数ヶ月前より突然、地球解放機構の名の下に、Purityのテロ攻撃が激化し始めました。 復興中の沿岸都市や防衛軍の備蓄基地を自動爆弾により攻撃したのです。 執拗なPurityのテロに対して防衛軍は警備を強化しますが、何故かいつも裏を懸かれ、阻止に失敗し、大きな損害を出していました。 参謀本部でも、Purity対策に対して警務隊に非難が集中し、担当参謀も苦慮していました。 そしてついに建築途中の極東基地を爆破されるに及び、参謀本部は、アマティ隊、4S隊の作戦行動を指示します。 対メセドメキアを目的とした戦闘集団を同胞に向けるのは如何かと言う非難もありましたが、状況がそれを許しませんでした。 そのころ、牙獣による攻撃も激しさを増していたからです。 Purityと牙獣の両面を支える事は、防衛軍にとって窮地に貶める事になりえなかったのです。 だが4S隊、アマティ隊の参入にも拘らず、Purityのテロ攻撃を防ぐ事はできませんでした。 何故か裏をかかれてしまい、テロは着実に防衛軍の基地機能を奪っていったのです。 警備強化に努める防衛軍は、科学警察機構にもPurity対策を依頼します。 すると今度は、サブリナス基地に直接Purityからの挑戦状が送られてきたのです。 科学警察機構の岡野長官を殺害するとの予告でした。 驚いたフジ監理官は、4S隊に岡野長官の護衛を命令します。 岡野長官は、地球防衛軍極東基地の建築現場を視察予定で、その行程が一番危険視されました。 地上班は、岡野長官のSPと共に護衛につき、偵察衛星とSSS号で警戒態勢をとります。 万全の態勢で自宅まで出迎えた4S隊の前に現れた岡野長官でしたが、様子が変でした。 専用車に乗り込もうとした地上班の“マミ”隊員を遮るようにSP達が立塞がります。 「岡野長官の直接護衛は、我々SPが任務に就きます。4S隊はあくまでサポートでお願いします」 SPからの発言に驚く“マミ”隊員でしたが、仕方なく、SSTで専用車に追従する事になったのでした。 「な〜んか変なのよね。いつもの猛々しい岡野長官と違うみたい・・・」 SSTの車中、岡野長官の様子に違和感を訴える“マミ”隊員。 「汗をかいていたし、震えていたみたいだし、それに声が上擦っているのよね」 “マミ”隊員が訴える岡野長官の様子に“ナガイ”副隊長は、それは怯えているんだと話します。 しかし“マミ”隊員は、それに異議を唱えます。 「だって、いつもあれだけ威張っている長官ですよ。作戦でもあれだけ4S隊に横槍を入れてくる長官が?」 「それだけ、自分の身が狙われている事を実感しているんだよ」 副隊長の説明に、納得しがたい違和感を秘めたまま、“マミ”隊員は、専用車を目で追っていました。 富士山麓に建設中の防衛軍基地は、その隠密性から秘密施設と呼ばれるほど、外観的には施設の有しない基地でした。 90%以上の施設は、地下の対爆壕内に位置しており、地球規模の破壊攻撃で無い限りは、生存性が確保される一大要塞でした。 いずれ、科学警察機構も基地内に業務を移し、防衛軍に統合される計画があるため、岡野長官は視察に赴いたのです。 基地内の視察は、順調に進んでいました。 建設責任者は、極東基地最大の施設である開閉式隠密発進口を案内します。 「どうです。これがこの基地最大の発進口になります」 腕を広げ、誇らしげに語る姿に責任者としての誇りが垣間見られました。 地上の山岳部分がスライドし、地下格納庫から送り込まれた戦闘艇が出撃すると言う説明に感嘆する見学者達。 「ここには、何が配備されるのかしら?」 “マミ”隊員の呟きに、後ろから突然声がかかります。 「ここには地球防衛軍の新型戦闘艇が配備される予定だ」 振り向くとそこには“ジン”隊員がいたのです。 「開発名称UH−001と呼ばれる分離合体仕様の万能航空戦闘艇だ」 今だ未完成の大型カタパルトを示すと、“ジン”隊員は“マミ”隊員に相対します。 「君達も岡野長官の護衛かな?我々も要請され、こちらに派遣されてきた。よろしく頼むよ」 警戒感を顔に表す“マミ”隊員に、“ジン”隊員は優しく話しかけますが、“マミ”隊員の不信感は払拭できません。 「貴方一人だけ?ユウコさんは?」 いつも一緒にいる“ユウコ”隊員がいない事に気づき、質問する“マミ”隊員。 「彼女は指揮所さ。僕は、彼の護衛任務だからね」 目で岡野長官を指し示す“ジン”隊員。 その姿を見つめながらも警戒を解かない“マミ”隊員に、“ジン”隊員は苦笑しながらその場を去ります。 「ここにいたら、君に食い殺されそうだね。僕は向こうで任務に就くよ」 そう言いながら“ジン”隊員が消えた瞬間、施設内に黒煙が満ち、暗転し始めます。 