地球防衛軍極東秘密基地、いまだ未完成のこの基地であるが、一部の施設は稼動を開始していました。 その地下施設のCICセンターでは、秘密作戦会議が行なわれていたのです。 立体ビジョンで投影される太陽系星図。 太陽を挟んで、対に位置する地球とメキア星。 その図を指し示して、作戦を説明する将官がいました。 地球防衛軍特殊戦略部隊所属の“T・美希”中佐。防衛軍でも屈指の指揮官として、牙獣との戦闘でも活躍してきた人物でした。 「現在、地球とメキアは対峙する位置に存在しており、直接攻撃を行なうには、太陽が邪魔になり、難しい事に代わりありません」 「しかし、火星基地にある太陽砲(加粒子砲)を利用する事で、背部からメキアを攻撃する事が可能なのです!」 力説する“T・美希”中佐の作戦に、興味を覚える参謀達。 火星基地には対牙獣用の太陽砲が備えられており、背後から狙う事のできる位置にメキアが移動する時期に、狙い撃とうとする作戦でした。 「だが、簡単に上手くいくかな?メキアも太陽砲の存在は知っているはずだ」 作戦に反論する“モリオ”隊長は、“T・美希”中佐と同期でした。 「だからこそ、君達、いや防衛軍宇宙艦隊の力を必要とするのさ」 訝しげな“モリオ”隊長に“T・美希”中佐は、作戦の本筋を説明してゆきます。 メキア本星を地球軍のみで攻撃する作戦は危険もありましたが、成功すれば、連合に対しても大きな発言権が認められました。 危険を指摘する4S隊に、戦略軍は成功時の意義を参謀本部に進言してゆきます。 ついに、参謀本部は、作戦の決行を美希中佐に委任するのでした。 サブリナス基地周辺には、地球防衛軍の宇宙艦隊が続々と集結しつつありました。 大型宇宙戦艦を中心に、大小艦艇、その数60隻・・・地球が、メキア星の侵攻を直接受けてから再編された宇宙軍のすべてでした。 旗艦の宇宙母艦から艦隊を見つめる“T・美希”中佐に、“モリオ”隊長は、声をかけます。 「お前、本当にこの作戦が成功すると思っているのか?」 対峙する彼に“T・美希”中佐は笑みを浮かべて、部屋へ言って話そうと促します。 美希中佐の部屋で、出撃までのわずかな時間を過ごす二人。 「心配するな、モリオ。今回の作戦は、戦略作戦室が練りに練ったものだ。それに・・・」 「それに・・・、なんだ美希?」 「この作戦の本筋は、別にあるんだよ」 「?!」 「本筋の作戦には、4S隊も我々と行動を共にしてもらう」 意外な申し出に戸惑う“モリオ”隊長。4S隊は防衛艦隊の護衛任務として参加していたからです。 「作戦では、メキア星を攻撃しようとする宇宙艦隊を迎撃する牙獣の隙をついて、火星の太陽砲が、水晶都市を狙い撃つのだが・・・」 「実は、どちらも陽動作戦なのさ」 驚く、“モリオ”隊長。 「我々の任務は、太陽砲で撃破した水晶都市バリアーを突破して、深部のジェネレーターに痛撃を与える事なのだ」 「!、ジェネレーターの位置が分かったのか?」 美希中佐は、ディスクを彼に渡すと、事情を話すのでした。 二月ほど前、Purityの施設を強襲した際に、保管してあった資料の中から見つけ出したものだったのです。 発見時は、真偽の程で議論をしたそうですが、アマティ隊からの資料提供で、それが本物とされ、ジェネレーターを破壊する作戦が考えられたのです。 メキアのジェネレーターは、水晶都市のエネルギーの供給源であり、これを失えば、かなりの痛打になる事が期待されました。 エネルギーが途絶えたメキアは、牙獣を再生する力を失うはず。 戦略軍は、これを狙っていたのです。 「太陽砲の直撃と共に我々は、最深部に突入し、ジェネレーターを破壊する!」 「そこで、その方法なのだが・・・」 密談する二人は、気づいていませんでした。換気口に潜むクモのような影に・・・ 「全軍攻撃開始!」 宇宙艦隊の接近を知ったメキアから、牙獣ギャスの大群が襲い掛かります。 すべての迎撃牙獣は、艦隊へと向ってきました。 防衛艦隊から無数のミサイル、レーザーが放たれ、戦闘が始まります。 牙獣に喰い破られる宇宙巡洋艦、ミサイルで粉砕される牙獣の姿が、あちこちで見られます。 恐怖と死は、あらゆる場所で、すべてに公平にありました。多少の勇気や力の差は、何の意味もなかったのです。 