第41話

ウルトラマンマキシマ
ウルトラマンジュダ
牙獣 フッカ
登 場




マキシマとの戦闘中に突然アルヴィスの動きに陰りが生じたのは、“マミ”隊員の体の異常が原因でした。
突然の幻暈と発熱に、意識の持続が困難になり、アルヴィスとの共生が保てなくなってしまったのです。
「私?私の体?動かない・・・戦わなきゃ、私が戦わないと・・・」
“マミ”隊員の思いとは裏腹に、アルヴィスの戦いは、劣勢になってゆきます。
「マミ!しっかりして!アルヴィスには貴方が必要なの!貴方の力が!」
“ファ”隊員の慟哭が、聞こえます。
“私が居ながら、マミとアルヴィスを助けてあげられない”、と自分を責めていたのです。
「何とかしなくては!」
“ファ”は病室を飛び出すと、施設の防衛センターに走り出します。

途中出合った“リョウコ”隊員に同行をお願いすると、向った先は、新兵器テスト場でした。
そこにあるのは、遊撃ミサイル“キリー”。
地球防衛軍の防御兵器として、極秘裏に開発されていたスーパーミサイルでした。
試作段階の為、今だ独立して制御する事ができる事を知っていた“ファ”隊員は、これを独断で使用しようと考えたのです。
ウルトラマンマキシマに、一撃で大きなダメージを与える事ができる、現状唯一の兵器。
「貴方には、本当に驚かされるわ・・・。一緒に共犯者になるわね!」
“リョウコ”隊員は、“ファ”隊員がアルヴィスを助ける為に、無断でミサイルを使用すると考えていました。
彼女もアルヴィスを救いたかったのです。
そう、地球を守る守護者のアルヴィスを、自分達の仲間として助けたいと思ったのでした。

二人の協力でキリーが動作し始め、狙いがつけられます。
「モリオ隊長、極周波発信機をマキシマに投射してください!」
“リョウコ”隊員の求めに驚く、“ナガイ”副隊長。
「了解した、リョウコ隊員。後で始末書を沢山書いてもらうことになるぞ!」
「ええ、隊長。ファ隊員と一緒に何枚でも書きますよ♪」
二人が何を利用してアルヴィスを救うのかを察知した“モリオ”隊長は、発信機をマキシマに投射してゆきます。
異変に気づき、SSS号に目標を変えるマキシマ。
発信機の受諾ランプが点灯したのを確認した“リョウコ”隊員は、“ファ”隊員に号令します。
「今よ!ファ、発射!!」
格納庫から飛び出してゆく、ミサイル“キリー”
マキシマは、防衛軍施設からミサイルが多数発射されるのを認識すると、マキシマの頭の角の部分が光り攪乱の電磁界を張り巡らします。
しかしキリーは、その攪乱された電磁界そのものと、発信機を捕らえ続け、ついにはマキシマに次々命中してゆくのでした。

バリアーで防げるも、その強大なエネルギーは、マキシマにとっても無視できない破壊力があり、マキシマは、大きな痛手を受けてしまうのでした。

≪ジン!大丈夫?答えて、ジン!≫

防衛軍施設の管理室で、地上の戦闘を見ていた“ユウコ”隊員は、“ジン”にテレパシーを送ります。

≪ええ、大丈夫です。が、流石にキリーの打撃力は、半端ではありません≫

≪戻って、ジン。アルヴィスに止めをさせないのは残念だったけど、次のチャンスを待ちましょう≫

≪暫く翼は折れたままだから・・・≫

“ユウコ”隊員の指示を受けて、マキシマは、戦闘域を空間転位で脱出してゆくのでした。
それを見届けると、アルヴィスも変身が解かれ、姿を消してゆきます。


“マミ”隊員を探す“ファ”隊員。
その彼女の目前に、倒れこんでいる“マミ”隊員の姿がありました。
急いで介抱する彼女は、以前リュディアで、自分が陥った同じ症状を“マミ”が呈している事を確認したのです。
「ああ・・・貴方にも私と同じ事が・・・」

