第6話

オギニオン星人
テーベ星人
登 場




防衛軍が開発した加速機関を搭載する最新鋭宇宙船“アルキメデス号”の実験が今まさに始まろうとしていました。
実験には、4Sから選ばれた3人が搭乗してその時を待っていました。
“タヌマ”“ムロイ”“マミ”隊員は、アルキメデス号で人類最初の空間転位航法を実験しようとしていたのです。
元々この機関は、侵略者の宇宙船から得られたものなので、地球人の科学技術を超越した部分もあり、解析に一部不十分な面もあったが、技術部は見事再生に成功したのでした。

「これより加速機関の実験を始める」
“タヌマ”副隊長の号令で、加速機関が始動し始めます。
アルキメデス号は急激な加速と共に、宇宙空間を疾走していきます。

いよいよ、空間転位が開始されます。
「空間転位開始!」
「空間転位、開始します」
“ムロイ”隊員の復唱で、空間転位装置が作動、アルキメデスは異空間へ突入していきます。

しかし、実験による予定転位場所にアルキメデス号は現れる事はありませんでした。
事の重大に、防衛軍は総力をあげて捜査、救難に力を注ぎますが、その行方はつかめませんでした。

アルキメデス号と3人は、再転位と同時に、未知の惑星の大気圏内に突入してしまい、不時着してしまいます。
しかしアルキメデス号が、異星人の技術で製作されている事が幸いしました。
地球製の宇宙船では、この衝撃に耐えられずに崩壊、全員死亡は間違いなかったでしょう。

周辺を調査した3人は、此処が地球ではなく、遥か3万光年離れた場所であることを確認します。
地球型の惑星である為、生物の存在を確認しに、周囲にでる3人。
そこで異星人に遭遇してしまいます。
此処には、人類と似たオギニオン星人が暮らしていますが、数百年前から同星系で戦争を繰り広げており、その戦いに3人は巻き込まれてしまいます。

ある都市で、逃げ遅れた女性の異星人を助けた“ムロイ”は、現地の人々との接触をしました。
「彼らは、虐殺者のテーベ星人に追われています。このままでは、彼らの命はありません。なんとか助けてあげられませんか?」
窮状を見かねて、救いの手を伸ばそうとする“ムロイ”隊員に、“タヌマ”副隊長は諭します。
「ここで彼らを助ける事は簡単だ。しかしそれは、君の自己満足ではないのか?彼らが絶滅戦争を続けている以上、また同じことが起きるのだぞ!」
「そんな・・・彼らを見捨てるんですか?」 “ムロイ”と“タヌマ”の間に立って、“マミ”が問います。
「そうだ。我々も遭難者でしかなく、アルキメデス号を早急に修理し、此処を脱出し、地球へ帰らなければならないのだ」
「その遭難者の我々が・・・なにができると言うのだ・・」 “タヌマ”副隊長の苦渋の選択は、現状として正しい判断でした。

3人は、難民のオギニオン星人の集団と分かれ、アルキメデスへ戻ります。
しかし修理途中に“ムロイ”隊員は、彼ら難民の事が心配で、(本心はその中の女性型星人の“ファ”に会いに)副隊長に無断で後を追ったのです。