一進一退を続ける宇宙艦隊。 それを指揮する“T・美希”中佐は、火星基地の太陽砲の準備完了報告を待っていました。 作戦画面で、照準線がメキアに懸かるまでの秒数が明示されるのを見つめている“T・美希”中佐。 その画面で“照準完了、0:00”と表示された瞬間、彼は、太陽砲の発射を命令したのでした。 火星基地から太陽砲がせり出し、水晶都市に向けて、加粒子ビームが放たれます。 7秒で都市に直撃し、そのバリアーを消失させる事に成功したのです。 護衛の牙獣は、驚き都市に戻ろうとします。 「牙獣を追尾しつつ、メキア本星へ進撃せよ」 “T・美希”中佐の命令が下ります。 「いよいよだな、美希・・・」 「ああ、そろそろ準備とするか・・・」 “モリオ”隊長と揃って突撃任務に向う“T・美希”中佐。 宇宙母艦から射出される突撃艇。 「いいか、モリオ。30分で、作戦を終らせる。それまでは、宇宙艦隊が時間を稼いでくれる事になっている」 “T・美希”中佐の指示に肯く、“モリオ”隊長。 「了解した!4S隊は、特殊戦略部隊の護衛に就く!」 突撃艇を追ってSSS号も水晶都市に向うのでした。 ![]() ジェネレーターに続く狭窄路を低空飛行しながら突っ走る美希中佐の突撃艇と“モリオ”隊長のSSS号。 SSS号のレーダーに移動目標を見つけると、突撃艇の前に迫り出す“モリオ”隊長。 「美希、お前はそのまま行け、牙獣を始末したら、後を追う」 その言葉に苦笑しながら、美希中佐は、機体を滑らせ、ジェネレーターへの進路を修正します。 「了解した!我々はそのまま任務を続ける」 牙獣に向うSSS号を見ながら美希中佐は、心の中で呟きます。 ≪死ぬなよ、モリオ・・・≫ 狭窄路を追って来たのは牙獣ギャス・・・メキアの守護牙獣でした。 宇宙艦隊の陽動作戦に惑わされなかった牙獣もいたのです。 「対牙獣用重粒子ミサイル・・・発射!」 SSS号から発射されたミサイルは、追撃してくる牙獣にまともに命中し、粉砕します。 しかし、牙獣の数は徐々に増えてきており、宇宙艦隊をも圧倒され始めていたのでした。 「T・美希中佐!太陽砲の第二撃の準備が完了しました。20分後に射撃が開始されます!」 “ケイタ”副官から美希中佐に通信が送られます。 「後、20分か・・・、目標到達までの時間は、どの程度か?」 同乗している部下から5分で目標到達との返事を受け、満足そうに笑みを浮かべる美希中佐。 「これで、あとは重粒子ミサイルをジェネレーターに・・・」 その瞬間、狭窄路が光の柱に撃ちぬかれ、壁が崩壊してしまいます。 「うゎ!」 「何が?何が一体起こったのだ?」 崩壊する狭窄路から脱出しようと、突撃艇を操縦する美希中佐。 「中佐!大丈夫ですか?中佐?!」 通信機から、心配した“ケイタ”副官の声が響きます。 態勢を立て直した突撃艇は、崩壊を免れた狭窄路に再度侵入し、ジェネレーターに向います。 「どうした?何が起こった?副官!報告せよ」 通信機からは、混乱した宇宙艦隊のCICの状況がわかる雑音が聞こえます。 「中佐!太陽砲が、我々の操作を受け付けません。先程の攻撃は、太陽砲の攻撃です・・・中佐を狙っています!」 驚く中佐に声がありません。 「すでに太陽砲は、急速充電をかけており、5分以内に三撃目が放たれます!」 ミサイル発射地点への到着と太陽砲の発射が、同時刻であることを知った美希中佐は、作戦の続行を“ケイタ”副官に指示します。 「中佐!それでは、太陽砲に焼かれてしまいます!」 “ケイタ”副官の心配をよそに、美希中佐は、太陽砲が到達するまでの7秒を利用しようとしていました。 「7秒あれば、ミサイルを発射して、逃げ切れる!心配するな!」 ジェネレーターに突撃を再開する美希中佐の機体の隣にSSS号が並びます。 「遅れたな、美希」 通信機から流れてきた親友の声に、笑みを浮かべる美希中佐。 「では、最後の仕事に行こう!、尻は任せたぞ!」 「任せておけ!」 強襲してくる牙獣ギャスの攻撃を編隊飛行で掻い潜り、飛行し続ける2機。 ![]() 「攻撃部隊が帰ってくるまで、牙獣を近づけさせるな!」“ケイタ”副官の号令が、宇宙艦隊の各艦に響きます。 決死の覚悟の美希中佐や“ケイタ”副官の意気込みに、全艦が応えようと奮戦を繰り返します。 