「うっ?!」 「なんだこれは?」 職員の戸惑いの声と共に、苦しむ護衛官達の姿がそこにありました。 黒煙の正体は“ジン”隊員が密かにしかけたメキアの重粒子だったのです。 「これは?・・・マミ隊員、危険だ。防塵マスクを作動させろ!」 “ナガイ”副隊長の判断でヘルメットの装置を作動させる彼らの目の前で、SP達が変化してゆきます。 ついには牙獣の姿に変化してゆく彼ら。 「うそ?」 「SP達が牙獣だった?」 ![]() 襲い来る牙獣を迎撃しながら岡野長官を守ろうと奮戦しますが、長官自身が混乱し、何事かを呟きながらその場を逃げ出してしまうのです。 「長官!」 「長官!そちらへは・・・」 後を追う4S隊は、牙獣に襲われ長官を見失ってしまうのです。 「マミ、行け!長官を頼む!」 牙獣を阻止しながら彼女に命令する“ナガイ”副隊長。 副隊長を心配しながらも“マミ”は、長官を追いかけるのでした。 しかし、此方でも牙獣が“マミ”隊員の行く手を阻みます。 彼女は一気に片をつけるつもりで、アルヴィスに変身するのです。 牙獣を駆逐しようとするアルヴィス、しかし岡野長官を見失ってしまうのでした。 建設現場の片隅で震えながら隠れている岡野長官。 「何故だ?何故Purityが、牙獣が私を狙うのだ?」 呟きに応えるように突然声がします。 「それは、私が仕組んだからですよ、岡野長官」 姿を現したのは“ジン”隊員でした。 「お前は・・・お前が・・・何故だ!」 笑みを浮かべながら銃を構える“ジン”隊員。 「気づくのが遅れましたね、岡野長官。Purityを煽ってテロ攻撃を指導し、防衛軍との全面衝突を画策し、貴方を窮地に追い込む」 「?」 「同時にPurityを我が手にし、貴方をPurityの黒幕として処断すれば、科学警察機構と4S隊は地球防衛軍の中で立場を失う」 「まさか!お前、メキアのスパイなのか?」 “ジン”隊員に裏切られたと知った岡野長官は、驚き呆然とします。 「スパイ?・・・フフフフ」 「スパイではありませんよ。私がメセドメキアを継ぐ後継者ですから」 自分が招きいれた“ジン”隊員が、恐るべき敵だと悟った岡野長官、しかし彼は遅すぎたのです。 「Purityをどうするつもりだ?彼らは地球を代表する優性遺伝子の持ち主なのだぞ!」 “ジン”隊員は、長官に絶望を与えるように答えるのです。 「Purityは、私が利用させて頂きますよ。牙獣の製造工場としてね・・・」 優性遺伝子の持ち主を牙獣に変えてしまう作戦を示す“ジン”隊員に、岡野長官は絶句するのでした。 「・・・貴様・・・貴様という奴は!!」 飛び掛ろうとする岡野長官に“ジン”は発砲するのでした。 「貴方はこれで退場です、あとは任せてください・・・岡野長官」 “ジン”隊員の最後の言葉が長官に達したかは、その苦悶の表情が語っていました。 そこに飛び込んでくる“マミ”隊員 「ジン!」 倒れている岡野長官を抱え、意識を確かめる彼女に“ジン”隊員は伝えます。 「これは、4S隊のお嬢さん。少し遅かったようだね」 睨みつける“マミ”隊員。 「あんた、岡野長官を・・・?!」 「ああ、地球人の反逆行為で射殺した。当然だろう?Purityの首謀者だったのだから・・・」 「岡野長官が?!まさか?」 「長官!」 何事かを呟こうとする長官の口元に耳を近づける“マミ”隊員 その内容は一部しか聞き取れませんでしたが、確かに長官は呟いたのです。 私のPurity、と・・・ 「そんな信じられない・・・」 驚く“マミ”隊員の後方から、4S隊員達が飛び込んできます。 その場の様子を見て、絶句する隊員達。 「これは、皆さんお揃いで。後の始末はお願いしますよ」 嘯く“ジン”隊員に“モリオ”隊長が詰め寄ります。 「ジン隊員、4S隊として報告書を提出するように求めるぞ!」 「ご自由に、モリオ隊長・・・ただ困るのは貴方達だと思いますがね」 呟きながらその場を立ち去る“ジン”隊員。 それを見つめる4S隊員達 「あいつ、何かを隠しているんじゃ?」 「それは・・・分からん。しかし・・・」 「くそう!こんな結末じゃ!」 口々に不満をぶち上げる4S隊員達。 岡野長官を失ったPurityの組織的活動は突然終結を告げ、地球規模のテロ攻撃はなりを潜めたのです。 科学警察機構は、岡野長官の事実に言葉を失い、防衛軍組織からの力関係を失う事になります。 これは、4S隊の立場の微妙な位置づけを意味したのでした。 Purityを手に入れ、科学警察機構を閉塞させ、防衛軍内での立場を有利に進ませた“ジン”隊員。 地球は魔の手に堕ちようとしていました・・・ 【第47話/完】 |