「ファ?!」
難民の野営地に近づき“ファ”に会おうとする“ムロイ”隊員は、正に敵テーベに虐殺を受けている難民達を発見します。
“ムロイ”らが離れた後、すぐにテーベが強襲をかけたようでした。
逃げ惑う難民達の中からファを探し出すと、“ムロイ”隊員は彼女を連れてその場を脱出しようとします。
しかし“ファ”は、“ムロイ”隊員に何かを伝えようとしていました。
「ん?どうした、ファ?」
「ム・・ロ・イ・・貴方の船・・・危・ない。我々の仲間・・・貴方達の・・事、テーベに知らせました。・・・ご・めんなさ・・い」(翻訳機に通される声)
難民達の一部が、異星人の情報をテーベに伝え、見逃してもらおうとしたのです。
しかし彼らは約束を守らず、他の難民達と同様に虐殺されました。
「しまった、アルキメデスが危ない!」
“ムロイ”隊員は、自分の軽はずみな行動を悔やみます。
彼は、“ファ”を連れてアルキメデスに戻ろうとしますが、テーベに発見されてしまいます。
追われる“ムロイ”隊員達。
窮地に追い込まれた時、頭上に宇宙船の陰が現れます。
アルキメデス号が修理を終えて“ムロイ”隊員を救出に来たのでした。
「ムロイ! 二人を急いで艦内に乗せろ。急いで此処を脱出する」
“タヌマ”副隊長の指示で、“ファ”を艦内へ誘導する“ムロイ”隊員。
同時にテーベの戦闘機が、アルキメデス号目がけて突入してきます。
「マミは、後方の銃座で敵を迎撃! ムロイは、前だ!」
アルキメデス号の銃座が火を噴きます。
だが、多勢に無勢、アルキメデス号は地表に追い込まれていくのでした。
このままでは・・・と考えた“マミ”はイヤリングの力を解放し、アルヴィスが登場します。

テーベの戦闘機、地上軍と戦闘するアルヴィス。
そのアルヴィスを見つめる“ファ”は、驚きを隠しえません。
そしてその目には、深い悲しみと怒りが垣間見えたのです。

アルヴィスに窮地を救われたアルキメデス号は、惑星を脱出し、外惑星軌道にたどり着きます。
加速機関の再稼動は成功し、元の地球圏に戻る事ができたアルキメデス号。
無事に戻れた嬉しさを互いに喜び合う“ムロイ”“ファ”“マミ”だったが、独り副隊長は思案顔でした。
「行きは3人、帰りは4人。これを如何、隊長に報告するかな?」
「ファさんを難民認定してもらいましょう」と“ムロイ”隊員。
「ムロイ、あれは地球人に対する法律だ。異星人には、現状その法律は適応されない」
肩を落す“ムロイ”隊員。
「ファさんは、オギニオン惑星系の星の王族の方です。《亡命なら人種を問わず》って項目ありませんでした?」と“マミ”隊員。
「王族って?ファ・・・?」
驚く“ムロイ”隊員に微笑む“ファ。”
「ファ・ロギュテルのロギュテルは、王族の意味だそうです」
得意げに答える“マミ”隊員。
「やっと解読したんですよ、この翻訳機!」
「あれも地球人類のみにという・・・いや、そんな項目は無かったな」
「フジ監理官に進言してみよう。認められると良いが・・・」
喜び合う3人を見ながら、少し不安げな“タヌマ”副隊長でした。
「こちら防衛軍宇宙センター。アルキメデス号聞こえるか?」
アルキメデス号の通信装置から聞こえるのは、懐かしい“モリオ”隊長の声です。
「こちらアルキメデス号。感度良好、全員無事です」 答える“タヌマ”。
「無事の帰還を歓迎する。あとでゆっくり話を聞かせてもらうぞ」
“モリオ”隊長への報告は、たぶん隊長も巻き込んで、4S隊に騒動を巻き起こすなと想像しながら無線をきる“タヌマ”副隊長でした。

地球に無事の帰還を果したアルキメデス号は、人類初の空間転位航法を行い、実験を成功に導きました。
細かい微調整は引き続き継続しなければなりませんが、近いうちに実用化される事でしょう。
“ファ”は防衛軍会議で、フジ監理官の説得で亡命が認められました。
そして、特務隊預かりで、その身元の管理が行われることになったのです。
「呆れたわ、参謀本部には! 問題を隔離する為に、まさか4S隊預かりとはね」
会議後のフジ監理官のボヤキに、苦笑を禁じえない“モリオ”隊長でした。

しかし“ファ”のアルヴィスを見つめたあの表情には、何が隠されているのか?
ファとアルヴィスには、何らかの関係があるのでしょうか?
統合本部の開放区画に、夜空を見つめるファの姿がありました・・・・。
【第6話/完】


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