アルヴィスは、“マミ”と“ファ”の力を同時に発現する事が可能になりました。 その究極の姿は、アルヴィスを不可侵の者として感じさせました。 敵味方を問わずに・・・ 特に“ジン”の衝撃は、計り知れないものがあったのです。 それまでアルヴィスと互角、いや凌駕していたかもしれない自分の力が、今は太刀打ちする事もかなわない! そしてそれが、自分の仲間であるはずのウルトラマンジュダの助言で成された事も驚きだったのです。 「ユウコ!何故あなた方は、アルヴィスとその仲間達を助けたのですか?復讐するつもりではなかったのですか?!」 疑問をぶつける“ジン”に、“ユウコ”隊員は黙ったまま答えはしませんでした。 同じ体験を共有する二人は、互いの気持ちを通じ合い、強い繋がりがあると信じていた“ジン”でしたが、今回の“ユウコ”隊員の対応は理解出来るものではなかったのです。 一人基地内で悩む“ジン”。 彼は、ジュダの故郷であるメセドメキアへの単身潜入を考えます。 “ユウコ”が答えないならば、直接“ジュダ”に聞くべきであると考えた結果でした。 太陽系パトロールの巡回中に、機関部の故障を装い、メセドメキアへと着陸を試みる“ジン”。 メキアでは牙獣が全ての潜入する物体を駆逐すべく行動しており、進入したアマティの攻撃艇にも攻撃を仕掛けます。 「下がれ!牙獣!」 “ジン”の一言で、牙獣はその場を立ち去ってしまいます。 「ふん!下郎の分際で、私を威嚇するなど!」 彼は、そう言い放つと、機体をクリスタルシティーに着陸させるのでした。 クリスタルシティーの地下に広がる廃墟を進むと、巨大な光の柱が現れます。 これがメセドメキアの末端部分でした。光の柱は、星の中心にある本体と結びついていました。 “ジン”が近づくと、突然光の柱が震えだし、彼の脳裏に声が響き渡ります。 ≪マキシマ・・・いや、ジンよ。お前が来る事は、感じていた・・・≫ メセドメキアからの突然の語り掛けに驚く、“ジン”。 「貴方は、ウルトラの全てを掌る者のはずです。ならば、私の疑問に答えて頂きたい!」 大きく問いかける“ジン”に、光の柱は輝きを増してゆきます。 ≪アルヴィスとジュダの事だな・・・≫ 「ええ、私には理解が出来ません!アルヴィスと共生体との連携が切れかけたあの時、なぜジュダとユウコは、彼らに手を貸したのか?」 「あのままの状態ならば、アルヴィスは私の手で倒せていたはずです」 ≪しかし、お前はアルヴィスを倒せなかった・・・≫ 「それは・・・ジュダ達が裏切って手を貸したから・・・」 メセドメキアの問いかけの意を探ろうとする“ジン” ≪ジン・・・お前はウルトラの戦士マキシマと共生している。お前は、その力を十分に引き出していると思っているのか?≫ 「そ・それは・・・」言葉に詰まる“ジン” ≪お前は、マキシマの力を借りてアルヴィスに対抗していたが、実はその実力の半分も使ってはいない。確かにアルヴィスを圧倒していたが、それは、単にアルヴィスの共生関係が弱体化していただけなのだ・・・≫ 「では、私には、マキシマの力を発揮させる能力が無いと?!」 怒りと屈辱で手を振るわせる“ジン” ≪そうは言っていない。ジンよ。お前はアルヴィスを倒して復讐を果たした後は、望まないのか?≫ 「それは、どういうことでしょうか?」 ≪マキシマの力は、アルヴィスを凌駕できる。と言う事は、ジュダの力も凌駕できると言う事だ・・・≫ 驚き聞き返す“ジン” 「メキア!それは、どういう意味です?」 聞き返す“ジン”に強力な意識が流れ込んでゆきます。 それは、ウルトラの人々の意識であり、叫びでした。 苦悶の声が、“ジン”の頭に響き渡ります。 ≪これが、ウルトラの人々の意識だ。私が取り込んだ、ウルトラの一族が望んだ、すべてだ≫ ≪私の力を解放し、受け継ぐ者を欲している。それに一番近い存在がジュダであるが、それだけだ≫ ≪そして彼だけが、この力を受け継ぐとは、限らない・・・≫ メセドメキアは、ウルトラの力を受け継ぐものを探していたと・・・。 共生して転生できたウルトラの戦士の中で、優秀な者が、すべてを受け継ぐべきだと“ジン”に伝えます。 ≪ジュダは、アルヴィスを利用しているのだよ。我が力を自分の物にするために、アルヴィスに手助けしてもらっている・・・≫ 「手助け?」 ≪我が力は、ウルトラの意思だ。