突如地球上に出現した牙獣は、防衛軍の施設を破壊し続けていました。 各地の通信施設を狙い打つように攻撃してくる牙獣に苦戦する防衛軍。 攻撃任務の謹慎処分中である4S隊に代わり、アマティ隊が攻撃指揮を執っています。 牙獣が狙ってきたのは、アジア地区最大の通信設備。 これが破壊されると、防衛軍のネットワークに重大な支障をきたすのです。 地上では4S隊が地上軍と協同で避難民の誘導にあたっていました。 しかし、あまりにも急な牙獣の出現に、避難が間に合いません。 牙獣は、開口部から光撃弾を連射し、周辺を火の海に変えてゆきます。 「撃て、ユウコ! あの開口部に一撃を!」 “ジン”隊員は、牙獣の弱点が開口部にあると判断し、対牙獣用ミサイルを撃ち込むよう進言します。 態勢を整え、攻撃を開始しようとする“ユウコ”隊員。 ふと見た地上に、逃げ惑う家族の姿が・・・ 「まだ下に避難民が!4S隊は何をしていたの!」 躊躇するアマティ機に対して牙獣は光撃弾を発射、かろうじて回避するアマティ機 「くそう!」 “ジン”隊員の機転で危うい危機を避けるアマティ隊 「あと5分待て!アマティ隊!!」 「避難民の移動、もう少し懸かります!」 逃げ遅れた家族を救出に向う“マミ”隊員と“ムロイ”隊員の両名は、牙獣と防衛軍の攻防による流れ弾を避けながらSSTを走らせます。 「あれよ!ムロイ隊員!」 指差す先には、避難しようとSSTに向ってくる4人の家族の姿が見えます。 SSTを飛び出し、彼らを出迎えようとした“マミ”隊員。 牙獣の光撃弾がその辺りに着弾した為、家族の中で女の子が一人飛ばされてしまいます。 「あぁ・・」 「マミ! あの子を頼む!俺は家族を・・・」 “マミ”隊員は、女の子を助け起こし、SSTに運びます。“ムロイ”隊員も壊れかけた建物に身を隠している家族を救おうと進みますが・・・ 牙獣は、防衛軍の通信コントロール施設を射程に入れました。 光り輝き、攻撃を仕掛けようとする牙獣。 ここを破壊されると、地球防衛軍の通信が麻痺してしまうのです。 アマティ隊は、防衛軍から厳命を受けていました。 4S隊を牙獣攻撃任務から外す代わりに、アマティ隊は、その任務を完遂すると。 失敗すれば立場を失いかねない状況に“ジン”隊員は焦っていたのです。 「ユウコ!!」 避難民を避け、攻撃を躊躇する“ユウコ”隊員からコントロールを奪取し、射撃レバーを操作する“ジン”隊員。 「ジン! 今はまだ下に・・・」 「間に合わないんだよ!」 “ユウコ”隊員の抗議を受け入れず、アマティ機から発射されるミサイル。 狙いたがわず牙獣に命中するが、その爆発は周辺地域を粉砕し、逃げ遅れた避難民達をなぎ倒してゆきます。 “マミ”隊員も子供を抱えたまま吹き飛ばされます。 爆煙が去り、気がついた“マミ”隊員は、目に入った光景に絶句します。 周辺は破壊しつくされ、逃げ遅れた避難民達は死傷していたのです。 女の子の家族も建物の下敷きになっていました。 かろうじて“ムロイ”隊員は、破片を避け軽傷で済みました。 子供を抱きかかえたまま駆け寄る“マミ”隊員に、静に首を振る“ムロイ”隊員。 その険しい目は、上空を飛行するアマティ機に向けられていました。 アマティ隊の攻撃で、施設を守る事に成功はしましたが、民間施設への被害が著しかった為、参謀本部でも問題視されたのです。 「いかに防衛任務が優先でも、これは酷過ぎます!」 参謀達に渡された書類には、今回の被害が列記されていました。 一目見るなり、多くの参謀達が唸る数字が、そこにあったのです。 「これは、報道管制をしておりますが、いずれ世間に漏れると思われます・・・」 報道官の説明に、恐れを抱く参謀達。この情報が公表されれば、人命軽視の謗りを受けかねなく、防衛軍の行動に支障をきたしてしまうでしょう。 「どうしても事実を伏せる必要がありますね・・・」 アマティ隊管轄の参謀が呟き、それに賛同するように頷き返す他の参謀達。 そして、この事実は伏せられ、牙獣の攻撃で死傷者が多く発生したと報道されたのでした。 