≪アルヴィス!答えて!マミにも同じ事が始まったのでしょう!≫

“ファ”隊員の心の叫びは、アルヴィスにも届いていました。

〈そうだ、マミにも君と同じ症状が・・・。もう時間が無いのかも知れない・・・〉

≪まだ、脅威が去った訳ではありません。何か方法は?アルヴィス・・・≫

〈それは、分からない。今はマミの回復を図る事が大切だ。ファ、マミを頼む〉

アルヴィスとの疎通が途切れた後、“ファ”は“マミ”を連れてメディカルセンターに戻るのでした。


病室で向き合う“ファ”と“マミ”の二人。
治療後、意識を取り戻した“マミ”は、“ファ”の献身的な看護にお礼を言います。
そして、彼女は“ファ”に先の異変を聞くのでした。
「ねぇファ。貴方は知っているのでしょう?教えて!あれはなんなの?」
彼女の必死な願いに、“ファ”はリュディアでの出来事を詳しく話します。
「そう、アルヴィスとの共生関係は、個体差があると思うけど、ある一定の期間で共生関係が途切れるの」
不安げな“マミ”
「途切れると、どうなるのかしら?」
「それは・・・わからない。でもアルヴィスは私に、“君を失いたくない”と言っていた・・・」
“ファ”を無言で見つめる“マミ”
「うん!大丈夫。私は、アルヴィスと生きる事を決めているから、どんな事があっても、この体がどんな風になっても・・・」
努めて健気に振舞う“マミ”をそっと抱きしめる“ファ”。
「ファ!?」
「貴方を死なせはしない。私が絶対に・・・」

メディカルセンターで“マミ”隊員の回復を待つ間、“ファ”隊員は、“ユウコ”隊員の所在を探していました。
もう一人の共生体“ユウコ”なら、何かを知っているのではないかと、藁をも掴む気持ちで探していたのです。
アマティの機体整備エリアで、“ジン”隊員と一緒の“ユウコ”隊員を見つけた“ファ”隊員は、彼女に話があると頼みます。
“ファ”隊員の血相に“ユウコ”隊員は、会話に応じる事にしたのです。
「何かしら?アルヴィスと彼女を痛めつけた事なら、謝らないわよ」
“ユウコ”隊員の不遜な対応に怒りを募らせる“ファ”隊員でしたが、“マミ”の為に心を押し殺します。
「いえ、その事ではないの。貴方に・・・いえジュダに聞いて欲しい事があるの」
意外な申し出に驚く“ユウコ”隊員。
「貴方達、いえ、ウルトラマンの共生体の事を聞きたいの!」
「?」
「貴方なら・・メセドメキアに近い“ジュダ”なら・・知っているはずだから!」
その時、“ユウコ”隊員の意識からジュダの声が聞こえるのでした。

〈ファよ、マミの事なのだろう。ついにあの生命体にも、その時が来たと言う事なのだろう〉
〈お前の知りたい事を教えよう。何が知りたい?〉

ジュダの快諾に驚きを隠しきれない“ファ”隊員でした。

「ええ・・貴方達ウルトラマンと共生体の事なの。この関係について説明して欲しいの」

〈アルヴィスの共生体が、ブレイアしそうなのだな〉

「ブレイアとは、何なのです?」

問いただす“ファ”隊員。

〈我々の言葉でブレイアとは、お前たちの言語では、“融合する”が、適当だろう〉
〈メセドメキアが成立した我々の世界では、戦う心を他の種族から自分のものにしない限り、戦闘種族としてのウルトラマンは存在できない〉
〈その方法は、いくらでもあるが、普通は戦闘種族を見境なく取り込むか、アルヴィスのように種の同意を得て借りるという方法を採る〉
〈前者が“牙獣”で、後者が“アルヴィス”や“私”の様に〉
〈しかし、種の同意を得て共生関係に入った瞬間から、我々の強すぎる意識は、その種を取り込もうとしてしまうのだ〉
〈それが始まると、種の意識とウルトラマンの意識が拮抗するようになり、両方の体に異常が発生する〉
「では、すでにその状態が二人に起こっていると?」
〈そうだ。これは避けられない運命なのだ〉

“ファ”は、ジュダの言葉を信じました。
敵対している彼の言葉は事実ではないかも知れませんでしたが、言葉尻に何か、優しさを感じた“ファ”は、彼の言葉を信じる事にしたのです。