しかし、それは封印された力でしかない。この封印を解く為にアルヴィスを手助けしているのだ≫ 「封印を解かせる為に・・・?」 ≪そうだ。封印を解けば、この力は解放され、大いなる存在となれるはず・・・≫ 「ジュダとユウコは、その力を手に入れようとしていると?」 ≪そうだ≫ 自分と同じく、親しい者を同じ地球人に殺され、それを英雄視する地球人に復讐する為に行動を共にしてきた“ユウコ”。そして“ジュダ”。 彼らを良き理解者と思っていた自分に隠れ、何かを画策していた事実に驚きを隠せない“ジン” 封印されたウルトラの力を解放する鍵がアルヴィスなのだと・・・ 「アルヴィスだけに何故その力があるのですか?」 ≪アルヴィスではない。正確にはアルヴィスの共生体にだ≫ 驚く“ジン”にメキアは続けます。 ≪お前達共生体は、ウルトラの戦士たちの補完であるはずだった。しかし、アルヴィスの共生体には、違う力を感じる・・・≫ ≪そう、今は完全ではないが、戦うごとに強くなり、その力は私の封印を解く鍵になるやもしれん≫ 「あのマミ隊員が?」 「彼女は一体なんなのです?何故そんな力を持っているのですか?」 迫る“ジン”にメキアは言葉を続けます。 ≪共生体は、ウルトラの戦士を補完するものであった。しかし、戦いがその変質を生み出し、お前達人間の中に、ウルトラの戦士として融合できるほどの性質を持ち合わせる者が、現れているのだ≫ ≪そう、お前が補完者ならば、アルヴィスの共生体は、共融者なのだ≫ ≪この共融者こそ、メキアの力を取り込める究極の進化した姿なのだ≫ 愕然とする“ジン” 「では・・・では、もうアルヴィスとマミは、その力を手に入れてしまっていると・・・?」 ≪ふふふ・・・心配か?お前が、マキシマと共生する以上の力を得たアルヴィスに対抗できるかが?≫ メキアに図星を指され、思わず拳を握り締める“ジン” ≪心配するな。まだ不完全なのだ。もう一歩、アルヴィスの共生体に、アプローチする必要がある≫ 不振な顔の“ジン” ≪そう、完全になってしまえば、その力は誰にも侵されはしない存在になるだろう。だが、その直前であれば、その力をアルヴィスから奪うことができるのだ≫ 「ユウコとジュダは、それを狙っていると?」 ≪そうだ。ユウコには共融者としての素質を有している≫ 「では、私にもその力が・・・」 ≪残念ながらジン、お前にはその素質は無い≫ 愕然とする“ジン”。自分にはウルトラの力を得る資格が無いのだと宣言された事に、衝撃を受けたのです。 ≪だが、そのように補完する事はできる≫ 「?」 ≪もう一人の共生者を利用すればよい≫ 「ファを?!」 意外な提案に“ジン”も混乱します。 ≪彼女の力は、アルヴィスの昇華と共に失われたようにみえる。だが、アルヴィスとの共生が閉ざされただけだ≫ 「!?」 ≪ジン・・・お前は、何を望む?お前が、本当に望むものは、なんなのだ?≫ 意識に語りかける光柱を見つめる“ジン” 光の柱は、ゆっくり点滅を繰り返していました。 それは、一種の催眠効果を生み出していたのかもしれません。 “ジン”の目から生気が失われ、メキアの潜在意識が、彼に取り込まれてゆきます。 「そう・・・私はすべてを望む。あらゆるもの全てを、この手に・・・、すべてを想いのままにするために・・・」 “ジン”の答えに満足したかのように、光柱は、輝きを消失してゆきます。 ≪ならば、戦え。全てを凌駕したものに、この光が手に入る、そうウルトラの光が・・・≫ ≪そう、最強の力が・・・何者にも侵されない最強の力が・・・≫ 光柱は、“ジン”に、そう言い残すと彼を解放するのでした。 光の呪縛から解放された“ジン” その彼の目には、以前の迷いが無くなっていました。 ジュダや“ユウコ”の協力者でなく、自分の野望を手に入れる覇者としての彼が、そこにいたのでした。 「そう・・・私は・・・支配者となり・・・」 地球への帰還の途につく“ジン”を見つめるメキア。 ≪我が力は、誰のものでもない・・・究極の進化の果てには・・・ふふふふハハハハハ≫ メキアの悪意ある笑い声が、星を震わせていました・・・。 地球防衛軍サブリナス基地内部。 自室で休憩を取っていた“ファ”隊員は、突然の胸騒ぎに飛び起きます。 「なに?この感じは?この不安は・・・?」 今までに無い“感覚”を感じた彼女は、それが何かを知る為に飛び出してゆくのでした。 