科学特捜隊付属病院に運ばれた女の子は、一命を取りとめ、“マミ”隊員が付き添っていました。 現場にいた彼女は、女の子を放っては置けなかったのです。 そこに現れる“ユウコ”隊員の姿を見つけ、彼女は詰め寄ります。 「あんた達は、下に避難民がいることを知って!!」 怒る“マミ”を黙って手を翳す事で制止し、ベッドで眠っている女の子を見つめる“ユウコ”隊員。 「どうなの?」 “ユウコ”隊員が、女の子の病態を聞いていると感じ取った“マミ”隊員。 いつもと様子が違う彼女に驚きながら“マミ”隊員は、女の子の状態を話すのです。 「そう・・・よかった」 安堵の表情と最後の呟きに、驚く“マミ”隊員。 最後の決別以来、自分達に見せなかった“ユウコ”隊員の様子に意外な感じを受ける“マミ”隊員。 一瞬でしたが、出会ったときの優しい“ユウコ”の姿を垣間見せたのです。 ≪マミ、下に来てくれ≫ 通信機から“ナガイ”副隊長の声が流れます。 病室の“ユウコ”隊員に女の子の付き添いをお願いすると、彼女は部屋を出たのでした。 女の子を見つめる“ユウコ”隊員は、ネームプレートに目が留まります。 「モトコ・・・ちゃん・・・」 ふと名前を呟いた彼女に、反応するかのように、女の子が意識を回復します。 「お・・おねえちゃん・・・」 慌てて担当医を呼ぶ“ユウコ”隊員。女の子の回復を素直に喜ぶ姿がそこにありました。 モトコちゃんは順調に回復してゆきますが、家族の事を知った後は、精神的に塞ぎこんでしまう事がありました。 なんとか支えになろうと“ユウコ”隊員は、彼女の元に頻回に訪れていたのです。 “ユウコ”隊員は、モトコちゃんを献身的に看護し、周囲からは本当の家族のようだと噂されていました。 そんな雰囲気に様子を見に来た“ファ”と“マミ”も喜びます。 きっと、彼女本来の優しさがそこに現れたのだと、二人は思っていました。 ちょうど“ユウコ”隊員とモトコちゃんが散歩している所にお見舞いに現れる“ファ”と“マミ”隊員。 モトコちゃんも優しいお姉さん達に囲まれて嬉しそうでした。 そこに飛来する防衛軍の戦闘艇。 「あっ!」 着陸するアマティ機を見て、モトコちゃんは、“ユウコ”隊員の影に隠れます。 見覚えのある機体の姿に、怯えていたのです。 機体から降りてくる“ジン”隊員は、“ユウコ”達の元を訪れると、防衛軍の命令を伝達します。 「ここ周辺で、磁場の変化を認めている。牙獣の襲撃があると思う。アマティ隊は、傍の通信基地を守る為に配置につくようにと・・・」 牙獣探査の一つとして磁場共鳴装置が開発されており、アマティ隊では、それを運用していました。 「わかったわジン隊員。私もこれから一緒に出撃するわ」 牙獣の脅威から、モトコちゃんのいる病院を守ろうと言う決意をして、機内で着替えを済ませます。 モトコちゃんと別れを告げようとした“ユウコ”隊員に、モトコちゃんは、今までと違う表情で彼女に接するのでした。 モトコちゃんは、“ユウコ”隊員を指差し言い放ちます。 「人殺し!」 突然の出来事に、“ユウコ”隊員も“ファ”、“マミ”両隊員も驚きを隠せません。 「えっ!」 「モトコちゃん?どうしたの?」 立ちすくむ“ユウコ”隊員を庇うように、“マミ”隊員がモトコちゃんに語りかけます。 「ユウコおねえちゃんだよ、モトコちゃん?心配いらないよ・・・」 “マミ”隊員の優しげな言葉も、モトコちゃんには聞こえませんでした。 睨むような目で“ユウコ”隊員を見つめる彼女の口元は、噛締めた唇から血を流すほどだったのです。 「ユウコさん・・・」 “ファ”の気遣いに、無理に笑顔を作ってその場を立ち去る“ユウコ”隊員。 飛び去るアマティ機を見送ったモトコちゃんは、“マミ”隊員にすがりつき泣き続けるのでした。 モトコちゃんは、アマティ機を知っていました。 そして、あの機体から放たれた爆弾が、両親を殺した事を覚えていたのです。 