知するのと、連合の戦闘艦が飛び出して行くのが、同時に起こります。
「隊長!レーダーに無数の物体が、高速で接近中!」
「隊長、連合指揮艇から通信です。“高速物体はメセドメキアの牙獣と認識。母艦の護衛を行われたし!我、迎撃任務に向う”です」
母艦を守る為に、牙獣の戦闘列に飛び込んでいく無数の連合戦闘艇。
いくつかの光の玉が輝くのは、連合の艦艇の破壊か?それとも牙獣の断末魔の光か?
「戦闘艇群を突破されます!」
連合の攻撃をかわし、一部の牙獣がSSS号と母艦に迫ります。
「攻撃開始!!」
無数に発射される攻撃兵器の火線に撃破される牙獣の群れ。
しかし一体の牙獣が、母艦に突入してしまいます。
その牙獣は先端がドリル様の形状をしており、外壁を食い破ると内部に侵入しようとするのでした。
母艦の兵装は、自分に向けては撃てない為、SSS号に牙獣撃破の緊急要請が入ります。
SSS号は、驚異的な操縦で、母艦に巣食う牙獣に向けて、対牙獣の必殺兵器“重粒子ミサイル”を撃ち込みます。
“ナガイ”隊員の操縦と“リョウコ”隊員の卓越した技術の賜物でした。
見事、牙獣を撃破した4S隊に、連合の母艦より感謝の連絡が入るのでした。
連合の護衛艦艇の被害は少なくないものの、太陽系内の移行に成功した連合の代表達。
その母艦を取り囲むように、地球防衛軍の戦闘艇が護衛につきます。
無事に施設へ到着した連合の代表達は、地球の関係者と会議に入る事ができたのでした。

4S隊は、会場の警備にも従事しています。
“マミ”隊員も地下施設の巡回に向っていたのです。
その彼女の背後から突然男の声がするのでした。聞き覚えのある、あの男の声が・・・
「また、会ったね。マミ君」
腰に手を当て、呆れた言い草で、相手を牽制する“マミ”隊員。
「こちらこそ、言いたい台詞だわ。ここで何をしているの?また爆破かしら?」
「貴方に用事があると言ったらどうでしょう?」
「私に?私に何の用事があるのかしら?」
警戒しつつ、男を取り押さえるチャンスを伺う“マミ”隊員。
「そう・・・アルヴィスの翼である貴方に、私は興味があるのです」
「翼・・?!」
「ウルトラの戦士達は、貴方達のような翼が必要な戦士なのですよ。ですから、貴方がどんな翼なのか知りたいのです」
相手の奇妙な言い草に、興味をそそられる“マミ”隊員。
「貴方達は、彼らの事をどのくらい知っているのかしら?もしかしたら、それは秘密なのかしら?」
男は、“マミ”隊員が会話に応じた事に満足しつつ、話し始めます。
「そう、彼らは翼を持たぬ種族です。その翼は、異種の生命体から手に入れる必要がある・・・」
「ええ、それは知っているわ。怒りと戦う志の事よね。アルヴィスから聞いているから」
“マミ”の言葉に反応して、男は答えます。
「ほう、ならばこの事実はどうかな?翼は時間が経つと斃れてしまう、もろい存在なのだと言う事を・・・」
「翼が、斃れる?どういう意味?」
男は、“マミ”隊員の問いかけに答えずに、やや後ろに下がってゆきます。それを追いかけるように前に出る“マミ”隊員。
「そう・・・我々の情報によると“翼はやがて斃れ、偉大なる戦士の力も失われる”と、解析されているんです」
「翼が・・・私の力が失われる?アルヴィスが斃れるって言うの?!、まさか!」
男は素早く柱に隠れると、手に隠した装置を動作させます。
一瞬、光り輝く壁が室内を取り囲むと、磁場の壁が“マミ”隊員に向かって迫ってくるのです。
慌てて光の壁を避ける“マミ”隊員。
しかし、何度もその壁は彼女を追いかけ、取り込もうとします。
「いつまで逃げ切れますかな?その電磁障壁は、メセドメキアの技術で作られた特殊な装置です」
「その障壁に貴方が触った瞬間、貴方は、自分の持つ翼を失う事になります」
驚く“マミ”隊員。
「それが真実か否かは、我々も分かりません。だから貴方に試してみます。だから貴方に用事があるのです」
迫る障壁。
今度は左右から挟まれて迫ってきます。
躊躇する“マミ”隊員。