「このまま二人が共生関係を続ければ・・・」

〈そう、続ければ、二人の意識が喰い合い、自我が破壊され、死んでゆくだろう〉

「逃れる方法はないのですか?貴方はメセドメキアに近い存在です。知っているはずです、その方法を!」

〈流石だな。アルヴィスの選んだ共生体だ。利巧な種だ〉

〈それを一度だけ解除する方法は・・・・ある〉

ジュダの言葉に彼女の決心は固まります。
どんな事でもやろうと。“マミ”とアルヴィスを助ける為ならば・・・

「あるのですか?!どうぞ教えてください。その為には私の命を貴方に捧げても構いません」

〈お前はすでに、アルヴィスの共生体であった。だから私は、お前を必要としない〉
〈ブレイアを阻む方法はあるが、それは確実な方法ではない。それに命を賭けられるのか?〉

「賭けられます。二人の為なら・・・」

〈お前達は、本当に面白い種だ。互いに違う種なのに、助け合い、命まで賭けるとは・・・〉

ジュダが“ファ”隊員を見つめます。

〈良かろう。教えよう。お前のその決心に免じてな・・・〉


走り去る“ファ”隊員を黙って見送る“ユウコ”隊員。

≪どうなっているの、ジュダ?何故共生体の秘密を彼女に伝えたの?知らなければ、楽に勝てたのに・・・≫

〈そうだな、ユウコ。お前の言うとおりだと思う。でも私もお前も楽にではなく、完璧な彼らを、倒してみたくはないか?〉

クスリと笑みを浮かべる“ユウコ”隊員。

≪お付き合いするわ。貴方の望みは、私の望み≫

“ユウコ”隊員は、“ジン”隊員の元に戻っていくのでした。


一方“マミ”隊員のいるメディカルセンターに向う“ファ”隊員。
「今度マミがアルヴィスに変身する時、私も共生し、ティシュトリヤリングに蓄積されたエネルギーを開放する・・・」
「うまくいけば、マミの失われた生体エネルギーが回復し、アルヴィスの意識を押さえ込み、彼女は元通りの元気な姿に・・・」
“ファ”はイヤリングを握り締めます。
「必ず戻してみせる、私の命に代えても!!」
彼女の思いは、一途でした。
病室で“マミ”隊員に一部始終を話す“ファ”隊員に、“マミ”隊員は、疑問を投げかけるのです。
「・・でも、そのティシュトリヤのエネルギーの転換が上手くいかなかったら、どうなるの?」
その問いかけに言葉を詰まらせる“ファ”隊員。
「上手くいかないときは・・・」
その時、二人の脳裏にアルヴィスの声が響くのでした。

〈そう、ブレイアを防ぐ為には、その共生体の種の意思を増幅させるエネルギーが必要になる。またそれは、そのウルトラマンの意思の力を超える必要がある〉
〈新たな力は、共生体とウルトラマンと更に同調できる触媒が、必要となるはずだ〉
〈ファ・・・君は、自分の身を犠牲にして我々を救うつもりなのか?〉

アルヴィスの言葉に驚き、“ファ”を見返す“マミ”。

「いえ、アルヴィス。ジュダの言によれば、触媒である者が、その対象と近い位置にあればあるほど、成功率は高いと言っていました」

〈確かに今のティシュトリヤリングのエネルギー蓄積量は、ブレイアを駆逐するのに十分な量だ〉
〈そしてファが触媒となれば、それは容易いかもしれない・・・しかし・・・〉

「アルヴィス、貴方は私の故郷を守って戦ってくれました。しかし不幸にも私達の努力が足りず、貴方の誠意を無にしてしまった事を忘れてはいません」
「今、この地球で、同じ様な事が起きています。このままでは、あの時のようにメセドメキアの進駐を許す事になってしまいます」
「できることがあるなら、試すべきです。何もしないで、屈する事はできません!」
“ファ”の固い決意に、“マミ”もアルヴィスも同意せざるを得ませんでした。

