地球防衛軍地下施設で作られていた対牙獣用ミサイルは、地球人を牙獣化させる因子を投射するのが目的だったのです。 事実を知った“ムロイ”“キリヤマ”両隊員は、その事実を報告すべく、地下施設から脱出を試みます。 しかし、ハッキングを探知した警備システムが発動され、無数の警備ロボットが襲い掛かってくるのでした。 “ムロイ”隊員のPCハッキングで警備システムを混乱させて、突破を図りますが、徐々に追い込まれてゆきます。 「むぅ・・・まずいな」 「ああ、このままじゃ脱出は難しいね」 「地上とは連絡が取れないだろうか?」 “キリヤマ”隊員の意見に、“ムロイ”隊員は、ある可能性に気づくのです。 「個人通信メールは、警備システムの都合上閉鎖されています。なので、警備システムに偽装したメールならば地上へ送れそうです。しかし・・・」 「しかし・・?」 「差出人と内容が、そのままでは、すぐに探知され消去されてしまいます」 考え込む“ムロイ”隊員に、“キリヤマ”隊員は、ある考えを提案するのでした。 「良い考えですね、やってみましょう」 「君の相手が、優秀である事を祈るよ」 二人は、警備ロボットを破壊しつつ時間を稼ぐのでした。 極東科学特捜隊日本支部の一室、ここは“ファ”隊員の居室です。 その端末にメール着信の合図が点滅しています。 警備任務から開放された“ファ”隊員は、居室につくと、そのメールに気づきます。 「ん?誰からかしら・・・?」 メールを読む“ファ”。そこには、困惑する内容が書かれていたのです。 ≪富士山の地下水は汚れている。水を汲みに来てくれないか?“タヌマ”≫ 考え込む“ファ”隊員。 ちょうどそこに喫茶ルームへ誘いに来た“マミ”隊員にそのメールを見せるのでした。 「?・・・亡くなったタヌマ副隊長からメールが来た?」 「ええ、でも宇宙でなく、地球の話みたい。マミ、富士山ってなに?」 「ああ、ファは、富士山を知らなかったっけ。ほら、例の防衛軍基地が建設されている所にある山の名前よ。とてもきれいな山なの」 彼女の説明とメールの関連性を考える“ファ”隊員。 「!、分かったわ」 突然、声を上げる“ファ”。 説明を求める“マミ”隊員に、彼女は自分の考えを話し始めるのでした。 「亡くなったタヌマ副隊長の名前を使ってメールしてきたという事は、4S隊に関係した人だという暗示」 「富士山の地下水は汚れている は?」 「それは、たぶん防衛軍地下施設の事ね。汚れているんなら、何か問題が起きているのかも・・・?」 そこまで聞いて破顔する“マミ”隊員。 「なら水を汲みに来て欲しいって・・・」 二人で同時に解答に辿り着きます。 「そこに来て欲しいって事だよね♪」 メールの内容を解読した二人は、“ナガイ”副隊長に許可を得ようとします。 報告を受けた“ナガイ”は、罠の可能性を示唆しますが・・。 「いや、たぶん彼女らの推測通りだろう。そして通信主は、ムロイ隊員だ」 “フジ”監理官を伴った“モリオ”隊長が現れ、意見を述べるのでした。 「先程から、地球防衛軍本部と連絡が不通になった。ついで、警戒警報が発動された事が確認された」 “フジ”監理官は、“ムロイ”隊員をアマティ隊に潜入調査の任務に就けたことを説明し、彼のバックアップを4S隊に指示するのでした。 富士山麓の防衛軍基地に強行着陸を行なうSSS号。 参謀本部査察官としての任務コードを示し、基地内を探査する4S隊は、地下深部での混乱を確認します。 