「危ない!マミ!!」
電磁障壁の脅威から、“マミ”隊員を救おうとして、“ファ”隊員が、飛び込んできます。
その決死の体当たりで、“マミ”隊員は障壁から逃げ遂せましたが、代わりに“ファ”隊員が、その威をまともに受けてしまいます。
「ファ!!」
倒れこんでいる彼女を、慌てて抱き起こし介抱する“マミ”隊員。
「大丈夫?!しっかりして!!」
自分を助けてくれた“ファ”を心配する彼女に向かって、Purityの男は、言い放ちます。
「ほう。異星人のくせに、地球人を庇ったか」
男を憎しみの目で見つめる“マミ”隊員。
「同じ地球人同士でも、人を妬み、憎しみあい、争う。でも愛し合うこともできる。異星人だからと言って拒む必要は、無いわ!」
「いや、異星人の存在は、我々に新たな憎しみを、悲しみをもたらしただけだ」
「異星人だろうと、地球人だろうと、理解しあえるはずよ。私達のように・・・」
「それは、君達の傲慢さ。そんなに地球人は・・・じゃない」
“マミ”隊員の腕の中で、意識を取り戻す“ファ”隊員。
「ファ!ファ!・・良かった・・」
その時、4S隊の仲間が、駆けつけてくれます。
男はそれを見ると、またしても次元転送で、姿を消したのでした。
「ふふふふ、まあいい。片翼は、折れた。あとは、盟友のお手並みを拝見しよう・・・」

防衛軍のメディカル施設で、手当てを受ける“ファ”隊員。
傍には、“マミ”隊員が付き添っています。
4S隊は、“ムロイ”隊員を筆頭に、付き添いたいとの願いがありましたが、引き続き代表の護衛任務が残っており、“マミ”隊員を残して任務に戻っていたのです。
ベッドで寄り添う“マミ”隊員に“ファ”隊員は、ティシュトリヤのリングを見せます。
それは、真っ赤に光り輝き、微弱な熱を帯びていたのです。
「これが、私を守ってくれたみたい。電磁波の衝撃を全て受け止めてくれたから・・・」
“マミ”隊員は、心の中のアルヴィスに感謝しました。
しかし、その心を捉えたかのように、アルヴィスの声が、脳裏に響きます。

≪ティシュトリヤのリングは、君達の護符だ。しかし、今回のような攻撃には、その能力の限界までも使い切ってしまう≫
≪為に・・・しばらくファは、私と共生できない≫

「えっ?」
驚き、心配顔になる“ファ”隊員に、“マミ”隊員は笑顔で答えます。
「大丈夫!アルヴィスと私で頑張るから。心配しないで!」
その屈託無い笑顔に、自分の心配を苦笑する“ファ”隊員でした。

その頃、連合代表と防衛軍、国連の合同で、長時間の会議が無事に行われ、現状の確認と報告が行われていました。
全ての参加者が納得した条項ではありませんでしたが、連合と地球との決裂は、避けられたのです。

1)連合と地球は引き続き盟邦として活動を続ける
2)地球側は、できるだけ連合に軍事的組織内容を公開する
3)連合は、技術的援助を続ける
4)互いに交流支援技官を派遣し、相互理解を深める