「攻撃地点到着!」 「ミサイル発射と同時に離脱、反転せよ!」 突撃艇から放たれたミサイルは、ジェネレーターに向かって飛び去ってゆきます。 「中佐!太陽砲が発射されました!6秒で、そちらに・・・いや?!待ってください?これは・・・」 戸惑いのある副官の声に、こちらも戸惑う美希中佐。 「どうした?副官報告を・・・」 「おい!美希、あれを見ろ!」 “モリオ”隊長から指示された方向を見た美希中佐は絶句します。 なんと太陽砲は、突撃艇ではなく、宇宙艦隊を狙い撃ったのです。 光の柱が、次々と宇宙艦隊を撃破してゆきます。 牙獣も艦艇も関係なく、破壊の光に取り込んでゆくその様子は、墓柱でした。 「奴は・・・メキアは乗っ取った太陽砲で、宇宙艦隊を・・・くそ!!」 「ミサイルは?!」 “モリオ”隊長の指摘で、ミサイルの様子を見届けようとする美希中佐の目に映ったのは、巨人の姿だったのです。 命中寸前のミサイルの前に立塞がるウルトラマンマキシマ。 マキシマは、ミサイルを簡単に阻止すると、生き残った宇宙艦隊に攻撃を仕掛けます。 「やつら、はじめから宇宙艦隊を狙っていたのか!」 “モリオ”隊長の通信に、肩を落とす美希中佐・・・。 「くそう・・・ケイタ副官・・・皆・・・」 その時通信機が“ケイタ”副官の声を拾います。 「美希中佐!こちらは半数が回避に成功しています。援護をお願いします!」 “ケイタ”副官の機転で、太陽砲が艦隊を狙っていることに気づいた宇宙艦隊は、一斉に軌道を変更したのでした。 しかし、一部の艦隊は、回避が間に合わず、太陽砲の餌食となったのですが、一撃を掻い潜った艦隊が牙獣と奮戦を繰り返していました。 だが、生き残った艦隊に最大の脅威が、襲い掛かってきたのです。 ウルトラマンマキシマの攻撃力は、牙獣の攻撃とは比較にならず、多くの艦艇が一撃で粉砕されてしまいます。 「いくぞ!」 「おう!」 防衛軍屈指の飛行技術を担う、美希中佐と“モリオ”隊長は、マキシマを翻弄しながら攻撃を仕掛け、艦隊の離脱を助けます。 しかし、マキシマのスピードは、彼らの予想を超えていました。 捕獲されるSSS号・・・ 「貴様!!」 叫びながら突撃艇を駆り、SSS号を助けようと突入してゆく美希中佐。 マキシマは歯牙にもかけず、美希中佐の突撃艇にスプレッシャービームを浴びせます。 その時、マキシマの手元が光り輝き、捕獲されたSSS号を包みこみ、さらにマキシマの攻撃から突撃艇を守る巨人の姿が現れます。 ウルトラマンアルヴィスの登場です。驚いたマキシマは、思わずSSS号を離してしまいます。 アルヴィスとマキシマとの戦いが始まります。 徐々に押されてゆくマキシマの様子に、止めを刺そうと、“モリオ”隊長は、美希中佐に合図を送ります。 「あれか!」 「そうだ、お前となら・・」 「久しぶりに行くか!」 SSS号と突撃艇は、腹合わせで旋回しながら槍のように突き進んでゆきます。 放たれたミサイルとビーム砲は、回転力で威力を増し、阻止しようとする牙獣を粉砕しつつ、マキシマに痛打を浴びせる事に成功するのです。 倒れこむマキシマの姿に、満足そうな二人。 アルヴィゥム光線で、止めをさそうとするアルヴィス。 しかし、その攻撃は、突然現れたジュダによって阻まれてしまいます。 ジュダは、力尽きたマキシマを抱えその場から消え去るのでした。 牙獣を撃退し、帰途に就く宇宙艦隊。 メキアのジェネレーターを破壊することなく、宇宙艦隊は離脱する事になりました。 メキアへの作戦は、失敗に終ったのです。 しかし巨人戦士に深手を負わせ、牙獣の多くに被害を与えた事も事実でした。 火星の太陽砲は、プログラムに侵入していたウィルスを駆逐することができ、地球への直接的な脅威になることは避けられました。 後日、負傷した“ケイタ”副官を見舞う、“モリオ”隊長と美希中佐。 「お前の言うとおり、無理な作戦だったかな・・・」 ふと呟く美希中佐に“モリオ”隊長は彼の肩を叩きながら言うのでした。 「美希、お前がやらなくても、誰かが決行したさ。しかし、被害はもっと大きくなったはずだ」 「モリオ、お前達、特殊戦略部隊のお蔭だよ」 笑顔で返答する美希中佐でした。 【第49話/完】 |