下で奮戦中なのが“ムロイ”達だと判断した4S隊は、警務隊と共に工場区へ突入を開始するのでした。 「ムロイさ〜ん、ムロイさ〜ん」 「お〜い」 無差別に攻撃してくる警備ロボットを破壊しながら進む4S隊。 そこに壁を破って飛び出してくる戦闘ロボット群。 今までの警備ロボットとは比べ物にならない火力で攻撃を仕掛けてくる彼らに、4S隊、警務隊は、チリヂリになってしまうのです。 独りになってしまった“ファ”隊員は、偶然にも倒れている“キリヤマ”隊員と遭遇、“ムロイ”隊員の所在場所を知ります。 「向こうで、彼が・・・、頼む、彼を・・・」 意識を失いかけていた“キリヤマ”隊員を励ますと、4S隊と連絡を取り、救助を求める”ファ“隊員。 安全な場所に“キリヤマ”隊員を移動させると、“ムロイ”隊員の元に向うのでした。 少し進んだ奥の部屋で、人の話し声が聞こえます。 部屋にいたのは、“ムロイ”隊員と・・・“ジン”。 「貴様達が潜入調査をしていた事は知っていたが、これほどまでに事実が早く知れるとは・・・抜かったな!」 腕を撃たれ、倒れている“ムロイ”隊員は、銃を構える“ジン”隊員と対峙していました。 「お前が、黒幕か!お前が、メキアの使者なのか?」 “ムロイ”隊員の問いかけに笑みを浮かべる“ジン”隊員。 「すでに情報はコピーされているんだろう。ならば答える必要もないだろう?」 “ムロイ”隊員は、“ジン”隊員を説得しようとしていました。メキアの魔手から彼を救おうと考えていたのです。 「お前は、騙されているんだ。メキアの術中に嵌ってはいけない!」 しかし、“ジン”隊員は、彼の行動を面白がっていました。 「君は、僕がメキアに騙されたと思っているんだね。そしてそれから僕を救おうって・・・」 「ハハハハ!面白い、面白いよムロイ君。君たちエリート部隊の考えそうな事だ!」 「地球防衛の大儀の元、多数を生残す為に、少数を犠牲にしてきた君達の考えそうな事さ。自分が正しいと信じているから、他人もそうだと・・・」 “ジン”隊員は彼を睨みつけ、言い放ちます。 「傲慢だよ、君たちは。犠牲にされた人々は、如何思っていたんだろうねぇ・・・」 哀しそうな目をした“ジン”隊員に、“ムロイ”隊員は、驚きます。 「まさか?お前の知り合いが?!」 「ああ、そうさ!お前達に殺されたさ!両親も友人もすべてな!」 親しい人を失ったその原因が自分達地球防衛軍だった。地球を守り、自分達を守ってくれるはずの組織が、全てを奪った。 その事実を知り、言葉を失う“ムロイ”隊員。 「だからこそ、自分が正義である必要があった。力を得る必要があった。それが例え、メセドメキアの力だとしてもだ!」 興奮した様子で話す“ジン”隊員は、“ムロイ”隊員に近づこうとする“ファ”隊員の存在に気づきません。 「重粒子ミサイルに仕込んだ牙獣因子は、メキアから取り出した変性因子さ。その因子をばら撒く事で、人間の遺伝子と結びつき、牙獣化させる事ができる」 “ムロイ”隊員は、“ジン”隊員に、何故地球人なのかを問いただします。 それには驚くべき理由があったのです。 「ウルトラ族は、類人猿の地球人を遺伝子改変させ、ウルトラの星の先兵として利用するつもりだったのだ」 「しかし、メキアの叛乱以降、逃げ出したウルトラ族達の一部は、地球人に帰化し、その記憶を永遠に封じ込めたのだ」 「メキアはこの事実を知ると、地球を牙獣の製造工場として活動させる為に、戦いを仕掛けてきたのさ」 「いちいち選別は面倒だからね。