これらを主体にした条項が取り交わされ、連合と地球の相互不信の芽は、一旦は収まったのです。
地球側関係者の見送る中、連合の代表が乗る母艦が防衛軍施設を離れようとする時、突然牙獣が襲い掛かります。
牙獣の出現に4S隊と防衛軍、連合の各部隊は、すぐさま応戦に入ります。
だが巨大化した牙獣の攻撃に、防衛軍も連合も圧倒されてしまうのでした。
あわや牙獣が母艦に一撃を射れようとした瞬間、その攻撃は、光の壁に阻まれるのです。
危機を察知した“マミ”隊員がアルヴィスに変身して、牙獣からの攻撃から母艦を守ったのでした。
「ウルトラマン!」 「アルヴィス!」 「超人・・戦士?!」
現場の人々の思いは様々でしたが、今は共通の敵“牙獣”を撃つ事で一致していました。
その思いを繋げる4S隊からの通信が、全ての人々の耳に伝わるのです。
「アルヴィスは味方です。どうぞ共闘してください、我々の未来の為に!」
一瞬の沈黙の後、4S隊に連合の部隊から入電が繰り返されます。
〈了解した、地球人。超人戦士を援護する〉 〈こちら母艦管制室、4S隊了解した。攻撃を開始する!〉 〈こちら・・・〉
全ての艦艇が、アルヴィスを援護する形で動き出し、牙獣を圧倒していきます。
ついに牙獣は、その攻撃に耐え切れずに崩壊し、爆発するのでした。
歓喜の渦に湧く、連合軍、防衛軍の諸兵達。
だが、その爆炎が収まると同時に、悲鳴にも似た声が、通信機を通じて聞こえるのでした。
〈本部、爆発した牙獣の跡に、新たな巨人を発見!敵味方の識別を求む!本部・・・〉
連合の当惑した様子は、4S隊にも伝わっていました。
「いかん!あいつはメセドメキアの使者だ。コード名“β”だ!」
ミコロネでの作戦後、地球側がつけたマキシマのコード名称でした。

マキシマは、牙獣とは比較のならない凶悪さで、連合、防衛軍の精鋭達を葬ってゆきます。
歓喜が恐怖に変る瞬間を楽しむように、破壊を続けるマキシマの前に、アルヴィスが立塞がります。

≪マミ!前に戦った事があるウルトラマンよ!気をつけて≫

“ファ”の呼びかけに“マミ”も勇ましく答えます。

≪今度は大丈夫。この前のお返しをしなくちゃね≫

“マミ”の思いとアルヴィスの気持ちが触発して、マキシマとの戦闘が始まります。
激闘が繰り返され、地面が割れ、空が引き裂かれてゆきます。
援護しようとする連合、防衛軍を巻き込みながら繰り返される死闘は、ついにアルヴィスの一撃がマキシマに加えられた時、終るかに見えました。
マキシマをアルヴィスエッジで強打し、地面に崩れさせると、必殺のアルヴィゥム光線を放とうとします。
ところが、突然アルヴィスの動きが止まると、片膝をつき倒れこんでしまうのです。

≪何?どうしたの?マミ、アルヴィス!!≫

驚く“ファ”隊員の必死の呼びかけにも拘らず、アルヴィスの動きは止まったままです。
その隙にマキシマは、先の打撃から回復して、動きの止まったアルヴィスに対して攻撃を仕掛けてきます。
何とかその攻撃を鈍重な動きでかわすアルヴィスに、先程までの精彩さは感じられません。

≪ファ・・・体が突然、重くなって・・・ファ・・・≫

“マミ”からの意識が、アルヴィスを通して“ファ”に苦しげに感じられました。

≪まさか・・・まさかマミ、貴方も・・・≫

苦闘するアルヴィスを見つめる“ファ”

≪アルヴィス!マミを守って!お願い!!≫

今は共生できない“ファ”は、ティシュトリヤリングを握り締め、祈る事しかできません。
その苦しみに胸が張り裂けそうになる彼女でした・・・


“マミ”を襲った現象は、過去に“ファ”に齎したものの再来なのか?
苦闘する“マミ”とアルヴィスの運命は?
力を一時的に失った“ファ”になす術はあるのでしょうか?
【第40話/完】




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