〈ファよ。もし成功しても、君の共生体としての力は失われ、二度と私と交わる事はできなくなる・・・それを覚悟して欲しい〉

「ええ、聞いていますアルヴィス。覚悟は出来ています」

その時でした。山中から爆炎が昇ると新たな牙獣が現れたのです。
鳴り響く警報音と共に防衛軍施設は臨戦態勢に入ります。
巨大な鯨のような牙獣は、その巨体にも関わらず、素早い速度で移動し、防衛軍を翻弄してゆきます。
4S隊もSSS号で応戦しますが、硬い皮膚にその攻撃の効果が感じられません。
“マミ”隊員は、頭に巻いてある包帯を取ると、アルヴィスへの変身を決意します。
その“マミ”隊員に“ファ”が声を掛けるのでした。
「どんな結果になろうと、決して後悔をしないで。貴方は、貴方の責任を果たしなさい!私もそうするから・・・」
互いに見つめ合う二人。
「ファ・・・あとでまた逢いましょう」
「ええ、また後でね、マミ」
彼女らの別れは、永遠の別れではありません。
互いに為すべき事をなし、必ず生きて帰ってくるという、互いへの約束でした。

外に出た“マミ”隊員は、リングに手を翳すと、ウルトラマンアルヴィスに変身します。
アルヴィスは牙獣の進撃を食い止めようと立ちはだかりますが、その巨体に圧倒されてゆきます。
なんとか踏ん張ろうとしますが、徐々に押し込まれてゆくのでした。
「マミ!アルヴィス!頑張って!」
施設屋上で、戦いを見守る“ファ”。
しかし願いもむなしく、アルヴィスと“マミ”にブレイアが発生してしまうのです。
突然の意識の混濁が始まり、“マミ”隊員を襲います。
牙獣との戦闘でも、その不快な現象は、アルヴィスを幻惑させます。
精細さを欠くウルトラマンアルヴィスの戦い。
その戦いを見ていた“ファ”隊員は、ティシュトリヤのイヤリングを高く揚げると大きく叫ぶのです。

「マミ!アルヴィス!私の翼を受け取って!」

輝く光となってアルヴィスに吸い込まれる“ファ”隊員。
そのイヤリングに蓄積されたエネルギーが開放されて、アルヴィスを包み込みます。
その時牙獣の放ったエネルギー弾がアルヴィスの居た所に命中し、爆炎の中にアルヴィスの姿は消えてしまいます。 誰もがアルヴィスが倒れたと思ったその時、奇跡は起こったのです。
プロテクターにrobeが新たに形成された、新しいアルヴィスの姿が、そこにありました。

“マミ”隊員が共生した時に現れるプロテクターと、リュディアで“ファ”隊員が共生していた頃のrobeが、アルヴィスの身を守っていたのです。
“マミ”と“ファ”の完全な力の融合は、アルヴィスに最大のパワーを与えました。
リュデイアの戦士“ファ”の力が、“マミ”に吸収され、アルヴィスに転化された結果でした。
“マミ”の強い攻撃力と“ファ”の守る力を得たアルヴィスに、牙獣が敵対できるはずもありません。
新必殺武器ファレーションを放ちます。
その光の渦は牙獣を巻き込むと、亜空間へ封印してしまうのでした。

変身を解いた“マミ”は、“ファ”の姿を探します。
「ファ!どこに居るの?ファ!答えて!!」
そんな“マミ”隊員の目の前に“ファ”隊員が現れます。
いつもと変らない笑顔で彼女を迎える”ファ“の姿に安堵する”マミ“隊員。
泣き笑いの様子で“マミ”と“ファ”の二人は相対します。
「もう、アルヴィスと共生できなくなっちゃった・・・」
“ファ”の言葉に感謝の言葉しかない“マミ”。
「ファ・・・ごめん、ごめんね・・・」
「ううん、いいの。貴方が私の力を得ることで、アルヴィスをもっとサポートできるから。私が望むのは、貴方達の喜ぶ顔だから」
“マミ”を慰めるように抱く“ファ”隊員。
そんな彼女達の姿に、地球の美しい夕日が輝いていました。


“ファ”隊員の決意によって“マミ”隊員は新たな力を得ることができました。
しかし、それは二度とアルヴィスと共生できない事を意味しました。
彼女は、全ての運命を“マミ”とアルヴィスに賭けたのです。
自分の未来を、そして宇宙に住む生命体の行く末を、二人に託した結果だったのです。
【第41話/完】




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