因子をぶつければ、改変遺伝子は反応し、牙獣化が簡単だったからね」 計画を知らされ、唸る“ムロイ”隊員。 「地球人をすべて牙獣とし、一気に銀河を覇権するつもりなのか?」 彼の質問に答えると同時に、銃を構えなおす“ジン”隊員。 「たぶんメセドメキアはそう考えているよ。それに君は、ここで死ぬんだ。秘密を知ったからは・・・」 その時、影から“ファ”隊員が飛び出し、“ジン”隊員を狙い撃ちます。 「なに?!」 「ファ!」 しかし銃の腕前には敵うはずもなく、“ファ”隊員も“ムロイ”隊員と共に囚われの身となってしまうのでした。 「これは、これは・・・君が現れるとは、意外な展開だね」 “ジン”隊員の軽口に“ファ”隊員は、怒りを隠せません。 「もう無駄よ。上は制圧したわ。貴方の望みは、叶う事は無いわ!」 “ジン”隊員は、銃の狙いを“ファ”につけます。 「メキアに言われて、君を仲間にしようと頑張ったけど・・・もううんざりだ。君にはここで退場してもらうよ」 彼は、“ファ”をここで抹殺しようと考えました。 メキアが何故、“ファ”を望んだのか? そんな事は、今の彼は、考えもしませんでした。 その行動が、破滅への序曲とも知らずに・・・・・ “ジン”隊員は銃をかまえ、“ファ”隊員を狙い撃ちます。 「危ない!」 “ジン”隊員の放ったビームガンの熱光弾は、“ファ”を庇った“ムロイ”隊員に命中してしまいます。 倒れこんだ“ムロイ”隊員を抱きかかえ、負傷した傷口から流れ出る血液を手で押さえようとする“ファ”。 “ムロイ”隊員は彼女の顔に手をやり、彼女の涙を拭きます。 「大丈夫だったかい・・・?」 彼の言葉に泣きながら頷く“ファ”。 「僕の事は・・・心配しなくても・・・大丈夫だよ・・・ゴフッ!」 苦しそうに話し続け、“ファ”を気遣う“ムロイ”隊員。 「ムロイ!ムロイ!死なないで!」 彼女の叫びもむなしく、“ムロイ”隊員の意識が消え、その手は、“ファ”の顔から滑り落ちてゆきます・・・ 悲しみに顔を伏せる“ファ”の後ろから、怯えた声で、“ジン”隊員のあざけりの言葉が、聞こえてきます。 「はは・・はは・・・こいつ、女を庇って撃たれやがった・・・ははは・・・」 その声を聞いて、“ファ”は、怒りに燃えた目つきで、“ジン”隊員を睨みます。 「ひゃはは・・・俺は悪くない、あいつが前にでてくるから・・・」 “ファ”は拳を握り締めると、一息呼吸を吐きます。 「だ・ま・れ!!」 言葉に込められた、強烈な意志の力が、“ジン”隊員を直撃します。 「な!?なに??」 今まで無い恐怖が、“ジン”隊員を襲います。それはメキアに遭遇した以上の恐怖だったのです。 「私は、貴方を許さない。貴方を絶対に・・・」 それが“ファ”の最後の意志の力でした。 “ムロイ”隊員を窮地に追い込んだ自分の罪、彼を犠牲にして生き永らえた自分自身への恥、そして“ジン”への憎しみ。 この悲劇を生み出したウルトラの一族とメキアへの憎悪が、一気に“ファ”の心の箍を外してしまったのです。 “ファ”は、無意識に、エクストリマーに変身してゆきます。 地下施設を飛び出したエクストリマーは、その姿を人々に焼き付けます。 その憎悪の姿を・・・畏怖の姿を・・・ そのエクストリマーの背後で、空間が歪み、メセドメキアの姿が透視されます。 ≪ついに、一つ目の鍵を手に入れたぞ。エクストリマーよ、我が僕となって、仇名す者をすべて滅ぼすのだ!≫ 地球は、最悪の敵を迎える事になったのでした・・・ 【第51話/完】 |