統合本部に鳴り響く警報! 外宇宙から何者かが、大質量空間転位を太陽系内にしてきたのです。 防衛軍は直ちに全戦力を戦闘体制に移行させます。 宇宙ステーションからは偵察衛星を現場に急行させ、その正体を探ろうとします。 大質量の物体は、木星軌道上で停止しており、その姿はまがまがしいものを感じさせました。 ![]() 偵察衛星の画像が統合本部にも転送され、4S隊司令部にも映し出されます。 「メセドメキア・・・牙獣・・・」 モニターを見ていた“ファ”が、つぶやきます。 その声に気づいた“マミ”隊員は、“ファ”にテレパシーで問いかけます。 《ファ、あれが何か知っているの?》 “ファ”は、“マミ”の問いかけに、真直ぐ“マミ”の顔を見つめ語り始めます。 ≪あれは、メセドメキアよ。我々の星では、調停者と呼ばれているわ。でもその実体は、調停者にはほど遠いけど・・・≫ 《調停者って?》 ≪彼ら自身がそう呼んでいるだけ。彼らは殺戮の使者よ。 マミ・・・貴方の理想は、彼らに通用しないわ≫ ≪メセドメキアは、侵略した惑星の人々を先兵として送り込んでくるわ。先兵の彼ら自身は、メセドメキアに操られているだけ。 マミ、貴方はそんな彼らを敵として戦えるかしら?≫ 意味ありげな微笑を残しながら司令室を出て行く“ファ”を見つめる、“マミ”隊員の姿がありました。 防衛軍は、謎の物体に対して警戒態勢を続けたまま待機をしています。 何度かの呼びかけにも相手の反応は無く、沈黙を守り続けていました。 数日を経た後、突然謎の物体から、高速で飛来するエネルギー体を観測します。 防衛軍は、その行為に対して戦闘行為と判断し、全力で阻止にかかります。 だが、防衛軍の奮戦にも関らず、エネルギー体は、“City”に到達してしまうのです。 地球にたどり着いたエネルギー体は、全地球人類に向けて通信を始めます。 「我は、メセドメキア。宇宙の調停者である。生きとし生けるものは、我を受け入れ我と同調せよ・・・・・・」 世界政府はそのような要求を受入れるはずも無く、防衛軍に阻止を命令します。 4S隊も防衛軍と共に出撃して、メセドメキアの排除に向かうのでした。 エネルギー体は、防衛軍の攻撃に、その姿を変化させ異星獣の姿を現します。 ≪マミ、あれがメセドメキアの先兵、牙獣よ。牙獣は、取り込まれた異星人の心を支配して作り出す怪物・・・取り込まれた異星人の恐怖や憎しみ等の負の意識が強いほど強力な牙獣となるの≫ “ファ”の語りかけが、“マミ”隊員の意識へ流れ込みます。 《なら、その支配意識を断ち切れば、彼らは元の姿に・・・》 “マミ”の心を読んだかのように“ファ”から諭されるのです。 ≪どうやって?アルヴィスの力でもそれは、無理。取り込まれた意識は死でしか絶つことはできないわ!≫ 牙獣は、防衛軍をその圧倒的な力でねじ伏せ、攻撃を続ける4S隊も危機に陥れます。 牙獣の連射光弾にSJVの各機は次々撃墜されてしまいます。 “マミ”は撃墜される飛行機から脱出の時、イヤリングの力を解放し、アルヴィスとなります。 又、撃墜されるSJV1号機の姿(ムロイが搭乗しています)を基地のモニター上で見ていた“ファ”も、同じくイヤリングの力でアルヴィスに同調するのでした。 アルヴィスは牙獣との戦闘に入ります。 牙獣との接触で、相手からアルヴィス(マミ)へ、彼らの意識が流れ込んできます。 苦しみ、悲しみ、恐れ等が、“マミ”に伝わるのです。 《貴方たちを救ってあげる事ができたら・・・》 持てる力を振り絞って戦うアルヴィスでしたが、“マミ”の心の迷いが、その力を半減させていました。 ≪マミ!貴方はこの地球を守らなくちゃいけないのよ!彼らを救う事は諦めなさい!≫ “ファ”の声が“マミ”にも聞こえますが、その迷いから脱する事ができません。 ≪マミ、貴方の戦いは私もアルヴィスも地球の皆も全てを危機に陥れるわ!≫ “ファ”はそう言い残すと、アルヴィスの心とコンタクトします。 アルヴィスは、“ファ”の意思を取り込み、彼女の意志で、牙獣と戦い始めます。 躊躇しないアルヴィスは、鬼人のように、牙獣を翻弄していきます。 しかしその力故に、牙獣に取り込まれた異星人の苦しみが増し、“マミ”の心を揺さぶったのです。 《ファ・・・彼らを・・・》 ≪忘れなさい!マミ、彼らを苦痛から救う手立ては、死しかないの!≫ アルヴィスは、牙獣へ必殺のギガカッターを繰り出そうとします。 “マミ”の思い・・・彼らを助けられない、自分への無力感、そして、彼らの解放が死でしかない事への悲しみとそれに対する怒り・・・が突然昇華します。 額のアルヴィススポットが突然輝きだし、その光がアルヴィスの全身を包み込み、さらに輝きを増してゆくのです。 ≪な?なに・・・? マミ、何を・・・≫ 驚きを隠せない“ファ”。 アルヴィスは牙獣にアフェクション波動をおくりこみ、牙獣から異星人の意識を分離し、メセドメキアから彼らを解放するのでした。 意識体を失った牙獣はアルヴィスの敵でなく、ギガカッターで粉砕されたのでした。 防衛軍は、メセドメキアから解放された異星人を隔離しましたが、その事情を考慮して彼らの星へ帰還を許しました。 人類へ感謝の気持ちを表すと、彼らは自分の星の解放の為に戻って行ったのです。 ≪あの力はなに?アルヴィス答えて!≫ “ファ”はアルヴィスに問いかけます。 【ファよ。あれは、マミの思いが招いた結果だ。あの娘の強い慈愛の心が私を変え、メセドメキアから取り込まれた異星人を救ったのだ】 【ファよ、彼女は、君が思うほど弱い娘では、ない・・・】 ≪あの力があれば、リュディアの人々も救えたと・・・?しかしその力が私には無かった・・・≫ 自室で思う“ファ”の心に、“マミ”への憎しみにも似た感情が生まれたのでした。 そして、“ファ”が語る言葉に隠された真実は?リュディアとは?・・・・・。 【第8話/完】 |