そこに“ジン”隊員の姿がありました。 「ジン?」 思いもかけない人物の姿に、驚く“ファ”隊員。 「貴方にお願いがある。返事は、何時でもいい。是非これを貴方に渡したくて・・・」 “ジン”隊員は、腕輪を“ファ”隊員に手渡します。 「何かしら?」 腕輪を不思議そうに見つめる“ファ”隊員。 「それは、貴方がいずれ・・・必要とするものだ」 「必要になるもの・・・?」 それだけを言い終えると“ジン”隊員は、“ファ”の元を去ってゆきます。 訝しげにその姿を見送る“ファ” そんな時、突然、牙獣接近の警報音が、基地内に鳴り響きました。 部屋を飛び出してきた隊員達の中に“マミ“の姿もあります。 「ファ!緊急出撃よ!急いでいきましょう!!」 “ジン”が何の為に、この腕輪を自分に渡したのか? その答えを考える間も無く、彼女達は戦闘に赴くのでした。 牙獣は、幾重もの防御システムを掻い潜り、サブリナス基地への強襲をかけてきたのでした。 空間遮蔽の能力を生かし、防衛軍の攻撃を翻弄する牙獣プラウス。 翼を広げたその姿は、悪魔とも言える醜悪なものでした。 人々を畏怖させる事を目的に、メキアが作り上げた牙獣の姿に恐怖する防衛軍。 その一瞬の心の隙を捉え、プラウスは全身から共周波を放ち、防衛軍兵士を混乱させてゆくのです。 心の闇を引き出し、恐怖させて、戦意を無くさせてしまうその力は、周波域に飛び込んだ全ての兵士に効果がありました。 「うわぁ!!来るな!来るな!来るな!」 「怖いよ!!お母さん!!」 隊員達の狂乱に、防衛軍は大混乱に陥ります。 「拙いな・・・あの牙獣に近づくと、人の精神が損なわれてしまうようだ」 4S隊も“プラウス”効果を恐れ、周波域を避けて攻撃を仕掛けますが、有効打を与える事ができません。 ついにプラウスは、基地に取り付き攻撃を仕掛けてゆくのでした。 「敵牙獣、外壁を破壊しています!A1からC6までのブロックで気圧が減少!」 「逐次隊員を退避させよ!」 基地内部も大混乱に陥ります。 SSS号はプラウスを基地から遠ざける為に、危険を承知で近接攻撃をしかけます。 「周波域に突入します!」 SSS号の“ナガイ”副隊長の掛け声とともに、身構える各4S隊員達。 プラウスの恐怖暗示が、隊員達に襲い掛かります。 「ぐぉおおお!」 「きゃ!!」 「うぉ!」 全ての隊員に様々な恐怖が襲い掛かっていました・・・そしてその効果は、精神力の弱さに強く反応したのです。 次々と周波域の餌食になる隊員達。 特に特殊な訓練を経ていない“マミ”隊員には、その効果が著しく及んでいたのです。 彼女の意識に、今まで守りきれなかった人々の恨みが流れ込んでいました。 その慟哭と悪意は、“マミ”の精神を蝕んでゆきます。 失神状態に陥る“マミ”に気づき、“ファ”は彼女を抱きかかえます。 「しっかりしなさいマミ!!幻覚なの!これは実際に起きている事ではないのよ!」 “マミ”の頬を打ち据える“ファ”隊員。 その一瞬の痛みで我に返る“マミ”隊員。 「ファ!・・私・・」 「しっかりして、マミ!プラウスの攻撃は、地球軍、宇宙軍の通常兵器では、止められないわ!」 「だから、貴方が、貴方がアルヴィスとなって、牙獣を倒しなさい!」 戸惑うような素振りの“マミ”に“ファ”は、言い聞かせるように諭します。 「牙獣の周波域に飛び込めば、貴方の意識に恐怖の意識が流れてくるわ。でも負けちゃダメ!貴方しかこの地球を守る共生者はいないの!」 「私の代わりに、この世界を守って!マミ!!」 “ファ”に元気つけられ、アルヴィスに変身する“マミ” SSS号を飛び出してゆくその姿を見て“ファ”隊員は、拳を握り締めます。 「マミ!負けないで!」 その時、“ファ”の制服から腕輪が床に落ちるのでした。 そう、“ジン”から渡されたあの腕輪が・・・ それを慌てて拾い、ポケットに忍ばせる“ファ”隊員。 その姿に、先程“マミ”を送り出した時と違い、恐れるような不安な様子が感じられたのです。 メセドメキアの新たなる調停者として名乗りを挙げた“ジン”隊員。 彼は、“ファ”を、如何なる窮地へと誘い込もうとするのか? 謎の腕輪には、どんな秘密があるのか? “マミ”の精神的弱さを衝く“プラウス”の攻撃にアルヴィスの勝機はあるのか? メセドメキアとの戦いは、次の段階へと移っていったのです。 【第43話/完】 |