その憎むべき対象が、優しい“ユウコ”お姉さんだった・・・ この事実に、過剰に反応したモトコちゃんだったのです。 なんとかモトコちゃんを落ち着かせて、病院に彼女を一任し、“マミ”と“ファ”隊員も支援任務に戻ります。 牙獣探査装置による予測は的確でした。 やはり牙獣は、通信施設を狙って、その姿を現したのでした。 防衛軍の阻止行動に、牙獣は進路を変えるのですが、その途上にモトコちゃんのいる病院があったのです。 なんとしても防衛軍は牙獣の進路を阻むつもりでした。 再度アマティ隊に、ミサイル攻撃の命令が伝えられます。 しかし、牙獣もろとも病院施設までをも破壊してしまうかも知れない命令に、“ユウコ”隊員は拒絶します。 しかし、その躊躇が牙獣にチャンスを与えてしまいました。 牙獣は、防衛軍地上部隊を蹴散らすと、病院もろとも通信施設を破壊しようと攻撃態勢に入るのです。 発射される牙獣の光撃弾! しかしそれを食い止めたのは、二人のウルトラマンだったのです。 ジュダとアルヴィスは、光撃弾をバリアーではじき返すと牙獣に攻撃を仕掛けてゆきます。 その様子を見ている“ジン”隊員。 「ユウコ・・・君は甘いな」 そう呟くと彼は、対牙獣ミサイルの安全装置を解除するのでした。 二人のウルトラマンの攻撃に、牙獣は追い詰められてゆきます。 ついに断末魔を迎えるかに見えた牙獣は、全身から光鞭を繰り出し、ジュダとアルヴィスを捕らえてしまいます。 動きを止められたウルトラマンに牙獣は、光撃弾を打ち込もうとします。 そうはさせないと攻撃を加えるSSS号にアマティ機から通信が入ります。 「4S隊、下がれ!これより最終攻撃をかける!」 “ジン”隊員の通告と同時にアマティ機は、牙獣に対して攻撃態勢をとるのです。 ≪やめなさい!ジン! 私はまだ戦える!≫ “ジン”隊員にジュダの思念を通じて言葉を交わそうとする“ユウコ”隊員。 しかし無常にもミサイルは発射されてしまうのでした。 牙獣に命中するミサイルは、光撃弾の誘爆を誘い、大爆発を引き起こします。 アルヴィスは鞭を振り払い、ミサイルの爆炎から病院を守ろうとしますが、目の前で牙獣の残骸が病院を押しつぶすのでした。 吹き飛ばされたジュダは、その姿をゆっくりと消し去ってゆきました。 病院周辺の被害は甚大でした。 救助の混乱の中、モトコちゃんを捜し求める“ユウコ”隊員。 その前にぐったりとしたモトコちゃんを抱えた“マミ”隊員の姿がありました。 「これが貴方達の任務の正当性なの?!幾人犠牲を出せば満足するの?!」 怒る“マミ”隊員は、“ユウコ”隊員に詰め寄ります。 「私は・・・私は・・・」 「貴方を信じた私がバカだったわ!モトコちゃんと触れ合う貴方は、出会った頃の貴方だった・・・」 腕の中で動かないモトコちゃんを見つめ涙する“マミ”隊員。 「私は・・・私はそんなつもりじゃ・・・」 “ユウコ”隊員の弁解に彼女は言い放つのでした・・・ 「貴方は、何をしたいの?貴方は、自分勝手すぎるわ!」 「両親を殺された貴方は、出会ったファの優しさに心を開いていた。でも真実を知った時、それは憎しみに変ってしまった・・・」 「そして今度は貴方が・・・貴方がファと同じ立場に・・・いえ!もっと酷いわ!」 悔し涙なのか、“マミ”の目から涙が溢れます。 「だって貴方は、この娘を殺したんですもの!」 呆然と立ち尽くす“ユウコ”隊員を残して、“マミ”隊員と抱かれたモトコちゃんは、その場を立ち去ってゆくのでした。 海岸線で一人たたずむ“ユウコ”隊員。 「私は、私は一体何をしてきたのかしら?」 知らなかった・見えなかったで許されない行為を繰り返してきた現実を知らされた“ユウコ”隊員。 復讐のつもりで、多くの人々を悲劇に貶めていた現実を、身近に知ってしまった彼女は、混乱していました。 この心の苦しみは何なのか、“ユウコ”には分かりませんでした。 「答えてジュダ!この私の心の苦しみを取り除いて!」 涙ながらに訴える“ユウコ”隊員の声は、凪の海に木霊するだけだったのです・・・。 ![]() 【第48話/完】 |